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吾輩は火星人である chapter.2

火星では地球人たちの戦争が最終局面を迎えていた。
なぜ、ひとりひとりなんだ? 夫婦は一緒でも良いんじゃないのか? 幼い子供はどうするんだ?
火星上に残った人類はおよそ1千万人。私が今、火星人、もとい、未来の地球人からこの話を聞いているのは西暦2018年の東京。現時点で東京の人口が1千万人弱だから、だいたい東京都民が地球の半分の大きさの星に散らばってるイメージかな。その1千万人たちが一斉にテレパシーで騒ぎ出した。
そもそもどうして火星に移住してまで争いを始めたのかというと、世界を統治する憲法が気に入らないだのやり方が汚いだの価値観宗教観不公平感でそれぞれの国がカンカンに怒った結果であった。
人は近いと争いになる。各々の住居に程よい距離感をとれば、山に近い海に近い北に近い南に近い水に近い都会に近い方が良い悪いなど不満がでる。より人より良い場所を取り、より自分の欲求を満たそうとすることで争いになる。距離感は孤独を生み、孤独は愛を欲し、愛を求め合うことでも傷つけあった。
言葉がなくても通じ合えるようになったというのに、伝わらなくても良いことまで伝わったのだ。

多くの時間をかけて話し合った。こんな無言で討論するくらいなら、核爆弾のスイッチから指を引いて仲直りしたほうがよっぽど早い。アメリカとソ連の冷戦とは違う。すべての戦いを止め、手を止め、足を止めて、一日がかりで話し合った。今、その誰かの指でボタンを押せばすべては終わる。すべてを壊してしまいたくなる怒り、衝動。目の前にいる自爆テロ犯を刺激しないよう説得するかのような焦り。逃げ出してしまいたい恐怖。負けたくない悔しさ。1千万人の思いが束になって重なり、放射し、また交差したりぶつかり合う。

未来の地球人が語りかける。
その熱い想いが伝わる。
まるで私もその戦場にいるかのようだ。

次第に1千万人の思いが妥協しながら一つの案に導かれ賛同し始める。
「人はひとりでなければ必ず争う。親子であっても意見は違う。乳飲み子と共に自殺する母親の意と、乳飲み子の意は同じではない。人と接することで摩擦が生じる。大気と大気が摩擦しただけでも雷という強大なエネルギーを発する。エネルギーは素晴らしい恵にもなるストレスなのだ」

次回に続く

2018年夏。世界的に異常な猛暑。異常気象。
最近この書きかけの思いつき記事にいいねがつくので続きを書いてみた。

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