中国経済の崩壊、始まる

某SNSでの話題を元に、一度だけちょっと深く考察するだけの文章です。
今回は、Youtubeや新聞等でニュースとなり始めた、恒大集団の債務整理問題と、それに関わる中国経済の終焉について語ってみたいと思います。

さて。経済の問題というのは、中国に限らず、どの国もなにかしら抱えているものです。
そして、経済危機にいつなるのか、あるいはもうなっているのか。明確なきっかけがない限り、前もってそれを知ることはほぼ、不可能であります。
それはなぜかというと、「健全である経済」というものがどういう状態のことを言うのか、という定義が曖昧だからです。
国債発行額が年間GDPの何%以上だと問題なのか。
失業率が何%を越えるとまずいのか。
年間の企業倒産件数がどれくらいになると危険水域なのか。
明確な数字は出せません。

中国経済は、ここ何年間かずっと、「破綻する」と言われ続けてきましたが、傍目にはなんとなく持ちこたえており、コロナ禍の発生源であるにもかかわらずロックダウンなどの強硬手段も使いながら、いち早く立ち直ったという印象でした。
それが、どうも明確に、「経済破綻」に向けて今年、ゆっくりと進み出しているような気配がございます。では、本編をどうぞ。


中国経済崩壊の「きざし」を、何によって根拠とするか

いくつか(上海や香港のショッピングセンターが閑散としている、医療が崩壊しつつある、大規模レストランの大型倒産 等)あるが、やはりこのたびの、恒大集団の債務整理を香港の高等法院(日本でいう高裁)が命じた、ということが大きいのではないだろうか。

恒大集団の、企業としての命運は誰の目から見てもとうに尽きていたのだが、なぜこんにちまで持ちこたえたのかと言うと、「中国だから大丈夫だろう」と皆が思っていた、というのが大きいように思う。
資本主義を導入したとはいえ、国家的には中国は共産党支配国家である。共産主義に根ざした思想を持つ国が、国の根幹である土地事業において、破綻を許すはずがない。きっと助けるはずだ。そう誰もが思っていた、ということだ。

しかしまぁ、そうもいかなかったのだ。
恒大集団の負債総額は、現在帳簿上明らかになっているだけでも3千億ドル(およそ48兆円)と言われている。
しかもこれは、「現在恒大集団が資産として持っている土地などが、正規の額で売れなかった場合の損失を計上していない現状の負債額」であるので、実際の負債がいくらになるのか、予想もつかないというのが実際なのだ。

なぜ恒大集団の破綻が、それほどの問題になるのか


実は恒大集団だけではなく、今から遡ることおよそ半年前、’23年8月のこと。
碧桂園(カントリーガーデン)という、やはり土地開発を生業としていた中国の大企業が、およそ500億元(1兆円)前後の最終赤字を計上する見通しとなり、事実上の債務破綻が見え始めた、というニュースがあった(10月、既に一回目の債務不履行が確定している)。
これらの例をもって、というと結論の飛躍に聞こえるかも知れないが、これまで共産党主導で行ってきた中国内の土地開発の惨状を知る者にとっては、これらが明らかに、中国発の不動産バブル崩壊のシグナルである、と考えてさしつかえない、という発想に行き着くことだろう。
要は、ことは恒大集団一社にとどまる問題ではなく、中国全体で、土地需要の縮小と価格の暴落、それによる土地開発業者の破綻が、セットで襲ってきている、ということなのだ。
これが中国経済の根幹に関わる大問題である理由は、日本のバブル崩壊、あるいはアメリカのリーマンショックを見てきた者にとっては明白である。
経済の根幹というのは、実は土地、不動産なのである。
不動産価格が右肩上がりの上昇を続けるとき、その国の経済は右肩上がりとなり、逆ならば右肩下がりとなる。
なぜか? ここでは簡単にしか触れないが、それは、銀行がお金を貸すとき、担保となるのが大抵不動産だからだ。
不動産が右肩下がりとなると、担保とした土地が「不良債権化」する。
貸した額より担保となる土地の代金が高いからこそそれは担保となるのに、土地の代金が貸した額に満たない、しかも時を経て下がり続ける、となれば、何もしてないのにその銀行の負債は増大することになる。そして、金融がやられればその国の経済は終りである。

中国経済の好調は、不動産価格の高騰が担っていた


中国が、資本主義の皮を被った共産主義国家であることは、実は他の国にとってもある種、都合がよかった。
資本主義国家においては、どんなに国が強大であろうと、「カネ」を失えば国力・権力がああああああっという間に失墜することになっている。
日本のバブル崩壊にあっては国が公的資金を出すことに同意し、金融再生委員会経由で7兆円規模の注入を行った。またアメリカにおいても、リーマンの親玉(RMBSやCDOといった、サブプライムローンに関わる不動産証券商品の元締め)たるAIGを、内外の大批判にさらされながらも公的資金の注入によって救った。
これらははっきりと「イレギュラー」であり、「反則行為」である。それでもやらなければ連鎖倒産がどこまで続くか予測不可能だったので、無理矢理に止めざるをえなかったのだ。
だが中国なら、共産主義国なら……。このような反則行為も「反則とみなされない」という期待がふわっとあったのだ。国が私企業に介入することに、それほどの不思議がない国。それは実は、投資をする側だった西側諸国にとって一種の安心材料であったはずだ。
なので、中国が無茶な土地開発(需要がない土地にビル群を建て、インフラの整ってないマンションを建て、ゴーストタウンに鉄道をひっぱり……ということを平然とやっていた)をしていても、まぁ政府が最後はケツ拭くんだろ、と、エレファントインザルームを地で行く「見て見ぬふり」を決め込んだのだ、と言えよう。
土地開発は共産党の肝いりだった。だから中国の土地開発業者には、莫大なカネが流れたし、そのカネは地方財政をも潤したし、中国のGDPは爆上がりし、国民は借金をしてでも贅沢をすることにしたのだ(土地を持っているだけで己の資産が日に日に爆上がりしていくのだから、収入に怯える必要がない)。
かくして、中国の不敗神話が誕生したのである。

なぜ、そんな無茶な土地開発ができたのか


中国が土地開発の一本足打法(実際には、半導体、EV、その他工業、農業等、まんべんなく発展させてきたように「見える」が……)を、なぜ改めなかったのか。
それは、中国独自の土地開発における「暗黙のルール」にヒントがある。
中国は共産党国家なので、土地の私有を原則認めていない。なので、土地開発業者が土地開発をするとなると、まずその地方政府に土地を「借りる」申請をする。そして、対価として莫大なお金をその地方政府に納め、そこから開発に着手するのだ。
このルールに則るとなると、地方政府としては、開発が決まった段階で大金が転がり込んでくるので、開発者の誘致には積極的になるが、あとでどのような開発を行うのか、については興味を失う。
方や土地開発業者は、最初の段階で莫大なおカネを払う上にそこから開発のためのおカネを出し続けなければならないために、天文学的な資金を必要とする。
だがこれが共産党の肝いり事業だというところに妙味がある。土地開発をするだけで、自分の子飼いの地方政府が潤うということは、共産党は土地開発業者が「カネを借りやすい」状況を作るのに積極的となる。銀行からの融資がおりやすくなったり。あるいはリアルタイムペイメントのようなシステムから。あるいはそれすら閉塞したら、こんどはシャドーバンキングから。
いっとき、「中国はGDP成長率7%を下ることはない」という神話があった。
なんのことはなく、土地開発などで業者が借入するこれらの貸主が提示する利率が7%を越えていたからだ。
つまり、GDP成長率が7%を下回るということは、それすなわち融資資金が焦げ付く、ということとイコールなのである。

政府が、地方政府が儲かる。ただ土地を貸すだけで。
このスキームを政府がやめられなかった、何よりの理由である。

仮に恒大集団がこのまま債務整理をし、倒産するならば


恒大集団が債務整理に乗り出す、となると、ただでさえ供給過剰であった土地建物の市場がさらに下落に転じることは火を見るより明らかである。
これは、上記で語ってきた共産党・地方政府の必勝スキームが使えなくなるばかりか、土地の値上がりで儲けていた全ての資産家の首を絞めにかかる。
なにより、銀行の不良債権が顕在化するだろう。日本のバブル崩壊と同じ構図だ。ただし、その規模は1京円を越えるとさえ言われている。

これらの現象は資産家をも締め付ける。現状ローンを払っている人たちは、日が経つにつれ目減りする自己の資産減少に耐えかね、どこかで土地建物を手放すことになるだろう。そしてこれが土地価格のさらなる下落を生む。
わぁお。考えたくないことだ。

いずれにしても、やり過ぎたのだ。
日本ですら、バブル崩壊後利用が減った鉄道の維持費だけで鉄道会社が苦しんでいる現状だ。……ま。中国ならそのままうっちゃる、というだけのことだろうが、それにしても規模が規模だ。全ての債務を整理する、ということになると死体が何万人川に浮くことになるやら……。

まだまだ、これは中国経済という敷設された地獄行き無限列車の、途中の光景である。東海道山陽新幹線でいうならまだ静岡を通過したあたり。
さぁて。鹿児島中央駅に着く頃には、あの国はどうなっていることやら……。



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