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青い瓶(1)

旅先のカフェで

旅先のカフェに入った。その窓際に、青い瓶が飾ってある。細長い首の瓶だ。中に液体は、入っていない。別に、それが飾ってあるのがおかしいという訳ではなかったが、なぜか聞いた。

「どうして、この青い瓶を飾ってあるのでしょうか?」

ステキですね、とか、この場所に似合っていますね、とか言おうと思っていたのに、つい、違う言葉が出てしまった。

店主は、やさしく答えてくれた。

海が見えるのだ、と言う。ただ、見える時と見えない時があるのだ、とも。

いつだったか、『青い瓶に水を入れて、その瓶にお陽さまの光をあてると、その水は柔らかい味になる』と、聞いたことがある。多分、そちらの答えを期待していたのだと思う。店主の答えに、私は、目を大きく見開き、瓶から店主の顔に、目線を移した。

「見せて頂いてもかまわないでしょうか?」

店主は、瓶のところまで行って、その瓶をやさしく手にとり、私のところに持ってきてくれた。

私は、瓶を手に取り、その口から中を覗きこんだ。瓶の底を通して、店の中が見える。

「残念ながら、今日の私には、海が見えないようです。」

店主は、肩をすくめて微笑みながら、その瓶が
この店に来た由来のことを教えてくれた。

その日

雲ひとつない、透き通るような青い空。下に広がるのは、コバルトブルーとは言えないが、穏やかな波の、瀬戸内海の海。その島は、白い花が一面を覆っていた。その花の名前をシロバナムシヨケギク、という。

白いワンピースを着たその女の人は、広いツバの麦わら帽子を右手でおさえながら、白い花の中に立っていた。肌の色は、透き通るように白く、まるで、その花から生まれた花の精のようだった。隣には、ダンディーとは言いがたいが、優しさのにじみ出た、紳士がいた。

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小説を書いてみました。出だしだけ。
続きは、明日か、1週間後か、15日後に、です。

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