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大阪杯 有力馬血統考察

タスティエーラ

 「ナスルーラ×プリンスキロ」血脈や「ロイヤルチャージャー×プリンスキロ」血脈のような、柔軟性を伝える血が豊富。父方には5本(ミルリーフ、サーゲイロード×2、ローズバウワー、ナタシュカ)、母方にも3本(ローソサエティ、ミッテラン、セクレタリアト)あります。おもしろいのは、父方は欧州血統の柔軟性が中心であるのに対し、母方は北米・ボールドルーラー系の柔軟性であること。全体の色合いは柔軟性で統一されていながら、使っている血は微妙に違うのです。このおかげで血の煮詰まりがありません。
 また父・サトノクラウンと祖母・フォルテピアノは、ノーザンダンサー系の血を濃く内包。その一方で母の父・マンハッタンカフェの部分だけは、ノーザンダンサーが1滴もありません。詰め込むところと抜くところのメリハリがきいており、マンカフェをとても上手く使った配合だとも思います。
 脚さばきが少し淡白で、スピードはワンペース。どちらかと言えば母方の米血気質が濃くでています。3ハロンの切れ味勝負ではなく、早めにエンジンを掛けていき、4ハロンのスピードの持続戦に持ち込むかたちが理想です。前走の有馬記念は直線で前をカットされる不利。急坂の手前でブレーキを踏む致命的なロスがありました。スムーズならもっと上位争いをしていたのは間違いありません。


ローシャムパーク

 母のレネットグルーヴは、歴史的名牝のエアグルーヴを礎として、そこからサンデーサイレンス、キングカメハメハというA級種牡馬によって紡がれてきた繁殖牝馬。その母にハービンジャーを配して誕生した本馬は、まさにピカピカの良血馬です。ハービンジャー×母の父キングカメハメハの組み合わせは、ブラストワンピース(有馬記念)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)などの活躍馬をだしています。しばらく目立った実績がありませんでしたが、近年は本馬やチェルヴィニアが登場。久しぶりに存在感をみせています。
 上品な血統構成であるがゆえ、どことなく繊細で、温室育ちっぽさ感じていた馬です。しかし近走の走りをみて、その印象は大きく変わりました。血統背景から、僕が勝手に先入観をもっていただけかもしれませんが、レースを走るごとに雰囲気が変わり、どんどん強くなっている感じがしますね。阪神2000m自体は問題ないでしょうが、スピード型ではないため、馬場はタフ寄りのほうがよさそうです。


ベラジオオペラ

 ロードカナロアは母の父にアグネスタキオンをもつ牡駒がよく活躍しています。重賞勝ち馬こそいませんが、堅実に走るニックスです。本馬は母の父がハービンジャーなので、上記の馬には該当しません。ただし祖母のエアマグダラが、実はアグネスタキオンと血統構成が似ているのです。タキオンもエアマグダラも、ともにサンデーサイレンスの直仔。さらに母方にはラジャババとテューダーミンストレルを内包しています。そっくりとまでは言いませんが、軸となる部分はおなじです。もしかしたら本馬は、エアマグダラをアグネスタキオンの代替ニックスとして機能させることで、能力を高めた配合馬なのかもしれません。
 走り自体からはあまりロードカナロア産駒っぽさを感じません。どちらかと言えばハービンジャー産駒のような雰囲気があります。かちっと芯が入り、均整の取れたフットワーク。先に考察したローシャムパークに似た印象を抱くタイプです。
 機動力に長けたアイドリームドアドリーム牝系の出身。本馬が挙げた重賞2勝(スプリングS、チャレンジC)はどちらも小回りコースです。前走は京都・外回りの長い直線で機動力がいかせず、最後に根負けしてしまいました。内回りに替わる今回の条件はベストでしょう。いい走りを期待したいです。


プラダリア

 母の父・クロフネのアメリカ的なパワースピードで走るディープインパクト産駒。おなじ構成の馬にはレイパパレがいます。性別が違うぶん、こちらはもっと男っぽくスタミナ寄りにしたタイプでしょう。レイパパレは渋った馬場で2戦して負けがありません。大阪杯を勝ったときも重馬場でしたね。本馬もその点は似ており、重の京都大賞典勝ちを含めて3戦2勝、3着1回です。
 2代母の父がフォーティナイナーということもあり、スピードの性質が一本気なところがあります。メリハリを利かせるより、淡々と走ったほうが能力を発揮しやすいのではないでしょうか。
 前走の京都記念は良馬場ですが、タフ寄りの芝状態。本馬の特性が活きる条件だったと思います。直線はベラジオオペラとの一騎打ち。詰め寄られる場面はありましたが、持続力でしのぎました。京都の中距離は合いますね。阪神・内回り向きという感じはしません。距離も微妙に短いでしょうか。雨が降るなど環境面の後押しがほしいところです。


ソールオリエンス

 母のスキアは血統構成が重厚な繁殖牝馬です。その父・モティヴェイター、さらに母の父のクエストフォーフェイムがどちらも英ダービーの勝ち馬。さらに2代母の父にもデインヒルを据えており、欧州のパワーとスタミナがたっぷりと詰め込まれています。そんな母に、長距離GⅠ3勝を挙げたキタサンブラックを組み合わせて誕生したのが本馬。一見するとかなり鈍重なタイプに思えます。しかし実馬はまったくそのようなところがありません。また本馬のきょうだいを見ても、富士Sを勝ったヴァンドギャルドを筆頭に、むしろマイル以下での好走が目立っているくらいです。
 これはおそらく『テューダーミンストレル』の血のおかげでしょう。テューダーミンストレルは英国最強マイラーと謳われたスピード血統。スキアはこの血を5本ももっているのです。血統表の位置で言うと、スキアからみて7代目とかなり薄いところにあります。しかし5本もあれば、主軸になるだけの影響は及ぼすはず。このおかげで血統全体のパワーを「推進力を得るのための筋力」として、スピード要素に昇華できているようです。母方のパワーで加速させたあと、父・キタサンブラックの持続力で長く維持させる脚質。両親の美点がうまく融合しています。
 前走は距離を大きく短縮させて1800mに参戦。牝系の強みであるピリッとしたスピードを呼び覚ます意味で、この選択には好感がもてます。追走に苦労していましたし、あいかわらず大味な競馬ではありましたが、いいきっかけになったのではないでしょうか。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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