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79についてのお話

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                       2020/09/25 第589号
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【79についてのお話】

こんにちは。身近な数字のアドバイザーのナカナカです。
今回の身近な数字は79。「泣く」、特殊詐欺の被害に「泣く」お話です。

警察庁のウエブサイトによると、「特殊詐欺」とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及び隙を見てキャッシュカード等を窃取する窃盗を含む。)とあります。

手口によって、オレオレ詐欺、預貯金詐欺、架空料金請求詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺、金融商品詐欺などの名称がありますが、近年キャッシュカード詐欺盗も増加しています。ちなみにキャッシュカード詐欺盗とは、被害者に接触した上で、受け子が被害者の隙を見て、キャッシュカードを別のカードにすり替えるなどして窃取する手口の窃盗のことです。

令和元年中の特殊詐欺の認知件数は16,851件、被害総額は約316億円ですが、手口別で最も件数が多いのはオレオレ詐欺の6,725件、被害総額は約117億円でした。

オレオレ詐欺とは、息子や孫などの親族をかたり「会社の小切手が入ったカバンをなくした」、「会社のお金を使い込んだのがばれた」などと言って現金を要求するもので、内閣府が平成29年1月に行った「特殊詐欺に関する世論調査」では、調査対象者全体の97.8%(複数回答)がオレオレ詐欺を最も良く知っていると回答しているほど、身近な問題です。

被害者は70歳以上が5割以上、60歳以上では約8割を占めているとされ、オレオレ詐欺の被害に遭うのは圧倒的に高齢者です。息子や孫の一大事と聞き、大切な老後のお金を惜しげもなく振り込んでしまう。常識や分別を備えた高齢者がなぜ、と私もかつては不思議でした。

しかし、親族を装った巧みな詐欺の手口に冷静さを奪われてしまう被害者の体験を聞くと、決して他人ごととは言えません。
私も高齢者ですし、子や孫からのSOSがあれば喜んで力になりたいという思いはいつもあります。こうした人情に付け入った卑劣な詐欺は許しがたい犯罪です。

被害はお金にとどまらず、オレオレ詐欺にまつわる自殺も問題になっています。自責と後悔の念にさいなまれる被害者を慰めるどころか、親族からも厳しい叱責の言葉を投げられたら、そこには絶望しかありません。死を選んだ被害者の涙、そして遺された人々の涙を思うとき、親族の絆をずたずたに引き裂くこの犯罪の恐ろしさを感じます。

さて、詐欺等の犯罪行為により被害を受けた人に対する「振り込め詐欺救済法」が平成20年6月から施行されているのをご存知でしょうか。

具体的には、金融機関が、資金が振り込まれた口座を凍結し、預金保険機構のホームページで口座名義人の権利を消滅させる公告手続を行った後、被害者から支払申請を受け付け、被害回復分配金を支払うことなどが定められています。 被害者へ分配される額は、振込先口座が凍結された時の残高が上限となり、被害額の全額を国や金融機関が補填するというものではありません。

また、
1.被害回復分配金の支払を受けるためには被害の申請が必要
2.犯人が預金口座等からお金を引き出してしまうと救済は受けられない
3.振込手続によらない詐欺は振り込め詐欺救済法の適用外
などの注意点もあり、被害回復分配金への過剰な期待はできないようです。やはり被害を未然に防ぐことが何より大切ですね。

詐欺の被害に泣かないためには、「私も被害者になるかもしれない」という当事者意識を持って啓発ポスターやビデオを見るようにしたい、と思うこの頃です。

■参考資料
金融庁「振り込め詐欺救済法の施行について」
預金保険機構「振り込め詐欺救済法 Q&A」
警察庁「特殊詐欺認知・検挙状況等について」
内閣府「特殊詐欺に関する世論調査」
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