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医薬品開発と実験動物

こんにちは。おくすりアドバイザーの井田です。

コロナ禍が依然として終息する気配が見られない中、新しいワクチンや有効な新薬登場への期待は益々大きくなっています。しかし医薬品の開発は一朝一夕には叶いません。生命関連物質ということで有効性に加え安全性が確実に担保されなくてはいけないからです。

新薬が承認されるまでには、1.植物、動物、微生物等の天然素材から将来くすりになるものの発見や化学的な合成等による研究から始まり、2.動物や培養細胞を使った有効性と安全性の確認 3.ヒトを使った有効性と安全性の3つの段階を経なくてはなりません。今回は2番目の段階で重要な役割を果たす実験動物の事についてその一端を紹介したいと思います。

ヒトに新薬候補となる新たな物質が投与される前にはきちっとその前段階での動物を使用した安全性、有効性の確認が求められます。現在実験動物として使用されるのはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ブタ等です。これらの動物は私どもにとっても日ごろ馴染みのあるものばかりですが、それぞれ身近なペットにしていた動物や野生の動物を捕獲してきてそれがそのまま実験動物として使えるかどうかというと、そう言う訳には行きません。

新薬候補の有効性と安全性を厳密に確認、評価するためにはこれら実験動物の品質とその飼育管理上の品質管理が厳しく求められているからです。細菌やウイルス等に感染していないか、また様々な疾病を持っていないか、免疫力が弱っていないか等厳密に確認されていなくてはなりません。病気等に罹患しているときちっと新薬候補物質が正確に評価されないのは当然です。遺伝に関する情報も重要で、きちっと生殖の過程で遺伝情報が記録されます。飼育上の品質管理では、温度、湿度、換気等さらに多くの基準を満たした空調の完備した空間で飼育されなくてはならず、飼料についても厳しい基準が求められています。実験動物を飼育、管理するのは人間ですから、飼育とその品質管理に関する技能、知識に対し“minimum requirement”を満たした高質なスタッフの配置が必須です。

サル等霊長類ではカニクイザル、アカゲザル等が主に使用されるのですがそのほとんどは海外からの輸入で高価なものです。それぞれ特定外来生物でありそれらの関連法規への順守も求められ、さらに動物愛護、福祉の観点からの基準も要求されそれらの飼育管理は、国際標準、国内標準に則り極めて厳密なものになっています。

以上紹介しました内容は、厚労省が規定する“GLP”(Good Laboratory Practice)、や、環境省、農林水産省等に係る関係法規及び省令等で詳細に規定されています。
今日、製薬企業にとっては上記のような条件を全て満たし、適正に動物実験を行うことは大変な負担になっており、前臨床試験を専門とする外部企業に外注する傾向が見られています。

新型コロナパンデミックの後、人類は今後どのような未知の感染症に遭遇するか分かりません。また治療薬がまだ見つからない難病も数多く残っています。それらの治療薬開発に際し、動物実験は避けて通ることのできない大切なものです。
この度は新薬開発の最初の段階で重要な役割を持つ実験動物について、その一端を紹介させて頂きました。

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