素振りと金子萬嶽

「ひでちゃん、気分転換にゴルフ行こうよ」

 そう誘ってくれた会社の角田さんの言葉が嬉しく、練習しようと思うこの頃であった。

 そして、明日(二十九日)に迫った六年ぶりのラウンドに、帰宅後、近くの公園に赴いた。
 持参したマットでアイアンの素振りをすると、フォロースルーの時の青空が目に眩しく、

 ーーあゝ、天体は何事もなく移ろうのに、オレの軸は定まらんなあ…

 と独言ちていた。身体の軸と時間の軸、どちらがどちらなのか分からぬまま、時が過ぎて行く。

 梅雨の明けて以降紫陽花はくすみ、木槿が笑うこの頃、あの花が散り、この花が開いていることにはっとさせられるが、花の名前が思い出せなかった。

  近よれば見うしなひけり山ざくら
 
 郷里、出羽上山の家老金子萬嶽の発句が思い出された。

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