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サブカルにみるジェンダーロールの変遷 女性の政治への進出のこと

昭和末期から現在までの漫画におけるジェンダーロールの変遷と政治における女性の進出のことについて考察してみます。

戦前までは義務教育は小学校まででしたが、戦後、ほどなく中学までが義務教育となり、70年代になると、義務ではないものの、高校も増え、高校進学率が98%以上となります。

誰もが、当たり前に高校に進学する時代になると、荒れる高校が話題になります。その話はやがて、不良漫画となり、80年代、漫画における一つのジャンルを確立します。

90年代になると、少年誌から不良漫画が姿を消し、アウトロー系として、一部の青年誌へ移行します。リアルでもバイクにまたがるタイプの不良は姿を減らし、代わりに不良の文化は音楽へシフトしていきます。

90年代に起きた漫画を中心としたサブカル分野の変化としては、主人公がそれまで筋肉の発達した腕を露出し、眉毛も太く、描かれていたものが、一転、体が細くなり、眉も細くなっていったことが挙げられるでしょう。絵柄も洗練されていき、結果、多くの女性読者を獲得するようになります。

少年誌といえば、看板作品はバトルものが多いわけですが、直接、殴る戦いから、頭脳戦、心理戦が増えてきた、という傾向もあるでしょう。メガネの主人公が増えたのも平成以降の特徴でしょう。

それから、女性の活躍。昭和期の少年漫画のヒロインといえば、野球部の女子マネージャーよろしく、壁の花、でしたが、平成期以降は女性総活躍というべきか、戦闘要員として、男性同様以上の活躍を見せます。

男性同様以上です。作品によってはヒロインの身体能力が主人公の少年よりも上、という設定だったりします。さらにいえば、ヒロインは処女、というのが暗黙の了解だったと思うのですが、作品によっては、ヒロインが大人しそうなタイプでありながら、多くの異性と不純な交友を重ねていたりと、昭和の少年漫画では考えられない設定です。(しかも、作者は女性です)

かつて、少年漫画は男が描き、少年が読むものでした。男性でありながら、少女漫画で長く活動してきた、ある大御所漫画家は「(昔の少年漫画は)猥雑な表現が多く、とても、こうした媒体で描きたいとは思えなかった」と心情を明かしていたものです。

ただ、80年代になると、少年漫画を原作とした、テレビアニメが平日夜7時代に放送され、90年代になると、絵柄や内容の洗練化もあり、女も読むものになっていきます。

さらには、少年誌で執筆する女性漫画家も90年代から増え始めます。当初は月刊誌に散見されましたが、やがて、週刊誌にも女性漫画家が進出するようになり、ついに、「ジャンプ」で看板作品を描く女性漫画家が現れます。女性が漫画で天下を取ったのです。

90年代以降の少年誌作品の傾向としては男の軟化、女の強化、といえるでしょう。リアルでも、パワハラ、セクハラ、DV、といった、それまで可視化されることのなかった、日常に潜む加害が顕在化されていき、平成13年(2001年)には「DV防止法」として、結実しています。

離婚する夫婦が年間、20万組。そのうち、1万組余りはDVによる離婚とされますが、その9割は夫から妻へのDVとされています。リアルでは男女の不幸な関係がある時、往々にして、女性の側が不利になる傾向は現在も変わりません。

最近では共同親権に関する事案が注目され、DVについて理解を深めた人々も少なくないでしょう。背景には男が加害性を発揮しやすく、女は被害、不遇に遭いやすい現実があります。政治の世界にさらに多くの女性の声を届けるべく、女性議員が増えるべきだろう、そうした思いを強くしたものです。

女性議員といえば、選挙活動においても、赤子を抱えながら、街頭に立ったり、選挙期間中、その日の活動を終えて、託児所に子供を迎えに行ったり、議場に赤子を抱えて入って、それで議会が紛糾したり、あるいは育児に専念するため、議員経験者が立候補を断念したり、と、男性議員と異なり、出産、育児がハードルになっています。イクメンといっても、議場に子連れで参加する男性議員はいませんよね。

それでも、女性の政治分野の進出は確実に進んでいます。

2021年の自民党総裁選では候補者4名中、2名が女性でした。女性が2名以上というのは、初めてのことでした。そして、現在、2024年6月。来(きた)る東京都知事選の候補者の共同記者会見に臨んだ主要候補4名。うち、2名が女性でした。この現象もこれまでの都知事選では初、だったでしょう。

2期8年でどれだけ公約が達成されたのか、疑問視され、学歴詐称も取りざたされる現都知事に対し、挑む主要候補3者。東京都は財政が最も豊かでありながら、出生率が全国最下位(0.99)とあり、各候補者達が掲げる育児政策も注目されます。

その経歴が「女性初」にたびたび彩られてきた「女帝」と称される現知事が3期目に当選するのか。あるいはグラビアアイドル、タレント出身の参議院議員が首都の首長になるのか。誰が当選するにせよ、昭和の少年漫画ではありえない展開を期待しています。

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