見出し画像

68についてのお話

こんにちは。身近な数字のアドバイザーのナカナカです。
今回は68(むよう)「無用」についてのお話です。

「無用」という言葉を辞書で確認すると、役に立たないこと、必要ないこと、してはいけないこと、という3つの意味が載っていました。それぞれ他の言葉と結びつくことによって豊富な表現を可能にしている「無用」について調べてみました。

役に立たないことを表す表現として良く知られているのが「無用の長物」です。英語に直訳するとuseless stuff(役に立たない物)ですが、doorstopやwhite elephantも同様の意味で使われるようです。前者は、読まなくなった分厚い本や、使用済みの重い電子機器などは、ドアストッパーとしての用途くらいしかないという意味ですし、後者は王様から譲り受けた白い象は餌代がかさむものの処分するわけにいかない、というタイの物語がベースになっているようです。

また、役に立たないという意味の「無用」には「無用の用」という含蓄に富む言葉があります。紀元前300年頃に活躍した中国の思想家「荘子」が書いた書物の中にあり、「無用とされているものがかえって大切な役割を果たしている」という意味になるそうです。私は、宮沢賢治の「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」という話を読む度にこの言葉を思い出します。

次に、議論の必要がないという意味の「問答無用」です。議論をしても利益がないという意味に使われる熟語ですが、時に強引な印象を与えます。互いに議論を戦わせている最中に、相手から一方的に「問答無用」と告げられたとしたら、こちらの意見や意向を無視されてとても不愉快です。

最後に、宅配便の荷物に貼られている「天地無用」というステッカーの意味を誤解している人が多い、という興味深い調査結果をご紹介します。

「天地無用」とは本来、「上下を逆にしてはいけない」という意味です。しかし、文化庁の「国語に関する世論調査」によれば、本来の意味と答えた人がおよそ55.5%であったのに対し、本来の意味ではない「上下を気にしないでよい」と答えた人が29.2%、また,「分からない」という人が約10%という結果でした。

「してはいけない」と「必要がない」のどちらの意味を併せ持つ「無用」という言葉を使うことの危うさが現れた例です。もし荷物を扱う人が「天地無用」を誤って解釈していたら、大切な荷物は上下逆さまに扱われてしまうかもしれません。

宅配業者には、「この面を上に」という大きな文字の説明書きの横に小さく「天地無用」と書かれたステッカーや、荷物の上の面を意識させる矢印のイラストも用意されています。これなら、経験の浅い人が荷物を間違って扱うこともなく安心ですね。

参考
文化庁広報誌ぶんかる「言葉のQ&A」2015年10月5日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?