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石原路子さんのテディベアによる、五十嵐 弘・作「自画像」の再現

画像は、我が家に3番目にやってきた、テディベアです。

石原路子・作 テデイベア 2020年

伝説のテディベア作家、石原路子さんによるもので、2020年に岡山の老舗百貨店・天満屋で開催された美術工芸展に出品されていたのが、出会いでした。体は、クリーミーホワイトのモヘアで覆われていて、胸元の栗色の毛がチャームポイントです。

とても情が深い子で、我が家の楽屋ではいつも、海野千尋さんのミノムシの人形を抱いてくれています。

海野千尋さんのミノムシを抱くクリーミーホワイトのテデイベア

五十嵐 弘(いがらし ひろし)は、帝国美術学校を出て美術教師になりました。自画像はそのとき描かれたものです。

五十嵐 弘・作「自画像」1)

戦没画学生慰霊美術館「無言館」(長野県上田市)の館長、窪島誠一郎氏は、「キリリと通った鼻すじ、細い眼、半円を描いたような眉、軽くむすんだ唇はかすかに微笑んでいるようだ。輪郭のハッキリとした黒と茶褐色の相貌、かぶった帽子がいかにも、画学生、の趣をあらわす」と評しています。1)

五十嵐は、昭和18年に結婚したばかりの妻の栄子を残して、軍に応召し、昭和20年にフィリピン・ルソン島で戦死しました。33歳の生涯でした。

五十嵐は一時帰郷したときに「これはぼくの宝物だから」と一冊のノートを置いて行きました。それは妻の栄子が戦地の弘にあてた100通もの手紙に、一通一通返事を添えてつくったノートでした。その後、妻栄子も、たった一人の男児も後を追うように他界しました。今や五十嵐と栄子との夫婦愛、絵への情熱を知る手がかりは、「自画像」を含む何点かの油絵と、一冊のノートによるしかないのでした。1)

クリーミーホワイトのテディベアは、五十嵐 弘と情の深さが通じるところがあると思えます。

この空気感はいかがでしょうか。


1)窪島誠一郎・文 無言館・編:戦没画学生 いのちの絵 100選. コスモ教育出版, 2019. P168-169


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