【連載小説】「逆再生」 第1話
彼女は停止した。
黒々とした深い沼のような眼球を大きく見開いたまま、虚空を見つめている。
体は土の上に横たわり、手を横に広げ仰向けになっている。
生温い風が時折吹き抜け、彼女の髪と白いシャツを微かに揺らした。
先日の台風の余韻なのか、風は少し強い。
だが、風の音以外は何も聞こえない。
夕暮れ時の商店街のざわめきも、学校帰りの子供たちの声も何も聞こえない。
世界が切り取られたかのように、静寂に包まれていた。
耳をすますと、遠くで電車の通る音だけが聞こえた。
彼女の目線に合わせ