見出し画像

日本ダービー 有力馬血統考察


ジャスティンミラノ

 キズナ×母の父イクシードアンドエクセルの配合は、該当する3頭すべてが2勝以上。桜花賞とオークスで3着になったライトバックもこの組み合わせです。「ストームキャット≒パトローナ」3×3によって、スピードを引き出していることがポイントでしょう。またイクシードアンドエクセル内に含まれる『ロモンド』の血がキズナと好相性。これも親和性の高さを生み出す大きな一因となっているように思います。
 キズナは牡駒に対して重厚なスタミナを伝えやすい種牡馬です。ところが本馬はキビキビとした脚の回転と、しなやかな捌きが目につきます。父の重厚感はあまり感じません。脚の回転を生み出しているのは、母の父イクシードアンドエクセルが伝えるデインヒル的な要素でしょうか。しなやかな捌きについては、祖母がもつシャリーフダンサーとダルシャーン、そしてサーゲイロード4×3の影響だと思われます。デインヒルのパワーとシャリーフダンサーの切れ味を源泉にしているという点で、どこかハービンジャー産駒のような雰囲気をまとったタイプです。
 共同通信杯は超のつくスローペースを、上がり3ハロン32秒6の瞬発力を使って完勝。皐月賞は一転して、淀みないミドルペースを5番手で先行。スピードの持続力をいかして勝ちました。異なる流れに対応したように、総合力と完成度の高い競走馬です。母の父のエクシードアンドエクセルは、現役時代に短距離GⅠを勝ったスピード馬。本馬の追走能力をみると、その影響は少なからず伝わっているように思います。友道厩舎のことですから、厩舎力でダービー仕様に作ってくるでしょうが、本質的にみれば、2400mへの延長はプラスとは言えないかもしれません。


レガレイラ

 母の父のハービンジャー、2代母の父のダンスインザダークがともにスタミナ寄りの血統。牝馬らしい先天的な素軽さと、ウインドインハーヘア牝系がもつ特有のスピードでカバーしており、バランスは悪くありません。それでも少し重厚さ勝っている印象です。デビュー時よりも胸筋にたくましさが増し、雰囲気も一変。全身を使ったど迫力の走りが目を引きます。馬自身の成長にくわえ、状態の良さも伴って、充実した様子が伺えます。
 年始の時点で、陣営は日本ダービーへの挑戦もあるとコメント。そのとおりに出走してきました。ダービーというのは、将来の種牡馬候補の価値を高める意味で、牡馬にとって一番重要なレースといっても過言ではありません。そんな貴重な機会を潰す可能性が生じるにもかかわらず、それでもノーザンファームが牝馬を送り込んできた。その意図をどう考えるべきでしょうか。あくまでも個人的な推測ですが、もしかしたら今年は3歳牡馬よりも、種牡馬・スワーヴリチャードに箔をつけることを優先したのかな? と思うところはあります。
 前走の皐月賞は出足が鈍く後方から。3コーナーでは進路取りに手間取り、スムーズに加速できず。1番人気を裏切る6着でした。最大出力のレベルが相当高い次元にあるだけに、急遽のテン乗りで簡単に御せるような馬ではありません。ルメール騎手が乗れなかったことは、少なからず痛手だったはずです。それでも上がり3Fの脚は最速。力は見せています。ストライド幅が広く、東京替わりはプラスでしょう。ウオッカ以来の偉業を成し遂げられるのか、とても楽しみな一戦です。


アーバンシック

 スワーヴリチャード×母の父ハービンジャー、そして祖母がランズエッジという配合。先に考察したレガレイラとは、血統構成がまったく一緒のイトコ同士です。レガレイラと内容が重複しますが、母の父ハービンジャー、2代母の父のダンスインザダークがともにスタミナ寄り。全体的に重厚な血統です。レガレイラは牝馬のぶん、先天的な素軽さによってバランスが取れていました。一方、本馬は男の子。筋肉質でもっさりとしており、やや偏った印象をうけます。軽いスピード馬場ならレガレイラ、タフなパワー馬場ならアーバンシックに向きそうです。
 ストライド幅が広く、小回りを器用に走れるタイプではありません。またデビュー前から気性のヤバさを指摘されていた馬。いまは常識にかかってきましたが、それでも操縦性の低さは課題でしょう。スタートも遅く、さまざまな面で荒削りです。それだけに広い東京に替わる点は大きなメリットだと思います。皐月賞は先行馬が残る展開を、後方から4着まで追い込んできたように、能力の絶対値は高いです。伸び伸びと走らせることができれば、チャンスはあるのではないでしょうか。


シックスペンス

 母のフィンレイズラッキーチャームはクリプトクリアランス4×3、ダンジグ4×4という強いクロスをもちます。クリプトクリアランスはスラッとした見た目。惰性的な持続力が持ち味です。クリプトクリアランス自体は線が細く、やや頼りない面がありますが、それを補完しているのがダンジグ。屈強な筋肉を伝えるこの血ががっちりと体幹を支えることでバランスを整えています。フィンレイズラッキーチャームの現役時代の走りをみると、上記クロスの効果がよくあらわれているように感じます。クリプトクリアランスの肉体を、ダンジグの筋力でパンプアップさせたようなタイプです。そしてその特徴は息子の本馬にもしっかりと受け継がれています。
 前走のスプリングSはペースがかなり遅く、実質2ハロンの瞬発力勝負。本馬の末脚だけが目立ったレースでした。あまりにも極端な展開だったため、流れが速くなったとき、どういう走りができるかは未知数です。ただし血統的には切れ味特化の構成ではありません。経験値の有無はさておき、総合力で戦うこと自体には対応できる馬だとみています。あとは距離がどうかですね。


コスモキュランダ

 ヘイロー4×4、サーアイヴァー6×5・6、ヒズマジェスティ5×6・6、「グレートアバヴ≒インリアリティ」4×6。両親のポイントとなる血を満遍なく押さえた父母相似配合です。父母相似配合の良いところは、両親の資質をシンプルに受け継ぐことにあります。本馬の母・サザンスピードは、現役時代にコーフィールドCを勝ったオーストラリアのGⅠ馬。このように高い素質を有した繁殖牝馬であるほど、父母相似配合で能力を継承させることの意味は大きいです。
 ・・・とは言ったものの、サザンスピードはこれまで目立った繁殖成績を残していませんでした。個人的にはディープインパクト産駒の初仔をPOGで狙い、痛い目にあった過去があります。おなじ経験を抱えた人は多いのではないでしょうか。正直に言うと、繁殖牝馬としてのポテンシャルに疑問をもっていたところはあります。コスモキュランダみたいな良い仔を出せるなら、もっと早く出してほしかったですよね(笑)
 本馬はヘイローやサーアイヴァーが中心の素軽い機動力型です。その一方で、ディキシーランドバンドやデインヒルのパワーも兼備。おかげで非力さがありません。スピードの質に反して脚がへたれないため、機動力を長く使うことができます。おもしろい性質の持ち主だと思います。ただし本質的には東京より中山向きかなという印象。もっと言えば、菊花賞で楽しみにしている存在です。


【告知】
配合パズルシリーズの新刊『裏・配合パズルでアタリはわかる 2024』が好評販売中。ぜひお手元にどうぞ🙇


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?