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コントロード 第四十四話「ウッチャンのふるさと①」

以前、営業の話を書いたが、僕らにとって最も印象に残っている営業といえば、熊本県人吉市のお城まつりの営業だ。

このお祭りのお仕事が入った経緯は少し不思議だった。

当時は今のようにYoutuberという職業もメジャーではなく、数えるほどしかいなかった。だけどYOUTUBEというものは今同様あり、それをなにかの宣伝の動画としてアップすることはあって、僕らもとあるネタ動画をアップしたのだ。

熊本県人吉市というのは、何を隠そうウッチャンナンチャンの内村光良さんの生まれ故郷である。

人吉市は「球磨焼酎」という米から作られた焼酎が名産で、ウッチャンの従兄でありベテラン構成作家の内村宏幸先生が僕らのダジャレのネタを気に入ってくれて、その銘柄や関連用語でわざわざ僕らのために作ってくれたダジャレネタを宣伝のためにYOUTUBEにアップすることになった。

それが球磨焼酎組合の方の目に留まり、僕らに地元のお城まつりのお仕事を振ってくれて、その場で僕らは「球磨焼酎大使」に任命されることになる。お仕事になるきっかけというのはわからないものだ。

この年から3年間、解散するまで僕らはゴールデンウィークに開催されていたお城まつりのメインMCを務めさせてもらった。

ウッチャンナンチャンの事務所マセキ芸能社に入って数年、まさか自分たちが内村さんの故郷でのお祭りのメインMCを務めることになるなんて。

この数年間のお仕事は僕らにとってかけがえのない思い出だ。


初めて行く熊本県。

ウッチャンの故郷、人吉市へ行くには、熊本の空港ではなく、鹿児島空港の方が近い。

空港から送ってもらい、人吉市に到着。

豊かな自然や、国宝である青井阿蘇神社、焼酎の蔵元などを見学させてもらい、ウッチャンの生まれ育った故郷のことを知る。

他にも、人吉市の観光としては温泉やラフティング、鉄道マニアの方にはSLやアニメ好きの方なら「夏目友人帳」の舞台となった聖地巡礼など見どころは多い。

お祭りは何日かに分けて開催されるので、僕らも数日間宿泊することになる。僕は泊まりの営業が大好きだった。

焼酎組合の方々は、僕らや会社にとってはクライアントのような存在ではあるけれど、ウッチャンのことを子供の頃から知っている存在でもあり、内村宏幸先生とは同級生の方なんかが幹部にいらっしゃるので、なんというか、ウッチャンナンチャンを筆頭とするマセキ芸能社にとってはなんだか親戚のような感じがして、僕らも3年間甘えに甘えさせてもらった。きっと僕らにお仕事を振ってもらえたのも内村先生のお力添えがあってのことなのだろう。ありがたい限りだ。

色々な観光名所も回らせてもらって楽しかったのだが、僕らにとっては運転途中に、

「あ、ここが内村君が通ってた小学校だよ」

とか

「この辺に実家があったんだよ」

と言われて初めて見る内村さんゆかりの地が何よりの観光名所で、その都度テンションが上がった。


夜には組合の皆さんと、地元の若い人からお年寄りまで混ざって毎晩お酒を飲んだ。

わりとどこの地方営業でもあるあるなのかもしれないが、よくこういった機会に飲みに連れて行ってもらう時、地元で最もハイカラな店に連れて行ってもらうことが多い。

僕らのような売れていない芸人にとってはもちろんどんなお店に連れて行ってもらったって嬉しいし美味しいのだが、この街一番のイタリアンレストランに連れて行ってもらった時にセトと二人でこっそりと

「地のものが良いんだよ! イタリアンじゃなくて地のものが!」

と笑い合ったのは内緒だ。


さて、地方での泊まりの営業というのはどういったものなのか、僕らはこの人吉市のお祭りと、セトの故郷である石川県のお祭りぐらいしか経験が無いのだが、僕らのマネージャーHさんは僕らと同じくナイツさんの現場にもついていて、よく

「ツィンテルの地方営業は、他の芸人さんの地方営業とちょっと違う」

と言われていた。

どのあたりが違うのかは、また次の話で。

(第四十五話につづく)



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