「月報こんとん」3月分

栫伸太郎「呈色」

従兄弟のなかで一番しりとり

着地する 毀れるよりもやや早く

ながい目でみればごううのえかきうた

くちびるに似てないものを聴いている

点滅と遠投だけが好きだった

ちょっとやわらかい壇上

階段だけで桜をつくる

はちみつか双子素数になっていく

祝前日は耳から落ちる

大きくなったら呈色しよう

今田健太郎「おもえないんだわたし」

アーケード街とはおもえないくらい

ぬすまれた自転車だった(んだわたし)

変装を解いたいちごのタルト べしゃ

茶運びの人形だった(んだおれは)

このココアよりもおいしいあのココア

テーブルに名刺だぜ「小津安二郎」

ひとくちめまでにすべてがわかったケーキ

川という一日なのでうなずける

そしてシンクはかわいたままで

教室とくらべられるのが運命

暮田真名「稜線」

金平糖なんで背丈がのびないの

金字塔きらり 五重塔するり

素手で日本の底にさわれる

ゆどうふを歴史の重みから守る

しずくちゃんですから逆上がりはしない

勝ち馬に乗って二県にまたがって

宿題が出て天国にのぼれない

花言葉だけだよ海を越えるのは

札束に例えられないはずもなく

模写してもしてもおまけがついてくる


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