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いじめのはなし

※適当な写真が見つからなかったので、鶏と私のツーショットをご覧ください。


娘を連れて地域の遊び場や公園に行くようになって、同い年くらいの子供達との交流が増えた。
1歳児にはまだ「お友達と一緒にあそぶ」という感覚はないと言われているが、気になる子をじっと見つめてみたり、覚えたての「どうじょ」をし合ったり、ときにはおもちゃの取り合いになって泣いたり怒ったり、親と過ごすだけではできない経験をさせてもらっている。


先のことを心配しがちな私は、子供達の間で起こるいじめについて最近よく考えている。
これから幼稚園、小学校、中学校と上がっていき、特定の仲良しができるかもしれないし、できないかもしれない。
気の合う子が見つからなければ友達なんて作らなくてもいい、というのが私の考え方ではあるが、できることなら娘には毎日楽しく過ごしてほしいとも思う。


もう20年以上も前の話。
私は小学校5年生で転校をしているのだが、転入した先のクラスに所謂仲間はずれにされている女の子がいた。
目がクリッとしてよく日に焼けていてとてもかわいい子だった。

理由はどうやら「家が貧乏だということ」らしかった。

そう言われてみれば彼女はワッペンで穴を繕ったジャージを履いていたり、他の子が持っているようなキャラクターの筆箱や髪飾りなんかをあまり身につけていなかったりした。

まだクラスの子達の名前を覚えられていない私に、ある子が耳打ちをした。

「A子にカラーペンを貸すとペン先が黒くなるからやめたほうがいいよ。」

曰く、カラーペンを買ってもらえない彼女は使い方を知らず、鉛筆で書いた文字の上をなぞってしまうため大事なものが汚れて返ってくるというのだ。

私は「カラーペン使っててペン先が黒くならない人っているんだ。へぇすごいね。」と思ったけれど、へぇとだけ言った。

授業がはじまると、A子がカラーペンを貸してと言ってきた。私は全12色のペンをゴムでまとめた束ごと彼女に渡した。A子は少し驚いたような顔をして、それを受け取った。


終業のチャイムが鳴り、ペンが返ってくる前に私は女の子たちに囲まれた。

「なんでA子にペン貸したの?」
「だめだって教えたじゃん!」

めんどくせぇ〜と思いながらも黙っていると、クラスのボスB子が来て言い放った。

「正義の味方ってかんじだもんね」


その瞬間、空気が変わったのがわかった。
新入りにクラスのルールを教えてあげるね!という雰囲気だった女の子達が、新たなターゲットですね、わかりました。という顔になった。

それから数日間、私は「いじめられている」というほどではないが、A子と共に仲間はずれにされるような日々を送った。

ところが子供ながらに仕事を持っていた私は、小学校が生活のすべてではなかった為かその状況が大して苦でもなく、くだんね〜と思いながら特に困りもせず過ごすことができてしまった。

そんな態度のターゲットはつまらなかったのだろう、すぐに私に対する仲間はずれごっこは終わった。(そして私には、はっちゃんという親友ができたのだがこの話はまた今度。)


A子は相変わらずペンを貸してもらえなかったり嫌なことを言われたりしていたが、彼女も黙ってはおらず言い返したり暴れたりできる性格だったこともあり、見る限りそんなにひどいいじめには発展していなかった。私や何人かの友達とそれなりに楽しく過ごしているように見えた。


今になってあのときのことをとても後悔している。

ボスや金魚のフン達ときちんと話をして、難しければ大人にも介入してもらって、あのくだらない空気を完全に終わらせる努力をすればよかった。

A子のご両親は娘がそんな風にされていることを知っていたのだろうか。
子を持った今考えると胸が張り裂けそうに痛くなる。


それにしてもあのくらいの年齢の女の子たちの、群れで行動するかんじ、ストレスのはけ口にする標的を作っておきたいかんじは独特だなあと思う。
いじめは絶対にいけないことだけれど、あの嫌なかんじ、残酷というか、人を人と思わないような態度や感情は、持たず通らずで成長する子のほうが少ないんじゃないかと思う。


もし娘がそうゆう場面に出くわしたときは、どんな風に感じているのか聞いて、私もどう思うか話したいと思っている。

そしていじめの標的になるようなことがあれば、絶対に相談してほしいと思う。


でもさ、いちばん知られたくないのが親だったりするんだよね。親に心配かけたくないから言えない。そんな対象になっているなんて情けなくて恥ずかしくて言えない。

それもとってもよくわかる。

だから自分の娘だけじゃなくて、同じクラスの子、近所の子、なにかおかしなことは起きていないか気にしていられるような、声をかけやすいようなおばさんになりたいと思っている。


いじめられたら逃げればいい。
悩んだり立ち向かったり自分で解決することで成長する、なんてことは別にない。
いじめられてもいい原因なんて存在しないんだから。いじめるやつが100%悪い。

逃げ方がわからなければ大人に相談してほしい。
きっと君を守って一緒に逃げてくれる人がいる。転校なんか何回でもさせちゃうよ。
次の学校ではきっと気の合う子と出会える。学校で出会えなければまた次の場所で出会える。
子供の時は学校やその友達がすべてのような気になるけれど、そうじゃないから大丈夫。

大人になってわかったこと、娘に伝えたいことをまとめてみるけれど、渦中にいる子供と話をするのはきっととても難しいんだろうな。


A子にも他の女の子達にも小学校を卒業してから会っていないけど、みんなあのときのことをしっかり喉の奥に引っ掛けて生きているといいなと思う。


追記

つい自分の娘が被害者になることを恐れた目線で書いてしまったけれど、加害者になることだってもちろんあり得ると思っている。

そのときも徹底的に話をするつもり。

母さんも経験したけれど記憶が薄まってしまっているので、今、何を考えているのか教えてほしい。

あの嫌な感じの心が芽生えてすぐのうちに大人が真剣に向き合って話をすれば、死に繋がるような壮絶ないじめで苦しむ人をきっと減らせると信じている。


制作代にさせていただくかもしれないし、娘のバナナ代にさせていただくかもしれません。