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マンダラ世界への旅

こんにちは。旅のアドバイザーのさくらです。

まんだら、マンダラ、曼荼羅、書き方は色々ですが、「まんだら」とはサン
スクリット語の「mandala」の音写で、本質を有するものの意だそう
です。空海が唐で学んだ密教(日本では真言宗として拡がっています)では、大宇宙の本質的なものを諸仏の配置によって表現し、感覚的・現象的に把握できるように、絵や織物、空間で表現しています。

奈良国立博物館で、空海生誕1250年記念特別展「空海~密教のルーツとマン
ダラ世界~」が6月9日まで開かれていました。展示件数115件(うち国宝28
件、重要文化財59件)ということで、こんな機会はもうないと行ってきまし
た。特に、平安時代、淳和天皇の発願のもと空海が制作を指導した現存最古の曼荼羅で、京都・神護寺が所蔵する「国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」が、修理後初めて一般公開されること、京都・教王護国寺(東寺)が所蔵する「国宝 両界曼荼羅」も同時に見ることができるのが魅力でした。

人々の救済を願い密教を学んだ空海は、密教の大宇宙の本質を人々に理解し
てもらうためにはどうすればいいか、試行錯誤しました。平安時代、貴重な
仏典を読むことができるのは僧侶と一部の皇族や貴族階級くらいです。印刷
技術がない時代ですから、読みたいものがあれば、持っている人に借りて一
文字ずつ書き写すしかありません。大河ドラマ「光る君へ」でも描かれてい
たように、そもそも普通の人は文字の読み書きすらできない時代です。
お経を解いても、ほとんどの人は理解できません。

そこで用いたのが、絵で表すという手法です。密教では大宇宙の中心に大日
如来がいて、中心から世界を照らし、人々の心の中にある(胎蔵する)「さと
り」を開く種を守り育てていくと考えられています。この教えを絵にしたの
が「胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)」です。また、大日如来の知恵
は金剛(ダイヤモンド)のように強く、周りを取り囲む仏たちに伝播・共有
されている。この教えを絵にしたのが「金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだ
ら)」です。胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅の一対で両界曼荼羅と言います。

実際に、京都・神護寺が所蔵する「国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」を見
ました。縦横4メートルを超える大きさで、赤紫色の綾地に金銀泥で画かれ
ていて迫力がありました。ただ9世紀からお経をあげる場所に置かれていた
ためか、全体が黒くなって絵の細かいところまで判別できないのが残念でし
た。
京都・教王護国寺(東寺)が所蔵する「国宝 両界曼荼羅」は、同じ9世紀の
ものでしたが、多色の絹織りで作られていたのでよく見えて、解説に沿って
絵を追っていくと、何となくですが空海さんが伝えたかったことが分かった
気がしました。

絵で示す他に、空海が試みたのが空間(3D)で示すというものです。
特別展では、京都・安祥寺所蔵の「国宝 五智如来坐像」が展示されていま
した。五智とは大日如来が備える5種類の智慧(法界体性智、大円鏡智、平
等性智、妙観察智、成所作智)のことで、五智を象徴する金剛界の五如来を
五智如来というそうです。真ん中に大宇宙の中心にいて普遍の智慧である法
界体性智を象徴する大日如来、東に鏡ですべてを映すようにあらゆるものを
見極める大円鏡智を持つ阿閦如来、南に全てのものとの一体化を悟る平等性智を持つ宝生如来、西にあらゆる智慧を観察して人々を導く妙観察智を持つ阿弥陀如来、北に為すべきことを成就させる成所作智を持つ不空成就如来が配置され、普通は見ることができない仏様の後ろ姿や、細かな造りを近くで見ることができました。
空間で示すということでは、京都・教王護国寺(東寺)の立体曼荼羅が有名
ですね。東寺は京都駅から五重塔が見え、駅から南側に歩いて数分です。21
体の仏像が置かれ、空海が見せたかった密教の世界を体感できます。

10数年ほど前からビジネスの世界では「見える化」という言葉がよく使われ
始めました。数値化する、パッと見て誰もが分かるようにすることで、皆が
問題点を把握して改善に取り組めるという主旨だったと思いますが、実は空
海の時代に既に行われていたのです。

メジャーリーグの大谷翔平選手が高校生の時「マンダラチャート」を何枚も
作って、夢をかなえるための8つの要素とそれを満たすための行動目標をあ
げ実行してきたことが話題になりました。「空海~密教のルーツとマンダラ
世界~」展にも、名前はよく覚えていないのですが、極楽へ行くためにすべ
き行動が順番に絵で描かれたマンダラが出展されていました。双六のように
順番に行いを達成していけば、上りが極楽という訳です。
目標や行動を具体的に描いて実行すれば、いつか夢が叶うというのは不変の
定理なのかもしれません。それを実行できるか出来ないかは自分次第ですが。

■参考サイト・参考資料
・「空海~密教のルーツとマンダラ世界~」展 (奈良国立博物館)
https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special_exhibition/202404_kukai/
・「空海~密教のルーツとマンダラ世界~」 (読売新聞)
https://kukai1250.jp/index.html
・「空海と密教美術」展 ジュニアガイド(東京国立博物館)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1411
・東寺
https://toji.or.jp/mandala/
・「オオタニサンのマンダラチャート」 日本医科大学
https://nms-neurosurgery.com/tsubuyaki/tsubuyaki-3001/

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