谷𠮷孝之さんの小鉢

画像は倉敷市児島出身の備前焼作家、谷𠮷孝之(たによし・たかゆき)さん作の小鉢です。

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赤褐色の条の模様が竹のように見えます。これは火襷(ひたすき)の技法により、焼き締めるときに器の表面に藁を置くことで、藁のアルカリ成分と土の鉄分が化学反応を起こし、赤褐色の模様をつくったものです。

備前焼は自然にできた変化である窯変(ようへん)が魅力です。それは作家が土を追いつめて、土の潜在力を最大限に絞り出した、意図的な作為のない、無心のがむしゃらさを象徴する作品となります。力のベクトルとしては、押す力「圧力」のイメージです。火襷(ひたすき)も、窯詰めの際に器同士がくっつかないように巻いた藁による副産物で、そこに作為はありません。いわば「圧力」の影・痕跡のようなものです。

谷𠮷氏は直接、絵付けをしているわけではありませんが、ある程度、意図をもって火襷(ひたすき)の技法で土の変化を誘導することで、模様を出しています。それは「圧力」ではなく、軽く引っ張る力「調節」のイメージです。

従来の備前焼が、相撲力士やレスラーのような男性的な武骨な美しさだとすると、谷𠮷氏の器は、フィギュアスケートの羽生結弦選手のような力を誇示しない中性的な美しさだと言えます。


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