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「ぺら句会」結果発表

「ぺら句会」たくさんのご参加ありがとうございました。
およそ10日の投句期間に、37名の方から74句の川柳を投句していただきました。
2つあるお題のうちどちらか片方でも参加可としていましたが、すべての方が2つのお題にチャレンジしてくださり、たくさんの句が読めてうれしかったです。
それでは、結果発表です。

題「ぺら」

【特選2句】
5
甲は乙の罪を見逃すこととする

「甲」と「乙」は主に契約書で用いられる用語ですね。なんのために契約書を作成するのかといえば、口約束では有耶無耶になってしまう取引の内容を形に残すためであり、契約を守れなかった際は相手に罰則を課すためです。つまり「罪を見逃すこととする」などという条文は契約書の精神からかけ離れたところにあるといえるでしょう。ビジネス的な文体を使いながらその秩序を内側から崩壊させる、スパイのようなやり方が巧いなと思いとりました。「ぺら」というお題に対する回答としてもスマートで、ちょっとスマートすぎるくらいですね。

25
反社会的湖にお手紙です


「反社会的湖」! ……「反社会的湖」!!!
「湖」というもともと人間と無関係に存在するものに「反社会的」という形容を付けることができた時点で「勝ち」ですね……。人間の手に負えない、不思議な力を湛えた場としての湖を出現させることに成功しています。また、スケールの異なる平面が「みずうみ」「おてがみ」という小気味よいリズムで重なることによって、湖面もまた一枚の平面なのだなと気付かされます。
「反社会的湖」!?

【次席2句】
31
五十音順に紙幣の顔になる


「紙幣の顔」といえば歴史上の人物で、偉人で、という固定観念があるわけですが、この句では「五十音順」、いわばランダムに抜擢しようとしている。この句のいうとおりになったら、最初はただ「あ」から名前が始まるというだけの理由で選ばれた人の顔が大量に印刷されて流通し、時間が経てば「ら」とかから始まる名前の人の顔が大量に印刷されて流通することになります。この「世の中をめちゃくちゃにしてやろう」という気概が良く、とりました。

35
肉離れしたバッタのように

「のように」っていわれても……。でも待って、バッタは昆虫の中では脚力をたのみに生きていそう。脚の筋肉が発達しているイメージがなんとなくある。そうすると「肉離れしたバッタ」という表現もそんなに突飛じゃないのか? いや、突飛。昆虫大の生き物の肉離れなんか想像したことないから。野球選手くらい大きいバッタが横たわってるのをイメージしてしまう。「のように」という演奏方法みたいな締め方もおしゃれだったので、とりました。

【並選】
24
ぺらはもう上級天使立ちなさい

「ぺら」を詠み込んだ句は複数ありましたが、この句がいちばん挨拶句っぽさがあった。ので、この「ぺら」はこのたびの私の第2句集のことなんだろうなと、勝手に読むことにしました。すみません。「天使」+「〜なさい」という形の句には「杉並区の杉へ天使降りなさい」(石田柊馬)がありますが、ぺらは「上級天使」なんだ……という謎のうれしさがありました。ぺらの長辺は103センチなので、立ったら人間と同じくらいだし。ありがとうございます。

字題「家」

【特選】
25
ベーコンと犬の家賃が払えない

この句には危険なところがいくつもあって、まずは(払わなくていいのに)犬の分の家賃を払おうとしているところ。犬だけでは飽き足らずベーコンの家賃まで払おうとしているところ。その上で「払えない」と申告しているところ。なにより危険なのは、加工された状態の肉であるところの「ベーコン」と加工前の状態の肉であるところの「犬」を並列しているところです。このいいかただとまだ「人間」の家賃は払えているのかもしれません。しかし、人間もまた加工前の状態の肉に過ぎない。

【次席】
30
ペコちゃんにやれと言われて家燃やす

不二家はケーキの販売を行っており、イートインよりもテイクアウトのイメージが強いので、「家」はペコちゃんのお得意先であるはずなんですよね。メインの顧客の住まいに放火するペコちゃん、しかも自ら手を下すのではなく他の誰かに命令するかたちで、というのがどうしてもおもしろかったのでとりました。

【並選2句】
10
クリーム生クリーム家庭裁判所

生クリームをよくかき混ぜて固めたものがクリームであるはずなので、「クリーム」→「生クリーム」ではかろうじて固体であったものが溶けて液体になっていくかんじ。そのもったり、のったりしたところから急にめきめきと「家庭裁判所」が生えてくるおそろしさ。おそろしかったのでとりました。

29
磯野家へ手土産にバットを持って

キャラクターの名前を使った句ではこちらもおもしろかったです。「ペコちゃんに」がペコちゃんを登場させて100%の創作をしているのに対して、こちらは中島くんが「野球しようぜ」といいにくるよくあるシーンを別の視点から切り取ったものという趣です。「手土産に」といわれると野球道具を携える中島くんが途端に不穏分子になるおもしろさ。

以上

参加してくださった方はスプレッドシートにて名乗りをお願いします。
任意ですが、句が選ばれた方は必須でお願いします。
後日、参加してくださった方のお名前をこの記事の末尾に追記しようかと考えています。それでもいいよという方はぜひ。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1olhNKiRg3gMtwNaTbv4dR11cZcLTOpK-sKF8ByvmV20/edit#gid=0
上記URLを開いて、「投句者氏名」の欄に名前を記入してください。

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いったい誰が投句してくれていたのでしょう。私が選んだ句の作者はいったい誰なのでしょう。どきどきですね。



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