
「日々 綴ってきた」インタビュー企画vol.6 「うすの会」山の中で、季節とともに明るく暮らす。ま、いっかで次に進む。
くらしアトリエがNPO法人化して15年。
この機会に、今までお付き合いのあった方、お世話になった方にお話をうかがい、インタビュー集を冊子にまとめました。
その内容を、冊子に掲載しきれなかった部分も含めてnoteでも公開します。
なお、冊子「日々 綴ってきた」は「シマシマしまねのネットショップ」でも販売中です。紙で読んでみたい、という方はぜひこちらをご利用ください。
今日はインタビュー記事の第6弾として、雲南市掛合町で活動する「うすの会」さんの記事をご紹介します。
※こちらの記事は6月より有料マガジンへ移行いたします。
現在は無料で閲覧できます。

雲南市掛合町入間で活動をされている「うすの会」さん。中心メンバーは、坪倉静子さんと朝山賞子さんのお二人です。
くらしアトリエとのかかわりは、もう10年以上前、雲南市のレシピ冊子「ふるさと、ごはん。」製作の際に調理を担当していただいたことでした。

当時は別のグループの一員として活動をされていたおふたり。朗らかで楽しいおばちゃんたち、というイメージで、にぎやかにお料理を作っていらっしゃる姿が印象的でした。

その後、「暮らしを楽しむ朝市」で山菜おこわやお漬物を作っていただきたい、と依頼をして、本格的なお付き合いが始まりました。
「くらしの学校」では山菜の下ごしらえや調理のワークショップを何度かお願いし、そのたびに楽しい時間を過ごさせていただきました。また、2011年の「糸へん朝市」は入間が会場だったこともあって、「糸へん」にちなんだお弁当を作っていただき、柚餅子のワークショップもお願いしました。

もともと食品加工のグループのほかに、道の駅で餅の販売をされていたこともあり、「うすの会」というグループを立ち上げられて、今はつきたてのお餅や地元産の果物を使ったジャムなどを販売されているおふたり。

そのジャムなどのパッケージをくらしアトリエがデザインさせていただいています。
「うすの会」さんといえば、何と言っても笹巻きです。

笹巻きとは出雲地方の伝統食で、米の粉を団子にし、笹の葉で包んでゆでたもの。

もともとは町役場が笹巻きを「ふるさと便」のような形で発送していたそうで、町内でいろんな方が作っておられたのですが、入間の笹巻きがずば抜けて美しく、それが評判を呼び、道の駅からも発送することになりました。今は「うすの会の笹巻き」として、全国各地からたくさんの注文を受けておられます。
笹巻きの販売、今年も予約を開始しています!リピーターも多いこちらの笹巻き、ぜひ直接、その技術をご覧になってください。
笹巻き名人の坪倉さんは、「地域の先輩にずいぶん鍛えられた」とのこと。
「何千本も巻かないといけないけど、品質を保ったままできれいに巻くのは本当に大変。巻くのは1年のうちの2週間くらいだから、慣れた頃にはもう終わってしまう。それで、その次の年にはまた慣れるまで時間がかかっちゃう。先輩にしごかれ、辛い思いもしたけれど、それがあるから今がある、と、笹巻きを作るたびに毎年思うんよ。」

作業場から帰りたい、と思ったけれど、今帰ってしまったら次に合わせる顔がない、という思いだけで歯を食いしばって耐えた、と坪倉さん。「そういう人じゃないと上手にならん」と先輩に言われたそうです。
「その気になったらできるんよ。誰もがその気になってないだけだわ。」
しかも、それは自分のためじゃなく、地域のため。見返りを求めるわけでもないのにそこまで一生懸命になれるのは、「届いた人に喜んでもらいたい」という思いがあってこそ、です。

ていねいな仕事が評判を呼び、くらしアトリエのネットショップでも毎年大人気の笹巻き。リピーターも多いのが特徴で、それはお二人の笹巻きの美しさと美味しさによるところが大きいと思います。

お二人が口をそろえておっしゃったのが、「人間、だらずくらいがちょうどいいんよ、ほんのこと」(人間、ちょっと抜けているくらいがちょうどいいんだよ、ホントに)ということ。
「物事を難しく考えられん性格。まいっか、で次に進むんよ」と朝山さん。あんまり深く考えすぎずに、肩の力を抜いて仕事をすることが、楽しく長続きする秘訣なのかもしれません。
よく思うのが、「こんな山の中でお二人が出会って、楽しそうにされてるのが奇跡みたいで素敵だ」ということなのですが、それを話したら愉快そうに笑っておられました。
「腹の中にためずに何でも言える二人ではあるね」「9歳違うけど、そんな感じもしないしね」「明るさは人に負けんと思うわ」
その明るさの秘密を尋ねたら、意外な答えが返ってきました。
「どん底から這い上がってきた二人なんよ。」お互い、過去にプライベートでとても辛い出来事があり、それを知っている二人だからこそ、「もうこれ以上悪くなることはない」という気持ちがあり、明るく前を向いていけるんじゃないか、とのこと。
「金銭的にもしんどかったし、精神的にもね。あの辛さは忘れられないけれど、お互いに一番底まで見ているから、それ以上、下に行くことはない。もう、笑うことしかないんよ。あの時のことを思ったら頑張れる、と思っている。」
「もともと、性格的に明るいというのもあるかな。人に対してギスギスものを言うより、明るくしているほうが相手も楽でしょう?だから、人前で泣いたりすることもない。泣いてもしょうがないしね」と朝山さん。

底抜けの明るさの奥に、ちょっと垣間見えた部分。「そこが根源だね」とお二人が言われて、あらためて、支え合って前を向いて生きておられるんだなあ…と実感しました。
今後、どうしていきたい?と聞いたら、「病気をせんこに(せずに)、元気で、笑い合って生きていけたらいいね」とのこと。健康でいることが一番大切。新たなことを始める、という気持ちはもうないけれど、今やっているジャムや笹巻きは可能な限り作り続けていけたら、と話してくださいました。

掛合の山の中で、いつも笑いの絶えないかわいいおばちゃん二人。私たちにとっては、愉快に歳を重ねて生きる、という目標の象徴でもあります。お会いすると元気を分けていただけるお二人に、自分たちもこれからの活動で少しでも元気になってもらえたらいいな、と思いました。
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