「月報こんとん」2023年5月号

栫伸太郎「あるきのみ」

ハトムギが大きな桃になっていく

イールドカーブコントロールのラテアート

踏切支障報知装置のあるきのみ

カテキンが消防吏員だとしたら?

地平線につぶされて手紙になる蚊

内面に白く付着するしじま

マルチーズ自体が少し糸電話

点線でお茶のなかみが描いてある

医学書の中に明るい登下校

最期まで優しい湯桶読みでいて


今田健太郎「ビート板うつくしい」

ビート板だったころまでさかのぼる

江戸時代 きみの瞳はうつくしい

おれたちはひとりも蟹をしらないの

爪あとの上によくないステッカー

ノンフライ製法チーム 回答は

大使館ルートで気持ちうちあける

王さまもあとからこっち来るってさ

ほんとうのことが言えないかき氷

そう言って花びんのひとは消え去った

おそうじのあとにやりたいこと5000


暮田真名「歌もの」

手ぶれのせいで絶える王統

終わらない映画もあるが気のせいだ

きりがないラ・フランスとか食べてたら

歌ものにのせられている心地だよ

夢見がわるいときは知らせる

衣擦れという結論にたどりつく

そこにいるなら雛形を見せてくれ

だれしもが澱の前ではかしこまる

さまざまな位相で無賃乗車する

ほかに打つ手がなくてポリフォニー


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