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17年後のねぢり花

東京に居を転じて、17年となった。

 詩のようなものを書いたり、小説もどきも書いたりして来た。でも、香代子さんが、いつもボクに言っていたのは、

ーー『あなたはね、俳句の人なんだよ』

 ということであった。
 その都度、ハッとさせられたのだった。

 彼女が居なくなって丸三年、彼女は居ないが、彼女の言葉は常に突き刺さる。

 夕焼を見ようとベランダに出ると、十年以上育てているネジバナ(別称・モジズリソウ)が目に入った。羽田整備場の街路樹の脇から取って来たものだが、毎年同じ時期に咲いてくれる。植物は、測ったように、1年後に芽吹いてくれる。そして、少しして枯れてゆく。

  ねぢ花のねぢのほどける都かな

 上一句を得たが、評価してくれる人は、もう星にいる。
「香代ちゃん、この句どうかね」
そう呟きつつ、改めて、俳句の人になろうと瞑目していた。

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