ロードカナロア考察(4) ~サーゲイロードの効果~
※ロードカナロア考察(3)のつづきです
★異父兄との近親クロス
現状、セクレタリアトを直接クロスすることは効果的な仕掛けとは言えません。しかし別の手段でセクレタリアトを刺激することで、プラスに機能させる方法があります。それは『サーゲイロード』の血との組み合わせです。
サーゲイロードはセクレタリアトと4分の3同血の異父兄。この血との近親クロスをもつカナロア産駒の成績は悪くなく、GⅠ馬のサートゥルナーリアなど6頭の重賞勝ち馬を出しています。
★近親クロスとは
サーゲイロードとセクレタリアトはおなじ母から生まれた異父兄弟。また父方の血統構成も似ているため、全体のおよそ4分の3が同血の関係です。近親同士を組み合わせて、直接クロスに似たかたちで血を増幅させることを、本書では「近親クロス」と呼び、「≒」の記号を使って両者の相似性を表します。
(※笠雄二郎先生の方式をもとにしています)
★サーゲイロードの特性
サーゲイロードはセクレタリアトとおなじく体質の柔らかさを伝えます。ただ弟よりも俊敏さに長けており、より切れ味に特化したタイプです。このあたりの微妙な違いが、ロードカナロアの切れ味に深みを与えてくれるのでしょう。白味噌に赤味噌を加えると、ひと味違った美味しい混ぜ味噌ができますもんね。 下支えするための筋力補強の課題が解消されるわけではありませんが、柔らかさの増幅手段としては有効なパターンです。
★経由別の短評
サーゲイロードもちでも、どの血を介して補給しているのかによって効果が変わってきます。いくつかの代表的な血を取り上げ、簡単に考察します。
・コジーン経由
この血を経由してサーゲイロードをもってくるパターンはわずか7頭しかいませんが、そのうちの5頭が勝ち馬。重賞馬のトロワゼトワルを筆頭に、4頭が複数の勝ち星を挙げています。「セクレタリアト≒サーゲイロード」は柔らかさを強く刺激する仕掛けですが、コジーンの血統内には、父方のレリックや3代母のブルーカヌーなど、パワーに秀でた血も備わっています。このおかげでただ柔らかいだけでなく、適度に芯の通った切れ味として表現されるのでしょう。
それでも体質が緩くでやすい傾向はあり、素質が開花するのには時間がかかります。複数勝利している4頭もみな、2勝目を挙げたのは3歳春が終わってから。POGで狙うのであれば注意が必要です。
・ドローン経由
サーゲイロードもちのなかで一番安定感があります。該当する18頭のうち14頭が勝ち馬。とくに牡駒は全馬勝ち馬になっており、超鉄板のニックスと言っても過言ではありません。
この組み合わせは性別によって傾向が変わってきます。牡馬の収得賞金上位3頭(レッドルゼル、カタナ、スピリットワンベル)はすべてダート馬。全牡馬の勝ち星を見ると、芝3勝、ダート13勝という極端な差が出ています。柔らかさを増幅する仕掛けなので、ダート馬になる姿がイメージしづらい意外なパターンかもしれませんね。ちなみにカナロアの父であるキングカメハメハもこの血と相性が良く、牡駒の活躍馬はホッコータルマエ、センチュリオン、トウショウフリーク、ハヤヤッコとやはりダート馬ばかりです。
一方、牝馬が挙げた勝ち星は芝12勝、ダート2勝。柔らかさをちゃんと芝で活かすようになっています。一口馬主なら牡馬、POGなら牝馬が狙いでしょうか。
・サーアイヴァー経由
サーゲイロードもちの重賞勝ち馬6頭のうち、キングオブコージ(目黒記念)、ジョーカナチャン(アイビスSD)、イベリス(アーリントンC)、ファンタジスト(重賞2勝)の4頭がこの血を経由しています。サーゲイロード系のなかでも俊敏さに秀でており、柔軟性がもたらしがちなダラダラとした緩慢さがありません。スパッと切れる純粋な切れ味という点では一番です。
切れ味に振り切った増幅になるため、筋肉質な男馬より、繊細な体質をもった女馬のほうが恩恵として受けやすいようです。また後述するディープインパクトもサーアイヴァーをもつので好相性に思われがちですが、実はディープ経由の場合はそれほどでもありません。「ディープ以外」の牝駒に限れば勝ち馬率が非常に高く、安定感があります。
・ディープインパクト経由
“空を飛ぶ”と称されたディープですが、意外にも母の父になると柔軟性が衰え、重厚なパワーが強くなります。そのぶん切れ味の増幅が曖昧になり、思ったような効果が得られません。ファンタジスト(重賞2勝)は出ていますが、それ以外に目立った活躍馬はいません。父にディープをもつ繁殖牝馬は良血が多いことを考えると、ものたりないところはありますね。
・ハビタット経由
非力なくらい柔軟性が高すぎる血。もとが柔らかいカナロアに組み合わせるのはさすがにやりすぎでは……という懸念はありましたが、実際16頭がデビューして勝ち馬は3頭しかいません。そのうちの1頭がGⅠ馬のサートゥルナーリアですが、この馬はスーパー名繁殖・シーザリオの子なので例外でしょう(笑)
【追記】
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