急速に広がる給与前払いサービス、法的論点は?

給与日よりも前に、働いた分だけの給与相当額を日払いでもらえるようにするサービスが人気となっています。

借入金の支払や、急な支払い、子供関係の費用や、外国人の場合本国への送金など、急な資金ニーズは根強いものがあり、「日払い対応可」というのが採用における訴求力の一つになっています。

本記事のように大手のところが手がけるサービスもあれば、そうでないところもあり、また、そのサービス形態は様々ですので、利用する企業としてはコンプライアンス上の問題が気になるところではないでしょうか。

大まかに言って、給与前払いサービスには①労基法との関係、②貸金業法との関係があると考えられます。

まず、労基法との関係で言えば、第三者を介して支払うという仕組みが直接払い・全額払い原則(労基法24条)との関係で問題となり得るでしょう。

コンプライアンス上のポイントは、
ⅰ労働者への賃金支払義務はサービス会社の運営に関わらず担保されていること
ⅱ不当に高額な「手数料」が差し引かれないこと
が重要であると考えます。

まずⅰとの関係では、例えばサービス会社が賃金を使用者から預かっていたが倒産して支払えなくなった、などという場合でも「使用者の賃金支払義務は免れない」という前提であれば、労働者にとって特に不利益は無いと解されます。

また、ⅱとの関係では、全額払い原則との関係で、労働者が手数料を負担する仕組みは金額によっては問題となり得るため、手数料は企業負担が望ましいでしょう。とはいえ、銀行振込手数料に近いような金額であれば、労基法24条の労使協定を締結することにより手数料分について賃金控除が可能な場合もあり得ると考えます。

次に、②貸金業法との関係では、「自らの判断、意思決定に基づく、貸付けの実行判断を行っている」か否かが問題となります。
その意味では
 A.前払いサービスは従業員の勤怠実績に応じた賃金相当額を上限とした給与支払日までの極めて短期間の給与の前払いの立替えであること
 B.導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えを行っているものではなく、
 C.手数料についても導入企業の信用力によらず一定に決められている
との前提の下では、導入企業又は従業員に対する信用供与とは言えず、また、導入企業においても、信用供与を期待しているとまでは言えないことから、貸金業法上の「貸付け」行為に該当せず、貸金業に該当しないことになります(2018年12月20日 産業競争力強化法に基づく経済産業省「グレーゾーン解消制度」回答参照)。

給与前払いサービスの利用を検討される企業は、上記の点を満たしているサービス業者かどうかを判別すべきと考えます。

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