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ホープフルS 有力馬血統考察

シンエンペラー

 母のスターレッツシスターが送り出した産駒は、シスターチャーリー(北米GⅠ7勝)、マイシスターナット(仏米で重賞3勝)。ソットサス(凱旋門賞などGⅠ3勝)、そして本馬。大物を何頭も輩出した、超優秀な繁殖牝馬です。ミスワキ3×3という強烈なクロスを内包。これが繁殖能力の源泉となっています。本馬の父はシユーニなので、ソットサスの全弟になりますね。
 全体の血統構成が非常に重厚。日本のスピード競馬に対応できるのか心配になる字面です。ただ実馬は脚さばきがしなやか。走法は父のシユーニに似ており、コジーン由来の柔軟性が伝わっています。競走能力は母のおかげ、日本競馬への適性は父のおかげという感じでしょう。なおシユーニ産駒は14頭がJRAで出走。牡馬は本馬やヴィズサクセス(モルガナイトS)など8頭中7頭が勝ち馬で、合計17勝を挙げています。それに対して牝馬は6頭が出走して、勝利はゼロ。傾向が極端ですね。
 心身ともに幼さがあり、本当に良くなるのは先だと思います。ゆったりとした流れの競馬しか経験がなく、ペースが速くなったときにどうなるかも未知数です。正直に言うと、この時期にGⅠを勝つようなタイプには感じません。ただ今回の出走予定馬をみると、完成度と素質の両方を高く兼ね備えた馬が少ない印象です。これなら器の大きさだけでも勝負になってしまいそうな、そんな雰囲気すらあります。この世代の牡馬はちょっと難しいです。


ゴンバデカーブース

 父のブリックスアンドモルタルは、セクレタリアトやシアトルスルーの影響が大きく、ゆったりとしやかなフットワークで走る競走馬でした。一方、母のアッフィラートはリアファンやフォーティナイナーの影響が強く、パワフルなピッチ走法が持ち味です。対極的な個性をもつ父と母の組み合わせといえますね。本馬自体はメリハリのきいたピッチ走法寄り。どちらかと言えば、母に似ているように感じます。ただ母ほど脚さばきに突っ張るところがありません。父のしなやかさもしっかりと根付いているようです。両親のいいとこ取りのようなかたちで表現されたことが、成功を後押ししたのではないでしょうか。
 新馬戦では逃げた馬ですが、前走のサウジアラビアRCは差す競馬で勝利。しっかりと我慢がきいたことで、中距離路線への視界が一気に開けました。母方の機動力があるため、中山の小回りコースも問題ないでしょう。ここはチャンスですね。ただブリックスアンドモルタルの気性を考えると、揉まれる競馬は苦手かもしれません。レースを投げ出すような気難しさはないと思いますが、根性で馬群を割るかたちは避けたいところです。


レガレイラ

 母の父のハービンジャー、2代母の父のダンスインザダークがともにスタミナ寄りの中距離血統。全体的に重厚な構成です。牝馬らしい先天的な素軽さと、ウインドインハーヘア牝系がもつ特有のスピードでカバーしており、バランスは悪くありません。それでも少し重たさが勝ったタイプにでています。
 前走はどスローからの超瞬発が問われたレース。3着に敗れはしましたが、上がり3Fは1位タイ。32秒7の脚を使っているだけに、あれ以上の結果を求めるのは酷でしょう。加速に時間が掛かるものの、最大出力のレベルはかなり高い次元にあります。追い切りの映像を見ましたが、胸筋のたくましさが増し、今まで以上に全身を使ったど迫力の走りが目を引きました。馬自身の成長にくわえ、状態の良さも伴い、充実した様子が伺えます。
 能力ならこの馬が1番だと思うのですが、不安なのは競馬スタイルです。ここまでの2走はいずれもスタートがもっさり。ストライド幅が広く、器用なタイプでもありません。今回は小回りの中山だけに、出だしで後手を踏むと挽回するのは簡単ではないでしょう。昨年のこのレースで3着だったキングズレインのように、猛然と追い込むもあと一歩届かず・・・のようなかたちが一番怖いです。


ヴェロキラプトル

 母の父のジャイアンツコーズウェイは、操縦性が高く、優れた競馬センスを伝える血。ディープインパクト産駒の全盛時代だった以前は、この特徴が仇となる場合がありました。立ち回りが上手く、崩れにくい一方、突出した切れ味に勝てず、器用貧乏キャラになりがちだったためです。しかし今は環境が変わり、パワーやスタミナを含めた総合力で戦う時代。ジャイアンツコーズウェイの競馬センスは、それだけで強力な武器となります。
 なおスワーヴリチャードの父であるハーツクライは、ジャイアンツコーズウェイと好相性でした。息子であるスワーヴも、ニックス効果を継承している可能性はあると思います。スワーヴとの組み合わせは該当馬が4頭と少なく、はっきりとしたことは言えません。ただそのうちの3頭が勝ち馬になっており、興味深い傾向がでていることはたしかです。
 前走の馬体重が454キロ。牡馬にしては小柄なほうです。肉体的にも発達しておらず、軽さが悪目立ちした状態。馬格以上に線が細く見えます。祖母の部分には欧州の底力が豊富。いずれバランスはとれるとは思いますが、まだ先のような印象です。本質的に小回りコースは向いているはずですが、タフな競馬に耐えうる体にはなっていません。例年より中山が高速馬場なところは、本馬にとってはプラス材料でしょう。


センチュリボンド

 ストームキャットの血を3×4でクロスした、淡白なスピード型。ただ本馬の場合、それほどこの要素が前面にでたタイプではありません。ストームキャットの経由先がダート血統のヘニーヒューズのため、筋肉質の体つきをしています。また脚さばきには突っ張るような硬さが見られます。これは2代母の父・キングマンボの影響でしょうか。あまりストライドが伸びず、機動力寄りに振れたキャラです。
 血統表と実馬の走り照らし合わせて、最初に抱いた印象は、この前のターコイズSを勝ったフィアスプライドに似た馬だなということ。ディープインパクト、キングマンボ、ストームバード、ウィークエンドサプライズなど、血統的な共通点が多いです。フィアスはディープ直仔の女の子ですが、本馬はキズナ産駒の男の子。もう少し重厚なスタミナ色を濃くした感じでしょう。中山は合っていると思います。瞬発力勝負では分が悪いので、好位から早めにペースを上げていき、ロングスパート気味の展開に持ち込みたいところです。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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