サルスベリ~義理堅い花~

サルスベリは、中国大陸原産の落葉樹です。花が美しく、夏から秋にかけて長い間咲くので、家の庭や公園、保育園や幼稚園、あるいは街路樹として植えられているのをよく目にします。樹皮がすべすべしていて、木登りが得意な猿が滑ってしまうイメージがあるので、その名があります。

2019年の5月の連休のことでした。ホームセンターの園芸売り場を巡っていたところ、植木売り場の片隅で、大幅値下げされて売られているサルスベリの樹が目に入りました。枝はなく、細い幹から葉が数枚出ているだけです。小さなプラスチックの鉢に植えられて、息苦しそうです。

それは捨てられて数日が経過し、瀕死の状態になった捨て猫のように見えました。サルスベリは辛抱強い樹なのですが、そのままでは、処分されるか、やがて枯死してしまうでしょう。サルスベリの樹が助けを求めているような気がしたので、その場で買い求めました。

帰宅して、植え替え作業をすると、根は小さな鉢いっぱいに拡がって根詰まりの状態でした。すぐに、根をほぐしてやって、大きな素焼きの鉢に植え替え、堆肥入りの土を足してやり、水をやるとすぐに樹は生気を取り戻しました。

それから夏を迎え、幹から幾本もの細い枝が伸びて来ました。しかし盛夏が来ても花は咲く気配はありませんでした。台風来て、暴風で枝が何本か折れましたが、残った枝はどんどん伸びました。

9月の中頃、長く伸びていた枝の先端につぼみが出来ているのに気付きました。そして、ついに、紅色の花を咲かせてくれました。それは、助けた猫が恩返しをしてくれたかの様でした。サルスベリはとても誠実で義理に厚い樹です。

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開花した我が家のサルスベリの花

サルスベリの花を観察すると、おしべとめしべの周りを装飾花が囲むような構造になっており、進化的に古い時代の構造です。昔気質の古いDNAを残しているところが、この樹の義理堅さに通じているのかも知れません。

(2019年9月17日撮影)




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