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学生時代に習った歴史をアップデートする

こんにちは。旅のアドバイザーのさくらです。

皆さん、1192年と聞くと何を思い出しますか。学生時代に「いい国作ろう鎌倉幕府」という語呂合わせで鎌倉幕府の成立と覚えました。
同じように645年は中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我氏を滅ぼした「大化の改新」と習ったと思います。

しかし、今の教科書は違うのです。
大河ドラマで次々に人が殺されると話題になっている鎌倉幕府ですが、以前は源頼朝が朝廷から征夷大将軍に任じられた1192年を鎌倉幕府の成立としていました。しかし、諸国に守護や地頭を任命する権利や兵糧米を徴収する権利などを握り、東国を中心とした頼朝の支配権が各地に及ぶようになった1185年ごろを鎌倉幕府の成立とする説が有力となり、現在の教科書は1185年「いい箱作ろう鎌倉幕府」と書かれているものが多いようです。

この時代にはまだ幕府という言葉もありませんし、初めて武士が政権を握ったのが鎌倉時代ですので、実際には○○年に幕府が成立したという訳ではなく、1180年に頼朝が東国の支配を樹立し鎌倉を本拠地に侍所を設置したころから、徐々に平安時代から鎌倉時代に移行したようです。

また昭和時代の教科書に、源頼朝の肖像画として載っていた口と顎に髭をたくわえ黒色の袍を着て、冠を被り、笏(細長い板)を持った威厳のある源頼朝も、実は別人の絵であるという説が濃厚です。現在の教科書には甲斐善光寺にある木造の頼朝坐像を掲載しているそうです。

昭和時代の私たちは、聖徳太子が亡くなったあと、次第に権力を握った蘇我氏の横暴を止めるために、中大兄皇子と豪族の中臣鎌足が相談して、蘇我入鹿を殺害した645年を「大化の改新」と習いました。しかし現在の教科書には645年は「乙巳の変(いっしのへん)」と書かれています。645年に蘇我氏に対してクーデターを起こし、646年に「改新の詔」を発令し年号を「大化」と定めました。その後中大兄皇子(のちの天智天皇)を中心として数十年かけて有力豪族中心の政治から、天皇による中央集権体制の律令国家の礎を築いた一連の流れを「大化の改新」とする考え方が定着したからです。

ところで、「乙巳の変」で殺害された蘇我入鹿と、入鹿の死を知って甘樫丘の邸宅で自害した父の蘇我蝦夷の墓がどこにあるかご存じですか。「乙巳の変」後に蘇我氏の墓は破壊され、入鹿の祖父である蘇我馬子の墓とされる石舞台古墳は石室の石と縁石の一部しか残っていません。
日本書紀に「蘇我蝦夷が全国から大勢の人夫を徴発し、自分のための『大陵(おおみささぎ)』と、息子・入鹿のための『小陵』の「双墓」を今来(いまき)に造営した」という記述があります。しかし蘇我蝦夷と入鹿の墓はまだ特定されていません。所説あるようですが、先日NHKの歴史探偵という番組で、奈良県明日香村にある小山田古墳が生前に蘇我蝦夷が築いた大陵で、その西側にある菖蒲池古墳が小陵ではないかと推測していました。

小山田古墳は、2015年に県立明日香養護学校の校舎建て替え工事に伴い調査が始まり、2019年の調査で約50mにわたる掘り割りと90度の古墳の隅が見つかりました。石室まで徹底的に破壊されていたため、ここに古墳があることすら分からなかったそうです。
小山田古墳の西側、明日香村との境界線付近の橿原市の南東部にある菖蒲池古墳は、2010年の発掘調査によって一辺約30m、二段築盛の方墳であることが明らかになりました。石室内には2基の同じ形状の家形石棺が安置されています。

古墳の大きさ、場所、隅が90度の四角形であること、小山田古墳の出土物から築造時期が650~660年くらいと考えられることから、「乙巳の変」のクーデターが起こったときに、既に作られていた「大陵」を破壊し、石棺を「小陵」に運んで、蝦夷と入鹿を一緒に葬ったのではないかと推測していました。
私達が知っている「大化の改新」、現在は「乙巳の変」のクーデターの主要人物の墓が2019年まで分からなかったことは驚きです。

歴史は過去のものですが、不明な点も多く、新たな遺跡や遺物、古文書の発見などで、定義や解釈が更新されています。分析技術の発達で昔は分からなかったことが明確になることもあります。エジプトのミイラのDNA鑑定でツタンカーメンと血縁関係にあったミイラも分かるようになりました。

学生時代に覚えたことが、今は違っているかもしれません。「学生時代に習った歴史をアップデート」する機会を作ってみてはいかがでしょうか。
お子さんやお孫さんと一緒に教科書を見返してみるのも楽しいでしょう。
NHKのEテレでは、月曜から金曜の午前10時から11時10分くらいまで、高校講座という番組を放映しています。歴史だけではなく、国語、数学、理科、社会、家庭科など幅広い分野を、実験などを交え分かり易く解説しています。今の高校生はこんなことを学んでいるのかと驚くとともに、とても面白く見ています。皆さまの参考になれば幸いです。

【参考資料】
NHK 歴史探偵
https://www.nhk.jp/p/rekishi-tantei/ts/VR22V15XWL/

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