メラビアンの法則

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                       2019/02/01 第503号
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【 メラビアンの法則 】

こんにちは。暮らしいきいきアドバイザーの晴兵衛です。

10年ほど、消費者相談業務に携わってきました。この業界で名を馳せてきた諸先輩が、講演で必ずと言ってよいほど引き合いにだす法則の一つに、「メラビアンの法則」があります。アメリカの心理学者 アルバート・メラビアンが提唱した法則で、情報の伝わりやすさは、言語7%、聴覚38%、視覚55%と教わりました。
 
多くを電話対応する消費者相談では、言語と聴覚なので、7プラス38で45%の情報量になります。したがって、電話トークでのテクニックが重要だというもの頷けます。
そこで、情報を正しく伝えるために、クッション言葉や様々な言い回しなどを電話対応研修に盛り込んで行いました。もちろん、これらは業務として他人とコミュニケーションを円滑に進める上では常識的なことではあります。

また、メールによる相談では文字情報7%だけになりますので、コミュニケーションのハードルが更に高くなります。特に、情緒的な内容は極めて難しく、苦労したものでした。

しかし、私が経験した限りでは、この法則に裏切られる場面も結構多かったように思いました。やはりそこは生身の人間ですので、お互いを理解する為には一筋縄ではいきませんし、私の思い込みもあったことは否定できません。

暫く消費者相談業務から離れ、この法則も忘れかけていた時に、たまたま、私の敬愛する心理カウンセラーの先生が執筆しているメルマガで、メラビアンの法則について書かれていたのを目にしました。それを読んだ時、私はハンマーで頭を打たれたような思いになりました。

私が諸先輩方々から教わってきた法則が、間違った解釈に基づいたものだったのです。そこで、先生に参考文献をお聞きし、可能な範囲で調べてみました。

メラビアンが行った実験は、カップルを対象に、どちらか一方の音声、顔の表情をランダム(矛盾する感情)に組み合わせて相手方に提示し、好き、嫌い、どちらでもない、を答えてもらうというものです。例えば、「好き」を表す音声を聴かせ、次に「嫌い」の表情をした顔の写真を見せ、次いで自分に対して相手が好きと表現しているのか、嫌いと表現しているの、はたまたどちらでもないと表現しているのか?という回答を導き出します。
その答の拠り所としているものを集計すると、言語7%、聴覚38%、視覚55%になったというのです。しかも、最後に、この統計データは全てのコミュニケーションに適用する事を意図していないと結んでいました。

この実験の本質を理解せず、通りすがりの人を相手にする消費者相談の世界に当てはめるのは、大きな間違いでした。どこかの時点で、数字を都合よく解釈し、それが引き継がれてしまったのでしょうね。
いつの間にか、言葉よりも態度などの見かけが重要だという話にすり替わってしまったようです。

当たり前のことではありますが、法則と名の付くものは実験(数値)に基づいて導かれています。科学的法則(ニュートン、アインシュタインの法則等)は絶対解なので、一つの解釈しかありません。

「数字が意味するところの本質は何か?」を考える習慣を忘れないようにしたいものです。


<参考資料>
(1) 古宮昇 「共感の心理学」メルマガ 
 http://noborukomiya.seesaa.net/article/156129274.html
(2) Albert Mehrabian Communication Studies
(3) Silent Messages(1971)

※参考資料として「共感の心理学」メルマガを引用する事について古宮 昇先生の了解を得て掲載しております。
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