シンクロニシティ〜藤原加寿子さんのカップ〜

画像は、岡山市東区瀬戸町出身の陶芸作家、藤原加寿子さん作のマグカップです。ペルシャ陶器の技法を用いて、金ラスター釉薬を使い、酸素を絶って還元焼成したものです。黒地の肌にしっとりと落ち着いた金色が装飾され、金箔を散らした蒔絵のような風合いになっています。落ち着いた華やかさで、しかも、カップの底が広く安定感があるので、自立した裕福な大人の女性のような存在感があります。

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藤原加寿子・作 マグカップ

それはかつて見た、クリムト作「エミーリエ・フレーゲの肖像」に通じる世界でした。絵のモデルのフレーゲ(1874-1952)は、19世紀末から20世紀初頭の帝都ウィーンでブティックを経営し、最新モードを発信した、キャリアのある女性実業家でした。肖像では、写実的な顔とは対照的に、金色をちりばめた装飾的なドレスが平面的に描かれており、日本美術の影響が見られます。

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ダスタフ・クリムト「エミーリエ・フレーゲの肖像」1902,  

ウィーン・ミュージアム: マティ・ブンツル、他執筆:日本・オーストリア外交樹立150周年記念 ウィーン・モダン クリムト・シーレ 世紀末への道. 読売新聞東京本社, 2019. P225より引用

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19世紀末のウィーン・モダンと岡山の新進クリエーターとの間にあった、日本の美意識を介したシンクロニシティに、びっくりしました。

カップは口が広くカーブが緩やかで、口唇にやさしく触れるので、飲み物がマイルドに味わえます。





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