1時間のプチ・ヨーロッパ旅行

こんにちは。お薬アドバイザーの井田です。
日々新型コロナで明け暮れる中で、少しでも心を外に向けるべく日々小さなヨーロッパ旅行を楽しんでおります。

ヨーロッパ旅行といっても勿論実際のツアーではなく、NHKラジオの語学放送を通じて日々、朝の7時から8時までの1時間朝食を摂りながら、あたかも欧州旅行をしているような気分を味わっているものです。ドイツ語から始まって順次スペイン語、フランス語、イタリア語と続くのですが、言葉そのものよりも各国の風物や歴史、文化を楽しんでいると言った方が良いかもしれません。

普段ボランティアで奈良の観光案内を楽しんでいるのですが、東大寺では英語ガイドにも取り組んでいます。大抵ガイドを求めてくる外国人はそれぞれの母国語に加え英語が話せるのですが、それでも一言二言相手国のことばを口にすると、思いがけず異国で耳にする母国語がとても効果的な“ice breaker”となって、ひときわ親しみを感じてもらえ以後の会話がとても弾みます。

日々の朝の1時間は、毎回テキストとにらめっこして真剣に耳を傾けるというのでもなく、殆ど聞き流しているというのが実態です。各15分間の枠の中で日本人講師とnativeのゲストの二人がペアになって繰り広げる講座の内容は、それぞれの文法やことばの説明だけではなく、国民性や日々の暮らし、地元料理、各地の名所等、ナマの情報がとても豊富で、まさにその国を旅している気分を一時味わうことのできます。
たまに自分の興味のある文化遺産やオペラやバレエ、絵画等の芸術関連、そして著名な文学作品等がテキストとして取り上げられた折は、少しは深堀りしたい気持ちになって、テキストを買って結構丁寧に聞くこともあります。

4か国語を同時に聞くともちろん頭の中は混乱しがちですが、一つの講座が終わるたび、国境を超えるわくわくした旅行気分に徹し、次の講座に移っています。スペイン語、イタリア語、フランス語はラテン語に端を発する言語で、それぞれ似通った文法と用語を持っており、それらの国々の方はほぼ方言的な気安さで接している状況もわかるような気がします。
日本語にはない接続法や条件法等の動詞の活用は、いずれいずれと先送りするだけで一向に身に付きません。

また、性の区別を持たない日本語を話す我々にとって、性によって変化する冠詞や動詞の活用も厄介で骨の折れることです。戦国時代日本に来たキリスト教の宣教師が日本語には名詞に性がないことをもって、本国に日本を未開の国のような報告をしたことがあると聞いたことがあるのですが、どうして名詞に性を関連付ける言語と付けない言語が存在するのかとても興味があると共に、世界の文化の違いを感じてしまいます。

EU諸国では、日々国境を越えての通勤や、一家族が複数の国に別れて住んだり、はたまた同じ家族内で複数の言語が飛び交うということがごくごく普通という社会の中では、人々も普段の生活の中で否応なしに複数の言語と立ち向かわなければならない現実があります。
歴史的にもマリーアントワネットがドイツ語圏からフランス語圏へ、エカテリーナ2世がドイツ語圏からロシア語圏へ等、王侯貴族も言語圏を超えて婚姻することは特異なことでもなく、モーツァルトも幼少のころからヨーロッパ中を旅することによって様々な言語に接し、ドイツ語、イタリア語の両方でオペラ作品を残しています。島国育ちの我々からするとちょっと異次元のようにも感じられる欧州人の言語感覚です。

日本人は文法的に間違いのない完璧な外国語を使用しなければならないという思いが強過ぎて、ともすれば外国人と接する貴重な機会を遠ざけ、自らの世界を広げることにとても制限を加えているような気がします。
当方も外国人と接するときは、初めからできるだけ間違いのない言葉をという思いから、予め頭の中で文章を組み立ててから話すことが多いのですが、とにもかくにも臆することなくドンドン使用することが大切だと思います。 
東南アジア、アフリカ等の人々が、文法の間違いや発音に臆することなく英語を話している姿勢を見るととても参考になります。
各講座の講師が共通して強調するのが、「間違っても良い。どんどん使うことによって身に付いて行く。」ということです。

私は言語と共に、旅行気分でヨーロッパの国のことを知りたいという想いで、朝の1時間の番組を楽しんでいるのですが、講座が進んでいくと同時に日本の国と日本語の持つ奥深さや素晴らしさに改めて気付くことも多々あります。
それぞれの言語そのものに対しては残念ながらいつまでも入門者、或いはそれ以前の域を出ていないのですが、それでも一つ、二つと日々新しい言葉を覚えて行くと楽しいものです。コロナが収束した後の外国人ガイドへの質的な向上を目指して、日々新しい知識、情報に触れられることに喜びを見つけ、朝の語学講座1時間のヨーロッパツアーを続けていこうと思っています。

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