茅葺民家

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                    2019/12/06 第547号
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【 茅葺民家 】

こんにちは。住環境アドバイザーのMadayoです。

豊中市の緑地公園駅から歩いて5分ほどの服部緑地に日本民家集落博物館という府立の施設があり、私はかれこれ10年ほど前からその博物館で民家解説のボランティアをしています。

ちなみに、この民家集落博物館は昭和31年にオープンしており、各地から移築された民家12棟が保存されています。

私が担当しているのは「摂津能勢の民家」で、大阪府能勢町から昭和35年に移築した400年の歴史ある建物です。もともとは農家の自宅だったものを建て替えすることがきっかけで、博物館に寄贈されました。400年の歴史がある建物だけに、この地方の民家建築の歴史を感じることができるとともに、建築学的にも貴重な建物です。

但し、民家を見学に来られるお客様に対して、自分たちボランティアが学術的解説をしたところで、ほとんどの方がちんぷんかんぷんですから、私は今の地球温暖化に絡めた解説をするようにしています。こんなふうに。

ここは、能勢の民家と言って、今から400年前、徳川家康が幕府を開いたそのころに建った建物です。ここに移築されたのは昭和35年、ここに来てほぼ60年が経っています。茅葺屋根ですが、使われている材料は、奈良県の曽爾高原で育ったススキが主です。ススキが屋根に乗ると名称が茅葺(かやぶき)となります。

ここには、囲炉裏とへっつい(かまど)があります。昭和の半ばごろまでは、農家の燃料は、里山で集めた落ち葉だったり、クヌギやコナラ、アカマツなどの木を切って乾燥させて燃料にしていました。昭和の後半ごろから、石炭や石油などが燃料の主流となり、今は電気でご飯が焚ける時代になりましたが、当時はマキなどの自然循環する材料が燃料として使われていました。

自分の子供時代を思い出しても、冬になれば、裏山で落ち葉集めや、炭焼きの手伝いをしたことをおぼろげながらたどることができます。

このへっついや囲炉裏の煙が屋根の茅に入ることで、茅の中にいる虫を駆除し、さらに煙は脂分を含んでいますので、それが茅をコーティングすることで、茅の耐久性を高めることになります。昔の農家は、毎日の生活の中で火を焚いて煙を出していましたので、30年から50年程度は屋根を葺き替える必要がなかったのですが、ここではボランティアが火を焚く程度なので、20年くらいしか持ちません。また、茅葺きの職人もほとんどいない状況の中では、今後の茅葺きが心配ですね。

などの説明をしています。茅葺の耐用年数については、諸説ありますので、必ずしも正確とは言えませんが、火を焚く中に里山の暮らしがあり、人を含めた生態系があって循環していました。

この民家博物館を訪れる人たちは異口同音に、「こんな生活にあこがれる」と言いますが、1泊や2泊ならともかく、今の時代に、このような生活が成り立つとは思えません。しかし、この時代の暮らしは、間違いなく温暖化とは無縁でした。自然の循環の中に人も加わっていた時代といえます。ところが、今ヒトは自然の循環から離れてヒトだけの独立した生活を世界中で営んでいると思うのです。化石燃料をふんだんに使って。

解説に戻ります。産業革命がはじまったころの地球は温室効果ガスの濃度が280ppmだったそうです。地球が安定していた濃度ですね。恐らく昭和の半ばごろまでの日本も似たような生活が成り立っていました。今の濃度は440ppmとも480ppmともいわれ、地球が健康である濃度の限界に迫っていると聞きました。誰が言ったか不明ですが、地球の温度が上がっていることは確かですよね。今の私たちは、この建物があって生活していた時代に帰ることはできないでしょう。でも私たちが化石燃料を使って地球の温度を上げてきたことと、それがもとで、より大きな災害が起きていることを考える必要があると思いますよ。って、自分勝手な解説ですが。

日本民家集落博物館のホームページ
https://www.occh.or.jp/minka/
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