コントロード 第四話「High Five」
モンティパイソン。
ドリフターズ。
シティ・ボーイズ。
男だけのコメディ集団を挙げれば、古今東西様々なユニットがある。
僕が生まれて初めてやることになったコントも、そんな集団を目指して、同じく男だけの集団として出発することになった。
名前を「ツィンテル」という。らしい。(僕が加入した時には既に決定済みだった)
冬の訪れを感じたある日。
緊張と不安の中、第一回ツィンテル企画会議が執り行われた。
不安だが、信頼できるメンバーと出逢えれば、僕の心配も少しは無くなるだろう。
そう思って自分を落ち着かせた。
渋谷のラブホテル街を抜けるとある、こじんまりとしたオフィスが、この日の待ち合わせ場所。
なんでもセティによれば、ツィンテルの事務所があるという。
今後のために借りたのだそうだ。
渋谷に事務所を構えるとは、なかなかの入れ込みようだ。
ドアを開けると、小ぎれいに片付いた部屋にパソコンが1台、テレビが1台、テーブルに品のいい白い椅子が5脚。
そして数人の男が僕を待っていた。
「おうガックン、久しぶり。」
奥に陣取って、タバコを燻らせているのは、小島フェニックス。
通称フェニ。
先日の舞台公演でセティに無理やり会わされた男だ。
セティの大学の先輩の九州男児。
ツィンテルではリーダー兼演出。
普段は映像制作の仕事をし、ディレクター・プロデューサー・エディター、何でもこなす切れ者。
ドリフターズでいうところのいかりや長介。
過去にバイクで、一歩間違えれば死んでいたほどの大事故を起こし、その死の淵から生還したことで自らにフェニックスの名をつけた。
「もうちょっとしたら全員揃うから、コーヒーでも飲んで待っててよ。」
そう言って、フェニックスの隣でなにやら事務的な作業をしているのが、言わずと知れた、セティ。
石川県生まれの田舎者。
あくの強い演技と豊富なアイデア、独特のファッションセンスを持つ。
ドリフターズでいうところの志村けん。
地元石川県の魚屋の倅で、若い頃からクラスの人気者だった。演劇や映画に興味を持ち、学生時代から周りを巻き込んでは作品創りをしていた。以前学生時代に彼が8mmビデオで撮ったという映画をみせてもらったことがあるが、気持ちが良いくらい「Shall we dance?」のパクリだったのをよく覚えている。
またコーヒーか。今夜も腹が痛くなるに違いない。
そう思って腰掛ける。
残る椅子は、2脚。
すると、数分後にやってきた見知らぬメガネの男。
「17時30分。ぴったりだな。」
かあきじいんず。
通称かあき。
かの東京大学で遺伝子研究の傍らツィンテルに参加する。
かあきじいんずの「じいんず」はGパンのことではなく、生物遺伝子のこと、らしい。
ツィンテルでは構成として主に参加。
「リンゴは赤い」ということを言うために30分くらい使うその知識量は、とても演劇界には類を見ない。
ドリフターズでいうところの仲本工事。
残る椅子は、1脚。
そして遅れること10分。
勢いよく開いたドアから最後のメンバーが現れる。
「うっす!」
伊藤大輔。
通称デビ。(眉毛がデビルマンみたいだからとか、デビット伊東さんからきているとか色々な説がある)
リーゼントに決めたその頭。変な眉毛。具合の悪そうな肌色。
セティが共演した中でもピカイチの存在感を放ったというその男は、顔に似合わずダンス愛好家。
ドリフターズでは、言えないが、飛び道具としての存在は高木ブーに匹敵する。
こんな、なかなかに個性的なメンバーで、5人組コント集団、ツィンテルの出航。
なにしろ、五人中、二人が変な名前、一人が変な顔、一人が変な服。
僕の不安は、ますます募るばかりだった。
いざ、コントの旅へ。
(第五話につづく)
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