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倉リハ検食日記 2020年春から初夏へ

倉リハ給食部のスタッフは、限られた費用の中で、安全で、おいしく、治療効果のある食事を提供するために日々様々な工夫をして奮闘してくれています。医療機関では患者さんに食事を提供する際に、医師による検食が義務づけられていますが、検食を通して、そんなスタッフの熱意をお伝えしたいと思います。

なお、ライブ感を大切にしたいので、後から推敲や編集をせずに、食堂のテーブルで記述したそのままに、発表しています。

2020年4月3日(金)昼

さくら寿司 鶏肉の野菜巻き 辛子和え(菜の花) フルーツ(パインアップル)お吸い物(ソーメン)

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さくら寿司は、温かいまろやかな酢飯です。桜色の根野菜もやさしい感じです。

鶏肉の野菜巻きは、のたりとした甘みがあります。

菜の花の辛子和えは、辛子の風味がほのかです。

パインアップルは、老成しています。

お吸い物のソーメンは、コシが無く、ゆったりとしたソーメンです。

春の霞んだ感じと、けだるい感じと、匂い立つ感じの全てをイメージさせる、提供者の意気込み全開の一膳でした。


4月6日(月)朝

御飯 スクランブルエッグ オクラとゆばの和え物 味噌汁(小松菜) 牛乳

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御飯は十分な量です。

スクランブルエッグは、ケチャップの酸味が染みてくる、哀愁のある味です。

オクラとゆばの和え物は、野菜の甘さを十分に感じます。

味噌汁は、薄味でやさしい感じです。

少し重めの牛乳です。

長い冬眠から覚めて土の中から出てきた、春の目覚めをイメージさせる一膳でした。


4月10日(金)昼

竹の子御飯 治部煮(鶏肉) 付け合わせ(ふき) 昆布の炒め煮 フルーツ(黄桃缶) お吸い物(てまり麩)

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竹の子御飯は、竹の子がたっぷりと入っています。出汁もさわやかな味覚がします。

治部煮は、鶏肉がほろほろ崩れて、心地よいです。味付けも軽やかで明るい感じです。

ふきは、線維感がよく残っていて、噛むときのリズム感を楽しめました。

昆布の炒め煮は、昆布とさつま揚げの旨味が多重で、甘くてやさしい一品です。

黄桃缶は成熟した甘さです。

お吸い物は、穏やかな汁でした。

春から初夏にかけての風情がよく表現された一膳でした。廉価な食材でも組み合わせの妙で、くっきり力強く表現できていました。


4月17日(金)昼

御飯 豚肉のピカタ 付け合わせ(ピーマン) ジャーマンポテト 海藻サラダ デザート(ゼリー)

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豚肉のピカタは、形があって崩れやすい食感が心地よい肉です。ケチャップのパンチが効いて食が進みます。

付け合わせのピーマンは、しっかりとした植物油のうまみがついています。

ジャーマンポテトは、ベーコンの塩味が十分効いたポテトです。

海藻サラダには、漁村のひなびた風情が出ています。

デザートのゼリーは、粘りのあるゼリーです。力が湧いてきます。

日々、日差しが強くなってゆく、初夏の風情を感じる、とても庶民的で明るく楽しい一膳でした。


4月24日(金)昼

豆御飯 ハンバーグ 付け合わせ(サリナス) 酢の物(大根) わかめスープ ヨーグルト

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セントラルキッチンのハンバーグですが、肉の香りとコクが十二分にあります。多めのケチャップが素朴で家庭の味風です。

大根の酢の物は、酢のさわやかな酸味と、和えたカニカマの旨味が調和しています。ごまの香ばしさも効いています。

わかめスープは、マイルドでまろやかです。

ヨーグルトも、マイルドでまろやかです。

感染禍で緊張が高まっている中で、かつての日常を想い出して、ほっとできる、気配りのある一膳でした。


5月1日(金)昼

茶飯 生姜焼き(豚肉) 付け合わせ(キャベツ) クリームチーズ和え    フルーツ(キウイフルーツ) 漬物

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茶飯は、ほのかに香り立っています。すぐに判断させない、緩やかな変化に富んだ奥深い味付けで、御飯だけでも楽しめます。

生姜焼きは、脂の旨味がたっぷりと引き出されて、ジューシーです。

付け合わせのキャベツは、キャベツの甘みと豚肉のコクがよくからんで、旨味が倍増です。

クリームチーズ和えは、奇抜さで、はっと覚醒させてくれます。

キウイフルーツは、成熟して甘いキウイです。

漬物は既製品で、整って安定感があります。

今年は例年と違って、危機的・非日常的な状況の中で迎えた、八十八夜であることを、再認識させてくれる、調理者の力が込められた一膳でした。


5月4日(月)朝

御飯 煮物(うまい菜) さつま芋の甘煮 味噌汁(しいたけ) 牛乳

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御飯は、粒立ちがはっきりして力強く、量もたっぷりです。

煮物は、うまい菜の丸みのあるコクと、豆腐の甘さが、やさしい印象です。

さつま芋の甘煮は、甘く、乾いた感じが、食感に楽しい変化を与えてくれます。

味噌汁は、しいたけがたっぷりで、少しぬめった食感を、珍重に楽しめました。

牛乳は、切れを緩めた、やさしい感じの牛乳です。

味付けに角がなく、全体的にやさしい感じですが、食感に変化を与えることでメリハリのある、楽しい一膳になっています。


5月4日(月)昼

御飯 薬味焼き(豚肉) 付け合わせ(ピーマン) ゴマダレかけ(胡瓜)   味噌汁(豆腐) フルーツ(りんご) ふりかけ

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薬味焼きは、スパイシーな野菜のおかげで、初夏の畑のさわやか、かつ、臭みのある、複雑な香りがします。

付け合わせのピーマンは、相対的に、クセが少なく落ち着いた印象になります。

ゴマダレかけは、チーズとゴマダレの合わさった強いコクに、大地の生命力を感じます。

豆腐の味噌汁は、とろっとして妖艶です。

りんごは、老成しています。

ふりかけは、苗床のように黄緑色です。

田植えのときの田んぼのように、若々しい芽吹きと、大地の泥臭い生命力を感じた、命の一膳でした。


5月8日(金)昼

散らし寿司 含め煮(かぼちゃ) 菜の花のお浸し お吸い物(そうめん)

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散らし寿司は、たっぷりの酢飯の中に、様々な食感の具材が散りばめられた楽しい一品です。

かぼちゃの含め煮は、甘く、茫洋とした、やさしい一品です。

菜の花のお浸しは、漬物のようは塩っぱさで、含め煮とのコントラストになります。

そうめんのお吸い物は、ゆるめの出汁と麺でほっとできます。

今は、感染対策で、みんな同じ方向を向いて、会話がなく、緊張感のなかで静に食べているので、こういう、たわいもなく、ゆっくりと、ゆるく語りかけてくる一膳に、和めます。


5月15日(金)昼

五目御飯 豚肉のくわ焼き付け合わせ(レタス) かぼちゃのえびあんかけ  お浸し(うまい菜) フルーツ(オレンジ)

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主張しない、くだけてリラックスできる、おだやかな五目御飯です。

豚肉のくわ焼きは、ハーブの香りがします。味付けは甘めです。付け合わせのレタスが、くわ焼きの甘みでほどよく味付けされます。

かぼちゃのえびあんかけは、和菓子のように甘いです。

うまい菜のお浸しは、かつおの香りがさわやかです。

オレンジは軽やかで甘いです。

晩春もいよいよ最後で、黄砂が霞み立ち、臭い立ってくるゆるい感じの、季節の変わり目が表現された一膳でした。


5月22日(金)昼

穴子丼 辛子和え(小松菜) さつま芋の甘煮 味噌汁(えのき) フルーツ(パインアップル)

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穴子丼は甘いタレで、初夏の緩んだ海が表現されています。

小松菜の辛子和えの、辛みがほのかなのは、潮騒のようです。

さつま芋の甘煮の締まった甘さは、高級アイスのようです。

味噌汁の、自家製味噌のような地の香りに、海辺の漁村の納屋が思い浮かびます。

生のパイナップルの甘酸っぱさは、亜熱帯からの便りです。

初夏も深まって来ました。感染禍の最中でも、季節は巡ることを気付かせてくれる一膳でした。


5月25日(月)朝

御飯 オムレツ 和え物(うまい菜) 味噌汁(えのき) 牛乳

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オムレツは、酸味の少ないケッチャプで味付けされて、やさしく目覚めさせてくれます。

うまい菜の和え物は、しっとりとしたつゆくさのような静けさがあります。

味噌汁は、玉葱の甘いやさしさに包まれます。

過ぎゆく春の名残を感じた一膳でした。


5月29日(金)昼

鮭の枝豆の混ぜ寿司 炊き合わせ(厚揚げ) お吸い物 水まんじゅう

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混ぜ寿司は、枝豆の弾む食感が夏を予感させます。

炊き合わせは、菜の苦味が、季節を渡るのを惜しんでいるかのようです。

お吸い物の、少し眠い重さは、春の名残です。

水まんじゅうの甘さは、夏への覚醒を促します。

春、初夏、盛夏の三つの季節を渡る、複雑な一膳でした。


5月31日(日)夕

御飯 味噌煮(鶏肉) ドレッシング和え(ひじき) 野菜しんじょう フルーツ(キウイフルーツ)

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味噌煮は十分な野菜が採れるように配慮されています。

ひじきのドレッシング和えは、梅雨明けのさわやかさの先取りです。

野菜しんじょう(すり身に野菜を加えた料理)は、ほっこりとしたゆるさです。

キウイフルーツは、力強く酸っぱいです。

これから夏に向かう心構えができました。


2020年6月1日(月)朝

御飯 うの花 和えもの(白菜) 味噌汁(ホウレン草) 牛乳

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たっぷりの御飯です。良質で十分な糖質を摂取できます。

うの花は、しっとりしていて、丸みのあるお味です。

白菜の和えものは、さわやかで切れ味があります。

味噌汁は、具だくさんで、汁にもとろみがあって、食感が変化に富んだ楽しい感じです。

新緑も成熟し、小鳥のさえずりを聴きながらの食事です。、一皿一皿特徴があるので、じっくりと味わう一膳となりました。


6月5日(金)昼

梅ごはん 生姜煮(さば) 付け合わせ(オクラ) ミョウガの三杯酢 お吸い物(つみれ) 梅ゼリー

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さばの生姜煮は、まろやかでほどよく脂ののったさばです。小骨を除去してある安心感もおいしさを高めています。

付け合わせのオクラは、粘りで勢がつきます。

ミョウガの三杯酢は、やさしい甘酸っぱさで、疲労回復できます。

お吸い物は、三つ葉と玉葱がたっぷりで、豊潤な野菜感があります。

梅ゼリーは、薬の香がして、身体によさそうです。


初夏の疲れに配慮された、疲労回復と勢がつく一膳でした。


6月8日(月)朝

御飯 野菜炒め(畑菜) オクラの湯葉和え 味噌汁(厚揚げ) 牛乳

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たっぷりの御飯です。今の日本人はもっと御飯を採るべきなのでしょう。

野菜炒めは、玉葱のやさしい甘さに癒やされます。

オクラの湯葉和えは、青さが少なく、旨味が強いオクラです。

味噌汁の量は、塩分摂取量の目安を教えてくれます。いくら体に良くても採りすぎはいけません。

全体的に丸みがあって、一週間のはじめを穏やかな気持ちでスタートできます。


6月12日(金)昼
チャーハン 盛り合わせサラダ 肉シューマイ コンソメスープ

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チャーハンは浅めのコクで、子どもの頃の懐かしい家庭の味を再現しています。

盛り合わせサラダは、梅雨の時期の瑞々しい菜です。

肉シューマイは挽肉がよく練られて、粒立ち感がなく、おとなしく、やさしい感じです。

コンソメスープは、わかめのクセが弱めで、少しおとなしい感じです。

早乙女のための、やさしく澄んだ感じの一膳ですね。


6月15日(月)朝

御飯 卵とじ(ホウレン草) 焼きなす 味噌汁(なめこ) 牛乳

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少し硬めに炊いた、粒立ちのはっきりした御飯です。主食としての存在感があります。

卵とじは、出汁と菜と卵による旨味の三重奏です。

焼きなすは、ドレッシングの酸味でさわやかに仕上がっています。


味噌汁は、大振りのなめこが存在感を放っています。つるっとした表面の滑りを楽しめました。

甘くて、エネルギー源になりそうな牛乳です。

本格的な夏に向けて備えとなる、エネルギー感のある一膳でした。


6月19日(金)昼

おろし焼肉丼(豚肉)  トマトのサッと炒め フルーツ(りんご) お吸い物(豆腐)

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焼肉丼は、甘くやさいい焼肉のタレに覆われています。玉葱もしんなり、やわらかです。

トマトの炒め物は、トマトの酸味がマイルドに変化しています。
りんごは、酸味がマイルドです。

お吸い物のカイワレも、辛みが少なくマイルドです。

雨天の中、沈んだ心に寄り添う一膳でした。


6月26日(金)昼

カレーライス 果菜花サラダ(ブロッコリー) 漬物(福神漬け)りんごゼリー

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カレーライスは、野菜が多く煮込まれて、野菜のコクがたっぷりです。挽肉が使われているので、肉の旨味もよく出ています。その一方で、スパイシーなパンチも効いていますので、家庭の味とは違うプロの味と言えます。

ブロッコリーのサラダは、新鮮でエネルギッシュな感じです。

ゼリーは、粘りがあります。

本格的な夏へと助走する、発散するエネルギー感に溢れた一膳でした。


6月29日(月)朝

御飯 ひじきの煮物 チーズ入りサラダ 味噌汁(豆腐) 牛乳

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ひじきの煮物は,豆のさやが目に鮮やかです。ゆるく、甘い味付けで和めます。

サラダは、よく冷やしてあり、清涼感に溢れています。まろやかなチーズ味で和めます。

豆腐の味噌汁は、スタンダードで安心感があります。

牛乳は、空間性が均質な、安定感が感じられる逸品です。

少しの刺激と、ゆったりとした安定感とがバランス良く味わえた、調理者のセンスが垣間見えた一膳でした。



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