発熱は悪いこと?

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                    2020/02/21 第558号
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【発熱は悪いこと?】
 
こんにちは。健康生活アドバイザーのだんごママです。

 薬剤師として仕事をしていると、風邪を引いた際の解熱剤の服用について聞かれることが結構あります。先日も、「熱が上がり始めた後汗をかいて熱が下がったのにまだ下がりきらない。汗をかこうとスポーツドリンクをおなかがタポタポになるまで飲んでいるのに汗をかかない。体がだるくて食べる気にもならない。処方してもらった解熱剤を飲んだほうがいいですか。」と相談されました。

 発熱とは、個人の日常的な正常値を超えた体温上昇のことです。1日のなかでも変動し、起床時と夕方の変動幅も0.6℃ぐらいは当たり前です。正常体温も個人差があり、36℃台の方が多いとは思いますが、35℃台で変動する方もいらっしゃいます。処方箋に基づいた服薬指導をする際に、38.5℃を超えるようだと解熱薬を服用するように説明しますが、あくまでも目安にすぎません。

 感染症や炎症などが原因となって熱が上がり始めたとき、体の中枢で体温調節レベルは高値にセットされます。そのため中枢で感じている体温より実際の体温が低いため体を温めようとします。熱を効率的に作るために毛細血管の収縮や震えが起こり体温を上昇させます。実際の体温がセットされた体温になり発熱の原因がなくなると一気に体温調節レベルは平常体温に置き換えられます。そのため、血管の拡張、発汗するようになり熱が下がっていきます。汗は無理にかかせるものではなく、体が必要と判断して自然にかくものです。脱水状態でも体温が上がってしまうので、発熱時の水分補給はとても大事です。

 食事がとれている状況でしたら常温の水で十分ですが、食事のとれていない発熱時や発汗時の水分補給に、スポーツドリンクを飲まれる方が多いと思います。スポーツドリンクのように手軽に購入できませんが同じように発汗時や発熱時に飲む経口補水液があります。薬局で販売されている経口補水液は飲む点滴と言われ、小腸での水分吸収が円滑に行われるよう調整されています。スポーツドリンクとの比較では、

        経口補水液   スポーツドリンク
  ナトリウム  50mEQ/L     9~23mEQ/L
  カリウム   20mEQ/L     3~5mEQ/L
  炭水化物    2.5%      6~10%
  (ブドウ糖) (1.8%)

経口補水液のほうが塩気を感じ甘くない印象になります。スポーツドリンク1リットルに約25グラムの糖分が含まれており、血糖値が急激に上昇します。
スポーツドリンクを飲んでお腹がすかないというのも当然です。

 解熱薬を飲むか飲まないか迷うのは、発熱の影響で何か害が及ぶのではと心配されているからだと思います。ほとんどの急性疾患による一過性の発熱では、健康な成人であれば問題になることはありません。発熱時は37℃を超えて1℃上昇するごとに基礎代謝率は10~12%上昇するため、心機能や肺機能不全のある方では発熱は生理的ストレスになります。また子どもでは熱性痙攣の誘因となります。体力の衰えた高齢者では、感染が生じても免疫反応がうまく働かず、発熱という反応が起きにくくなる場合もあり、同様に痛みや炎症などの反応もはっきりしないこともあります。

 安心できる発熱かそうでないか判断するポイントがいくつかあります。
  ・精神状態の変化 (認知症の悪化、意識障害など)
  ・頭痛、項部硬直または両方
  ・点状出血
  ・血圧低下
  ・呼吸困難
  ・頻脈または頻呼吸
  ・40℃を超える高体温または35℃未満の低体温
  ・免疫抑制剤の使用
  ・重篤な疾患(マラリヤ、デング熱など)が流行している地域への旅行
上記のような症状が見受けられた場合は、迷わず医療機関を受診することをお勧めします。

 ウイルス感染による発熱の場合、免疫反応による体の防御態勢が効果を表すのに3日ほどかかります。早期に解熱剤を服用することで、解熱のタイミングが遅くなるという結果も報告されています。解熱薬の服用に関しては、市販薬・処方薬にかかわらず自分で服薬のタイミングが見極められるよう日頃から体の状態に気を付けておくことが一番だと思います。

《参考サイト》
経口補水液 OS-1
https://www.os-1.jp
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