「月報こんとん」7月号
作品
松尾優汰「対決」
加害者の名簿にぼくも載っている
きみに剣おれに攪拌棒 勝負
万年筆の先から紳士たれている
白龍だと思ってました眉毛でした
初恋のあいまは単語帳をよめ
火事だ アイスキャンデー売りが駆けつける
悪口のなかににぎやかな喫茶店
抱きしめられた人から蝶になって飛ぶ
どうしても埋まらない太宰治の手
松明をわってふたりでゆく凍土
二三川練「歴史」
先鋒は壁から生えている孔子
裏切りの天皇の手にチョココロネ
氵をもう書かなくていい歴史
足立区のアールグレイは無味無臭
俳優死して書物のなかの革命歌
扇風機がらみの自死は好好爺
国挙げて葬るサドの天文学
英霊の手形汗ばむ部屋の窓
表札もねむる傍観者の毒味
神さまの代弁者の代弁者 鮭
暮田真名「老猿」
掌編になるまで老猿をにぎる
嘘泣きを登竜門に見せている
ブートレグだとわかるまで育てます
パジャマから比内地鶏を拾いあげる
陶片にまじって文字を書いてみる
姿見に東の空がうつるだろう
祝日かどうか色ではわからない
刀傷なら魚でもかぞえられる
村雨のディスクジョッキーなんだから
晩年になっても電気つけっぱなし
ネプリ印刷番号
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