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トリチウムって何? パート2

こんにちは。くらし活き活きアドバイザーの晴兵衛です。

前回は、トリチウムとは水素の仲間であることや、私達が暮らす地球環境の中に普通に存在していることを書きました。今回は、続編として福島第一原子力発電所に蓄えられているトリチウムを含んだ処理水についてのお話しです。

福島第一原子力発電所の冷却に使われた水は、ALPSという放射性物質除去装置を通すことで、殆どの放射性物質が取り除かれます。これを処理水と言います。しかし、トリチウムは、除去できません。なぜならば、水(H2O)の水素原子がトリチウムに置き換わっているものが含まれるからです。これを取り除くことは、化学的にも物理的にも不可能です。つまり、水そのものを除去しないといけませんので、非現実的な話です。

環境省のホームページに「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」が掲載されており、放射線についての基礎的内容が詳しく書かれています。それによると、1.トリチウムが放出する放射線の種類は、「ベータ(β)線」で、2.薄い金属板などでさえぎることができる、3.放出するβ線はエネルギーが弱いため、空気中を約5mmしか進むことができず、紙1枚あればさえぎることが可能とあります。

福島第一原子力発電所の廃炉に向けた工程で、処理水の保管がネックとなっているため、政府はこれらの処理水を海水で希釈して海洋放出する方針を決定しました。世界の原子力発電所から海に放出されている冷却水に、同程度のトリチウムが含まれていることはよく知られています。しかし、事故で発生したトリチウムということで、えも言われぬ恐怖感があり漁業関係者からは風評被害を危惧する声が上がっています。また、海外からも批判的な声明が発せられています。

今のところ、現実的な解決策としては海洋放出しかありませんので、放射能に対する安全性を充分担保しつつ、誠実さをもってリスクコミュニケーションを地道に努力するしかありません。原子力発電所の正常運転の冷却水に含まれるトリチウムも事故原発の冷却水に含まれるトリチウムも全く同じものです。にもかかわらず、事故で発生したトリチウムは怖い!ここにリスクコミュニケーションの難しさがあります。

■参考図書 小島正美編集  みんなで考える トリチウム水問題
■引用 環境省ホームページ「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」

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