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【season2-1学期】先生と考える まちのアーカイブズ学 「開講レポート」

こんにちは!暮らしの大学 事務室です。

4月より開講してきた「 先生と考える まちのアーカイブズ学 」。第1回と第2回は「収録配信」、第3回はZoomを活用した「ゼミ形式(参加型)」で、全3回開講しました。

今回はレポートとして全3回の内容を振り返り、さらに第3回ゼミ編の様子をご紹介します。

▼教室の内容

本教室は「アーカイブズ学」をご専門として研究し、九州大学文書館の副館長・教授であられる藤岡健太郎さんを先生にお迎えし、開講しました。

〈 第1回 〉先生に学ぶアーカイブズ学 超入門
「アーカイブズ学 超入門」と題し、アーカイブズ学の魅力をぎゅっと凝縮した講義を藤岡先生に行なっていただきました。まずは「基本のき」を学ぶことで、次回以降「まちのアーカイブズ学」を考えていくための「道具」を手に入れる回となりました。
※第1回は、無料公開しています。ご興味がある方はこちらより、受講してみてくださいね。

第2回 〉先生と考える まちのアーカイブズ学 対話編
「まちのアーカイブズ学」について、藤岡先生と学長代行・斉藤が対話をしながら、アーカイブズ学から見たまち、まちから見たアーカイブズ学、双方向の視点を持ち込むことから学びを深めました。

はじめに、藤岡先生が「アジアのなかの博多湾と箱崎」内にて書かれた「九州帝国大学と箱崎」のお話が挙がりました。このテキストを書かれた際、九州大学から見た箱崎の資料は残っているものの、箱崎から見た九州大学の資料がなかなか見つからなかったそうです。そのように一方向からの視点では特定の物事を見るときの完全性に欠けることになるため、双方向の視点を持ち寄ることで立体的な情報にするためにも、あらゆる視点から情報がアーカイブズされていることの重要性が見えてきました。
次に、生涯を通して膨大な資料を残した安高団兵衛氏のお話が挙がりました。安高団兵衛氏が残した資料は、個人のものであるにも関わらず、今や地域にとって貴重なアーカイブズとなっており、アーカイブズが地域社会や個人とどのような関わりを持っていくのか?といったお話へと展開しました。
また、さまざまなアーカイブズを保存、活用していくとき、それを支えるシステムとしてどのようなものが必要なのか?あるいは、これからのデジタル時代においては、「データ」というアーカイブズをいかにまちづくりに活用することができるのか?といった問いが見出されました。


〈 第3回 〉
先生と考える まちのアーカイブズ学 ゼミ編
第2回で得られた問いや、各々が考える「アーカイブズ」についてを交え、「まちのアーカイブズ学」についての見解を広げ深めていく回となりました。
※詳細は下記へ続きます。

▼教室の概要について詳しくご覧になりたい方は、以下の記事もチェックしてみてくださいね。


▼第3回 教室「 ゼミ編 」の様子

「まちのアーカイブズ」というひとつのテーマからさまざまなトピックが展開され、バラエティ豊かな会となりました。ここではその一部をご紹介します。

トピック1:質の高い「アーカイブズ」をつくるためには、主体的に取り組むことが大切
学生のみなさんへ最初に投げかけた「普段アーカイブしているものは何?」という問い。これには、日記、カードゲーム、映画のパンフレットなど個性溢れる回答が並びました。そんな様子を受け藤岡先生からは「アーカイブズというデータは、企業や自治体などの組織にその全容を任せるのではなく、提供しているのも所有しているのも自分たちである、という意識を持つことが大切。まずは自分のために記録し、それが後に自分自身や地域の人、歴史のために役に立つことがあるかもしれない、という捉え方をしてみることが、アーカイブズに主体的に取り組む第一歩である」といったお話がありました。
第2回のお話に出てきた「双方向のアーカイブズ」というのは、このようにひとりひとりがそれぞれの視点で記録した日々の暮らしの情報が集まり、質の高いアーカイブズが作られていくのかもしれません。

トピック2「建築」というアーカイブ
「建築」はアーカイブズ性の高い存在である、というお話。長い時間そこにあり続ける建築物はその存在自体が時代を表現しており、さらにそのことは誰でも見ればすぐに感じることができる、ということもポイントとなります。「建築があることで、その場所を記憶していく」ということは、現代のような文明社会ではどこでも誰でもやっていて、そのことが地域全体を意味付けていくことにも繋がっています。
このように、建築は非常にアーカイブズ性が高いため、出来るだけ残していくことが望ましいと言えるのではないか?というお話が出てきました。

トピック3:「 建築 」というアーカイブズは、誰のもの?
しかしながら、建物は日常的に使うものであることから、「今、自分たちにとって使いやすい形にしたい」ということを繰り返す存在でもあります。特に活気のあるまちにおいては、その時の必要に応じたまちづくりを行なっていくため、古い建物が残りにくい側面があります。
例えば、馴染みのあるまちから、馴染みのある建物が突如解体され、跡形もなく無くなってしまった、という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。とある学生さんはこのような事が起こった時、「聞いてない!」と思ったのだそう。これはまさにアーカイブズへの主体的な観点と言え、「建築、ないし、まちは誰のものなのか?」という深い問いへとお話が続き、まだまだお話していきたいトピックとなりました。

トピック4:「 匂い 」というアーカイブズ
さらには、「建築といった形を残せない場合、どうすれば記憶を残し、引き継いでいけるのか?」という、とある学生さんからの問い。九州大学箱崎キャンパス跡地も然りなこの問いに対し、他の学生さんから「最近観た映画の中で『匂いが一番記憶に残る』というセリフがあった」というネタが引き出され、「匂い」を再現することで記憶は引き継がれるのか?など、匂いのアーカイブズ性という新たな展開で盛り上がりました。
後日、「匂いの風景論」という資料があるとの情報を提供していただくなど、閉講してからも続いた「匂い」というアーカイブズの研究。奥の深さを感じます。


▼「まちのアーカイブズ学」の今後

このように「先生と考える まちのアーカイブズ学」は全3回を終え、これにて幕を閉じます。
しかし!まだまだ「まちのアーカイブズ学」について考えていきたいという学生さんの頼もしい声もいただいたこともあり、今後も「まちのアーカイブズ学」について考えていく機会を引き続きつくっていく予定です。

今回はご参加が叶わなかったみなさんや、これから暮らしの大学への入学をご検討されるみなさんもぜひ今後の教室にご参加いただければ幸いです。

では、また次回の記事でお会いしましょう。
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