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桜花賞 有力馬血統考察


アスコリピチェーノ

 父のダイワメジャーはノーザンテーストの影響を受けた種牡馬。サンデー系のなかでもパワーに優れたマイラー型です。一方、母の父のデインヒルダンサーは現役時代に6~7FのGⅠを勝ったスプリンター。パワーで突進力を生み出すことで、スピードに昇華させる血統です。父のパワーを母の父のパワーによって後押しした、タフな配合といえます。またダイワメジャーらしいタフな競馬をするうえで、底力のサポートは欠かせません。その点で2代母の父にサドラーズウェルズがあることにも大きな意味があります。母方にデインヒルダンサーとサドラーをセットで併せもつダイワメジャー産駒といえば、本馬とおなじく阪神JFを勝ったレシステンシアがいます。
 母のアスコルティは現役時代に1200~1400mで2勝を挙げた馬。8戦中4戦で逃げる競馬をしています。血統の字面も加味すると、さきほど比較対象として挙げたレシステンシアのような、後続をふるい落とすスタイルが似合うタイプです。しかし実馬の走りは、想像していたものとは違いました。むしろ柔軟性があり、しなやかなフットワークが目を引きます。前進気勢も許容範囲。気負いすぎずに走れています。将来の完成図はさておき、現状は決め手をいかす競馬ができます。
 帰厩直前に軽い熱発があった点をどう捉えるべきでしょうか。近況コメントや追い切りの雰囲気からは、さほど心配がないようには感じます。ただし表面上は問題なくみえても、内面に影響を残す場合があるため、状態はしっかりとチェックしたいところです。


クイーンズウォーク

 キズナは『インリアリティ』の血と好相性。種牡馬としてデビューした初年度から多くの活躍馬をだしています。ただし近年はそれほど大きな実績を残していませんでした。中央重賞の勝利でいうと、21年のマーメイドSを勝ったシャムロックヒルが最後。本馬は久しぶりに誕生した重賞勝ち馬となります。
 本馬の母・ウェイヴェルアベニューは、ミスタープロスペクター4×4・5のクロスを内包。アメリカ血統のスピードを豊富に含んだ繁殖牝馬です。父のキズナはミスプロを1滴ももちません。この血を使ってスピードを固定させる構造は、かたちとして悪くないでしょう。
 ササッと素軽い脚さばきで走る反面、やや淡白さが見え隠れします。アクションが大きいほうではありません。母方にあるラーイの特徴がでた競走馬という印象です。前走のクイーンCもふくめ、ここまでの3戦でみせた直線の脚は、なかなかの見どころがあります。ただしラーイっぽい馬であることを考えると、これがベストな戦術という感じはしません。将来的には好位に付けて、競馬センスを活かすかたちが良いのではないかと思います。


ステレンボッシュ

 シーザリオ、エアグルーヴ、ウインドインハーヘア、ダンシングキイ・・・。歴史的な名繁殖がずらりと並ぶ血統表は、なかなか壮観です。エピファネイア×母の父ルーラーシップの組み合わせは、5頭すべてが勝ち馬。該当馬は多くないですが、今のところ安定した成績を残しています。大舞台で実績を残したのは本馬が初めてです。
 エピファもルーラーも、長めの中距離を得意とするスタミナ寄りの血統です。また本馬の場合は、2代母の父のダンスインザダークもスタミナ型。字面だけみたらかなり重厚です。牝馬らしい素軽さと、牝祖であるウインドインハーヘアのしなやかさのおかげで、鈍重さは薄めではあります。とはいえ速い流れに積極的に乗っていけるようなタイプではないでしょう。中盤で少し緩むくらいの展開が理想です。
 前走の阪神JFでは、無理せず自分なりのペースで脚を温存。中距離馬としての切れ味をいかす競馬をしました。勝利にはあと一歩届きませんでしたが、マイルの戦い方として理に適っていたと思います。今回もおなじようなかたちになるのではないでしょうか。ただし近年の桜花賞は高速馬場になりやすく、スピードへの依存度が高まります。重厚な本馬にとっては、やや難易度アップかもしれません。


スウィープフィート

 スワーヴリチャードは『ダンジグ』の血と相性良好。重賞勝ち馬のレガレイラ、コラソンビート、本馬のほか、アーバンシックやパワーホールなど、活躍馬のほとんどがこの血をもっています。本馬はチーフズクラウン経由でダンジグを補給。現在このパターンの該当馬は本馬1頭しかいません。ハーツクライやジャスタウェイがチーフズクラウンと好相性だったことを考えると、おなじハーツ系のスワーヴも親和性が高いのではないでしょうか。
 前走のチューリップ賞は、後方から全馬をまるごと撫で斬り。その姿はまるで祖母・スイープトウショウのようでした。ただし母の父にディープスカイが入っているため、本質的にはワンペース寄りかもしれません。単に後ろで溜めたからと言って、切れ味が増すわけではないと思います。位置取りありきの競馬ではなく、自身にとって適切なペースで、心地よく走らせてあげられるかが重要でしょう。


チェルヴィニア

 ハービンジャー×母の父キングカメハメハの組み合わせは、ブラストワンピース、モズカッチャンという2頭のGⅠ馬をだすパターンです。近年はそこまで大きな実績を残していませんでしたが、昨年から勢いが復活。先週の大阪杯でも2着になったローシャムパーク、そして本馬の登場で久しぶりに存在感を強めています。
 本馬は3代母に名牝・ハッピートレイルズをもつ良血馬です。この一族は豊富なスタミナが持ち味。近年で言うと、19年のアルゼンチン共和国で1、2着となったムイトオブリガード、タイセイトレイルはともにこの牝系の出身でした。本馬の母であるチェッキーノもフローラSを勝ち、オークスでも2着に好走しています。本馬はスラッとした細身の体型で、マイラー然とした競走馬ではありません。マイル重賞を勝ちましたが、本来は中距離のほうが走りやすいのではないでしょうか。
 言い方が適切ではないかもしれませんが、ハービンジャー産駒の良血馬は“ヌルい競馬”ほどパフォーマンスを上げてくるタイプが多いです。本馬もその可能性があるかもしれないとは感じています。ゆったりとしたペースで溜めれば素晴らしい脚を使えることは、前走の勝利で証明しています。あとは厳しい競馬になったときにどうなるかでしょう。良い意味でもそうでない意味でも、未知の部分が大きい馬です。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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