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注射の種類・一口知識

こんにちは。おくすりアドバイザーの井田です。

COVID19対応で日本もワクチン接種が全国で漸次進められていますが、承認されたワクチンは全て、筋肉注射です。成人国民の大部分がこれだけ短期間のうちに注射を経験することは未曽有の事です。この機会にワクチンを中心に注射の種類について認識して頂ければと思います。

まずは皮内注射です。
代表的なものは精製ツベルクリンや診断用アレルギンエキス等、主に診断の目的で薬の反応性を見るために行われるもので、皮膚の一番外側の表層内に投与されます。水溶液または水性懸濁液として投与され、投与量は0.1ml~0.2mlとごく少量です。

2番目は皮下注射です。
表皮、真皮の下部、皮下脂肪に投与されるもので、薬物は一端組織内で分布した後、毛細血管壁を透過して血液中に移行します。注射針は接種部位に対して45度の角度で刺されます。
インフルエンザワクチン、麻疹ワクチン等のワクチン類を始め、インスリンや成長ホルモンなどの自己注射も皮下注射によります。
日本においては、ワクチンの殆どが経口ワクチンのポリオ等を除いて皮下注射なのですが、これは厚生労働省から提示されている「予防接種ガイドライン」によるものです。過去に筋肉注射により大腿四頭筋短縮症の発症が社会問題にまでなったという背景があり、以後筋肉注射は避けられるようになった経緯があります。この副作用の発生は実はワクチン以外の抗菌剤や鎮痛剤の投与によったものなのですが、以後筋肉注射そのものが問題であるとの認識が日本では定着してしまったようです。

3番目は今日々全世界的に投与されている新型コロナワクチンの投与法である筋肉注射です。このワクチンで初めて筋肉注射を経験される方も多くおられるのではないかと思います。既に接種を経験された方はお分かりだと思いますが、接種部位に対して90度の角度で注射針が刺されます。
筋肉内に投与された薬物はいったん結合組織に分布した後、毛細血管壁を通過して血液中に移行します。
今承認されている新型コロナワクチンは先の項で触れた皮下注射ではなく全て筋肉注射です。それぞれ薬剤名にもきちっと「筋注」の文字が組み入れられています。
・ファイザー:「コミナティ筋注」英名“COMIRNATY intramuscular injection”
・アストラゼネカ:「バキスゼフリア筋注」 英名“Vaxzevria”
・モデルナ(武田):「COVID-19 ワクチンモデルナ筋注」   

日本では先の項でも触れたようにインフルエンザワクチン等、殆どのワクチン接種は皮下なのですが、新型コロナワクチンの全てが筋注になったのには、以下の二つの理由が挙げられています。
一つは海外ではインフルエンザワクチンも含めワクチンは殆ど筋肉注射が主になっているということです。
少ない薬液量を入れるには筋肉注射の方が確実で、局所の痛みや腫れ等の反応も少ないといわれています。次にm-RNAワクチンは筋肉注射の方が適しているということが挙げられています。皮下脂肪より筋肉の方が組織の血流も豊富で、免疫細胞も豊富なことから免疫が付きやすいという理由です。
ただ血液をサラサラにするといわれている抗凝固剤のワーファリン等を服用している場合は、血液が止まりにくくなりますので接種後、接種部位を強く押さえておく必要があります。

4番目は静脈内注射です。
抹消静脈または中心静脈より薬物を直接血液中に投与するもので、薬効の発現が最も早く直接的です。点滴投与するものでは100ml以上の輸液が用いられ、経口から栄養が取れない場合や手術後に高濃度のブドウ糖液と薬物を中心静脈から投与する高カロリー療法(IVH Intravenus hyperalimentation)も行われます。

最後は動脈注射です。
動脈に直接薬物を注入するもので、今までの注射とは違い特定の部位に高い薬物濃度を得るために行うものです。動脈造影や抗ガン剤の化学的塞栓療法などに行われます。

以上ざっと投与経路による注射の種類を紹介してきましたが、コロナワクチン接種を機に少しでも注射に対する理解を深めて頂ければと思います。

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