81についてのお話

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                    2020/01/10 第552号
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【81についてのお話 】

こんにちは。身近な数字のアドバイザー ナカナカです。
今回の身近な数字は81。「灰」についてのお話です。

皆様は年末、年始をどのように過ごされたでしょうか?

わが家では録画したテレビ番組を炬燵に入ってのんびり眺める、という昭和の風景が今も健在ですが、令和の現代は、スマートスピーカー(AIスピーカー)に呼びかけて動画配信サービスからコンテンツを選ぶ、というライフスタイルが日常になりつつあるとか?リビングでは薪ストーブの柔らかな炎が家族の笑顔を明るく照らし----。
と、イメージを膨らましたのですが、薪ストーブの人気は今も健在なのでしょうか?

日本暖炉ストーブ協会の資料によれば、薪ストーブの販売台数は平成25年をピークに減少しつつあるようです。材料の薪の調達や煙突のメンテナンスなど、維持・管理が難しいことに加え、薪を燃やした後に残る灰の処分に困る場合もあるようです。

一般的に、灰は畑の肥料や土壌改良剤として利用できますが、有害な物質を含む建築廃材を燃やした後の灰は危険です。また、福島県内の家庭で使用された薪ストーブの灰から、放射性セシウムが検出された結果、環境省は東北関東地方の8県に対し「薪ストーブの灰は市町村等が一般廃棄物として収集、処分を行うよう」通知を出しています。ちなみに千葉県銚子市の場合は、消費者が自ら灰を清掃センターに持ち込む上、10kg当たり59円の処分手数料が必要です。灰は、清掃センターで放射能濃度測定を行い、結果によってはセメント固化して最終処分を行うそうです。

一方、灰には洗浄剤として人類に貢献してきた歴史があります。4大文明が成立した紀元前3,000年頃、古代オリエントでは、植物の灰を水に溶かした「灰汁(あく)」を使って衣類の洗濯が行われたという記録があります。わが国でも「石けん」が一般に普及する明治時代まで、「灰汁」は洗浄剤として利用されたので、「灰」と人類の関りは5,000年にも及ぶ事が分かります。

「灰」を水に溶かすとアルカリ性を示します。アルカリは汚れの中の油分と反応して一種の石けんになり、その石けんがアルカリ剤と協力してほかの汚れを落とすというダブルの効果があるそうです。しかし、石けんの製造が可能になったために「灰汁」は役目を終え、今や洗剤と言えば石けん、または合成洗剤が主流です。
合成洗剤には汚れに働きかけ、汚れを衣類からはがし、細かく分解するための界面活性剤が含まれていますので、汚れ落ちが良いと信じて、私も洗濯には液体の合成洗剤を使用しています。
 
ところが最近、台所の油汚れを落とす目的で購入していた「セスキ炭酸ソーダ」をシャツの衿にスプレーして洗濯したところ、見事に汚れが落ちました。わずか5gを水500ccに溶いた水溶液なのに効果は絶大でした。これこそが、安価に製造できて汚れを落とす「灰汁」の性質を見直して作られたアルカリ洗剤だったのです。

石けんや洗剤は、油脂や石油などの「有機物」を原料としているため、自然界で分解される時に環境に負荷をかけてしまいますが、アルカリ洗剤は「無機物」としてそのまま自然界に存在することができるそうです。

植物の灰を利用した先人の知恵に学び、環境にも優しいアルカリ洗剤を見直してみてはかがでしょう。


■参考
「薪ストーブ等を使用した際に発生する灰の取扱いについて」平成24年 環
境省

石けん百貨 https://www.live-science.co.jp/

日本石鹸洗剤工業会(JSDA)https://jsda.org/w/index.html

「洗浄と清潔の歴史概観」 二宮 健一著
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