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連載短編小説「逆再生」

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2008年、初期衝動にまかせて人生ではじめて書いた小説です。
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#オリジナル

【連載小説】逆再生 はじめに

突然ですが、私の今につながるオリジナル作品の原点となる、個人サイト時代に掲載していた、人…

【連載小説】「逆再生」 第6話

9月4日 16時25分  坂巻佑子  消毒液の匂いが空気に充満していた。朝にしてはずいぶん薄暗…

【連載小説】「逆再生」 第5話

 あの後、佑ちゃんの足の傷が突然直ったことについては、結局何も聞き出すことはできませんで…

【連載小説】「逆再生」 第4話

9月4日 19時42分  坂巻佑子   玄関のドアを開けると、魚の焼ける匂いがした。母が夕食の準…

【連載小説】「逆再生」 第3話

9月4日 07時45分  小川直美  太陽の見えない朝でした。  車内アナウンスの声は、一定時間…

【連載小説】「逆再生」 第2話

9月5日 17時37分  坂巻佑子 一陣の強い風が、鉄骨の隙間を抜けた。 風は生温く、錆びた鉄の…

【連載小説】「逆再生」 第1話

彼女は停止した。 黒々とした深い沼のような眼球を大きく見開いたまま、虚空を見つめている。 体は土の上に横たわり、手を横に広げ仰向けになっている。 生温い風が時折吹き抜け、彼女の髪と白いシャツを微かに揺らした。 先日の台風の余韻なのか、風は少し強い。 だが、風の音以外は何も聞こえない。 夕暮れ時の商店街のざわめきも、学校帰りの子供たちの声も何も聞こえない。 世界が切り取られたかのように、静寂に包まれていた。 耳をすますと、遠くで電車の通る音だけが聞こえた。 彼女の目線に合わせ