第1回「川柳句会こんとん」大賞発表など

大賞発表

投句者番号7  松尾優汰さん
投句者番号17 二三川練さん

全23名の方にご投句いただいたなかから、川柳句会こんとんにて一年間川柳を共に発表するのは上記のお二人に決定しました。
ありがとうございました。
「月報こんとん」1月号の発行は1月末を予定しています。お楽しみに。

また、「第1回川柳句会こんとんから10句」に入選した句の作者の方々は以下の通りです。

葉るまげどんの葉ての葉ざくら 岡本拓也
きにふれるためにおきるかしぬかみか 小野寺里穂
さりげなく退路をふさぐ遊び紙 朝凪布衣
テーブルの角で金閣寺が割れる 嘔吐彗星
永遠をどうしよう指紋つきそう 城崎ララ
泣きやむと肩甲骨が森にある 多賀盛剛
ILLNESS 毒のシャボン玉くらえ 奥村鼓太郎
それは朗読ではなくてクーデター 雨澤佑太郎
黙祷のあいだ素肌がやかましい 西脇祥貴
ごめんと言って涅槃をまたぐ 松尾優汰

選後感、選考基準など

川柳句会こんとんに投句をしてくださった方々、関心を持ってくださった方々、ありがとうございました。

もし『ねむらない樹』vol.6の川柳特集にわたしが寄稿した「川柳は上達するのか?」をお読みになった方がいれば、この度わたしが立ち上げた「川柳句会こんとん」には違和感を覚えたかもしれません。
先に挙げた文章中で、わたしは「川柳が上手い人などいない」と果敢に宣言しています。
一方で、投句者全員から10句を徴収してそのなかから二人の大賞を決めるというこんとんのやり方は他ならぬ「川柳が上手い人」を率先して探し出すことを目的としているように見えたでしょう。
わたしはほんとうは、生涯に10000句つくって1句究極のものができるなら、残りの9999句がつまらなくてもかまわないと思っています。しかし、10句という少ない句数のなかでは究極の1句を叩きだすことは難しく、ややもすれば「アベレージ」の高さを競い合うような意義の乏しい句会になってしまいかねません。
「誰がおもしろい川柳を書いたのか」には「おもしろい川柳」に寄せる関心の100分の1も払ってこなかった私にとって、投句してくださった23人の方それぞれの句に向き合うことは私自身の川柳の捉え方にも変容を迫る体験でした。

そもそも川柳定型に対する関心や把握の仕方がこれほどまでに人によって異なるということを、こんとんの選句を通して初めて教えられた気がします。
どういうことかというと、10句単位で見ると「参加者番号○さんの10句と参加者番号△さんの10句は別の人が書いた川柳だな」ということが分かるということです。これは1句や2句だとあまり分からない。
川柳は「誰が作っても一緒」だし、そうであってほしいという思いが私にははっきりとありましたが、どうやら違うようです。
それならば、一年間共に作品を発表する上では自分とは異なる方法で川柳を書いている人、自分とは異なる可能性を川柳に見出している人を選んだほうがこんとんが活気のある場になるだろうと考えました。
おもしろさはもちろんのこと、「自分はこのようには書けない/書かない」と感じた句を積極的にとりました。
最初に「言及している句の多寡とこんとんに選ばれているかどうかに直接の関係はない」と書いたのはそのためです。
結果だけみればわたしがとった松尾さんの句は10句中5句と最多、二三川さんの句も10句中4句と選ばれた句が多い順に受賞している格好にはなってしまいましたが、心意気としてはそのつもりでした。
全く句風の違う三人が同じ紙の上で作品を発表するので、おもしろくなると思います。ご期待ください。

ちなみに「第1回こんとん句会から10句」を選ぶ際は全230句をシャッフルして句をもとのかたまりから離れた場所に置いてみました。
すると、10句単位でみていたときは気に留めていなかった句が急に目に飛び込んでくるのです。
作者名やタイトルはなく、単に「参加者番号」のもとで緩く10句が統べられているだけでも句の見え方が周囲の句に影響を受けるということに愕然としました。
これもこんとんの選句をするなかではじめて実感したことの一つです。
いまでも私は川柳を作ることは建物の屋上でUFOを待ち焦がれるような営みであると信じて疑いませんが、受け取った川柳は言葉である以上相互に手をつなぎあい、繫殖をはじめるのではないかということ。
それは結果として、小さい単位では「連作」を、大きい単位では「作家性」を築き上げだしてしまうのではないかということ——?

第一回運営の反省

・12月31日発表のはずが、間に合わなかった

すみません。

・支援を募っているにもかかわらず、いつどれだけのお金が集まったのか明らかにしていなかった

やろうやろうと思いながら先延ばしにしてしまっていました。
来年以降は募集要項の記事に日付と支援額を記載するコーナーを設けます。
2021年の間に4名の方から合計6000円のご支援をいただいたおかげで、二人の人と一緒に作品を発表できるようになりました。一人に絞ろうとしたら頭がパンクしていたと思います。助かりました。

10月4日 2000円
10月13日 1000円
10月24日 2000円
11月23日 1000円

・句の提出方法について

第1回川柳句会こんとんではぺら句会に引き続きスプレッドシートを使用しましたが、自分の前に投句した人の句がみえたり、期間内に句を何度でも直せたりすることにも良し悪しがあるんじゃないかなと思い始めました。「提出したあとに句を直せるのも考えものかなあ」くらいのことですが。
試験的に、次回はグーグルフォームなどを利用してみてもいいかも。投句期間終了/選考期間開始のタイミングでPDFなどで詠草を公開して……など。
また考えます。

軸吟10句

伝記的事実と違う出品者
語い力がついたファーコートを羽織る
矢面になって 蕨も生えてきて
斤量を四人家族に分けてあげる
雪焼けをしたアトムも素敵
トルマリン 聴神経を死蔵する
空位なら耳あてのために耳があるんだ
ピグレット、強いて、値踏みをしていたい?
かたときも古井戸がみた虹なんだ
スタントなしで日付が変わる

2022.1.2 暮田真名


いただいたサポートは「川柳句会こんとん」の運営に使わせていただきます。