王様と私
王様に仕えて数ヶ月が経つ。
王様はひどくわがままでおられる。
ご自分がポイっと手を離されたアンパンが床に転がると、瞬時に怒りと悲しみを爆発させ私にアンパンンンンンンンンと命令する。
私が台所で手を泡だらけにしている時をお狙いになり、ショクパンとる?とお尋ねになる。
ショクパンとる?はじまってしまった。
ショクパンとる??まずい。少しだけお待ちくだショクパンとる???ギヤアアアアアアアアアア!!!!お待ちください王様!リミットは3回目までなのはわかっているのです!ですが泡を!泡を流させてください王様!!!!!
慌てて手を拭き駆けつければショクパンはニヤリと笑う王様の手に握られているのである。
ご機嫌でお散歩を楽しんでいらした王様が、抱っこと仰る。抱っこの準備を整え抱き上げると、降りると仰る。降ろさせていただいた瞬間抱っこイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアお待ちください王様ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
最近食べ物に興味の出てきた王様は、私の食べているものをよこせと仰る。
無論、王様の目の前には栄養バランスの整った好物ばかりのお食事が並んでいる。
王様がご機嫌で召し上がれるよう、できるだけ同じものをいただくようにはしているのだが毎食となると難しい。今日に限っては私の食事、そう、炊飯器に放置されて3日目のカピライスwithキムチを献上するわけにはいかないのだ。
あの作戦しかない。隙をついて身を隠し、はい王様!モグ今行きます王様!モグモグ!少しだけほんの少しだけお待ちくだモグモグバクバグゥゥウウウウウウウ!!!
冷蔵庫裏40秒で完食作戦が功を奏し、今度ばかりは私の勝ちである。
この際、少しの胃痛には目を瞑ろうではないか。
王様はわがままだ。
王様は私をこき使う。
だけど王様が私を見てニコッと笑ってくださると、それだけで全身を喜びが駆け巡るのだ。
王様が今すぐに来いと私を呼ぶと、一刻も早くそのもとに駆けつけたくなるのだ。
制作代にさせていただくかもしれないし、娘のバナナ代にさせていただくかもしれません。