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73についてのお話

こんにちは。身近な数字のアドバイザーのナカナカです。
今回の身近な数字は73(なみ)、私たちの暮らしと電磁波に関するお話です。

電磁波とは、「電圧のあるところに存在する電界と、電流が流れるところに発生する磁界が互いに影響しながら交互に発生し伝わっていく波」ということですが、どうもピンときません。しかし、レントゲン撮影などに用いられる「放射線」、太陽光線や赤外線などの「光」、テレビやラジオ、携帯電話等に利用される「電波」などはすべて電磁波ですから、実はとても身近な波なのです。

1秒間に繰り返す波の数を周波数(単位:ヘルツ)、波の山から山までの距離を波長と呼びます。周波数が高ければ高いほど波長は短く、波のエネルギーは大きくなります。

X線やγ線などの医療に利用される「放射線」は3千兆ヘルツ以上の高周波、超短波長の電磁波です。1895年にドイツの物理学者レントゲンによって発見されたX線は、波長が短いため物質を構成する原子と原子の間を通り抜け直進するという性質があります。直進したX線は白く、通り抜けられない物質にあたって減衰したX線は暗く映るという線量の違いを利用したものがX線撮影装置やCTスキャン装置です。放射線による検査では人体への影響も気になりますね。環境省によれば、胸部検査1回当たりの被ばく線量はX線で0.06、CTで2.4~12.9ミリシーベルトです。宇宙や大地から受ける自然放射線による外部被ばくが年間2.1ミリシーベルト(日本平均)と比較して考えると良いでしょう。

X線やCTスキャン装置は医療以外の分野でも活用されています。たとえば奈良文化財研究所では、貴重な文化財を「壊さない」「汚さない」「触らない」状態で調査、分析を行うために病院と同様の装置を備えているそうです。また、検査物にX線を照射し、正常な部分と欠陥のある部分の透過線量の違いを明らかにするX線透過試験(XRT)は、構造物を破壊せずに検査できる手段として広く利用されています。

太陽光や紫外線・赤外線などの「光」は、3兆ヘルツから3千兆ヘルツの領域で、周波数が低い順に赤外線・可視光線・紫外線に分けられます。赤外線は暖房など、可視光線は照明やカメラなどの光学機器に、波長が短い紫外線(UV)は殺菌などの用途に使われています。近年、スマホやパソコンを長時間見続ける生活で目が疲れたり眠れなくなったりする障害が問題になっていますが、スマホなどのLEDディスプレイが発する「ブルーライト」という青色光が原因のようです。ブルーライトは可視光線の中でもっとも波長が短く、強いエネルギーを持っており、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達して機能低下などを引き起こす心配もあります。見えない紫外線には日傘、サングラスなどの対策をしてもブルーライトには無防備という人が多いのではないでしょうか。スマホによっては、ブルーライトの量を制限し眼の疲労を軽減する「目の保護モード」がありますが、過信せず、スマホ画面を長時間眺めることは避けたいものです。

最後は「電波」です。周波数約3,000ヘルツから3千億ヘルツ、波長は約100kmの超長波(VLF)から約1mmのサブミリ波までの領域です。「電波」には音声や映像などの情報を乗せることができるので、通信や放送など、コミュニケーションの媒体として利用されているほか無線ICカード自動改札、ETCシステム、GPSや気象レーダーなどにも使われています。

医療で使われるMRIは大きな磁石による強い「磁場」とFMラジオに使われているような「電波」を使って画像を得る診断装置です。私は、脳腫瘍の発見から手術に至るまでに相当な回数のMRI検査を受け体への影響が気になっていましたが、MRIは放射線による被ばくがなく、子どもでも安心して検査を受けることができる装置ということが分かりました。医療分野で使われる電磁波にもいろいろあるのですね。

さて、最近の私の生活を思い返すと、「電波」の恩恵を一番受けているのは電子レンジかもしれません。コロナ渦の自粛生活で冷凍庫の存在が大きくなるにつれ「レンチン」の回数が増えています。食品に含まれる水分子を振動させて加熱する仕組みの電子レンジには、電波の中でも波長の短いマイクロ波が使われています。マイクロ波は出力が大きく物を温める性質があるからです。

ところで、電子レンジを使用するとWi-Fiなどの無線LANの通信速度が遅くなったり、途切れたりした経験はありませんか。Wi-Fiも電子レンジも同じ周波数を利用しているものが多く、電子レンジから漏れた電波が無線LANの電波と干渉して通信に支障をきたすことが原因のようです。インターネット上には対策も紹介されていますが、電子レンジの電波漏れ防止シールドの不具合を疑った方が良いという指摘もありました。

今や私たちは、周波数や波長によって異なる電磁波の性質を巧みに使うことで便利な生活を得ていますが、人体への影響を含めて電磁波の負の側面も知って使うようにしたいと思います。

参照
環境省 身の回りの放射線 https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-05-01.html
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
https://www.nabunken.go.jp/
総務省 電波の人体への影響 
https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/denpa/jintai/

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