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暮瀬堂日記〜立葵と鼻詰まり

 頭部と顔面の右側にだけ鈍痛と疼痛が続いて十日余り、家人のアドバイスで東京労災病院に参る。
 道すがら、群生する立葵に目を奪われた。近寄って匂いを嗅ぐが、鼻が詰まっているのを思い出し自重する。

   頂きに蟻立ちあぐる葵かな

 小さき者の大きな視線を垣間見て、病院に向かった。 
 紹介状がないので診療代は高かったが、思った通りの蓄膿症の診断が下り、安堵する。
 帰宅後、スーパーにて購った鰹刺しで酒を飲み、程なく午睡する。
 鼻詰まりでも、鰹は美味いものである。

(旧暦四月廾四日 芒種 腐草螢と為る候)

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