暑いのよ……☆☆
急に暑くなったから、床の上は気持ちがいいわ。
どう、床がきれいでしょ。
あたしの飼い主さんは身体が不自由だから、ヘルパーさんが掃除機をかけてくれるのよ。
だけど、飼い主さんが使うところだけ、って、決まっているから、きれいなお部屋もあるけど、埃だらけのお部屋もあるの。
お姉ちゃんのお部屋なんか、きったないけど「埃じゃ死なないわよ!」って、お掃除しないのよ。
ご飯の支度はしてるけど、買い物に行くのが辛いんだって、お姉ちゃん。
新型コロナのせいで、外に行くときはマスクしなくちゃいけないし、買い物は素早く、って思うから、買い忘れが多いんだって。
それに、おうちには飼い主さんをお風呂に入れるために看護師さんが来てくれるから、その時間はなるべく外にいるようにしてるんだって。
おうちにいるとおしゃべりしちゃ悪いから、外にいるんだって。
おうちはそんなに広くないから、コロナ対策。自分がうつす可能性だってゼロじゃないからね、って。
猫はうつっても症状だでにくいらしい、って、研究結果があるらしいよ。
「クララが一番大事だからね、クララにうつさないように、自分がかからないようにしないとね!」って、言いながら、あたしにおやつをくれるのよ。
床にころんは「おやつちょうだい」の合図だもん。
おやつにもいろいろあって、おいしいのと、いまいちのがあるのよねぇ、どうせならおいしいのをいただきたいわ、あたくし。
「わがままは言わないのよ。ちゃんとお座りして食べるのよクララ。4歳は大人なんだからね」
ふうん、飼い主さんは成長してるように見えないけど。
「それは言わないで、あいつは永遠の5歳児なんだって、だからクララが面倒見てあげないと!」
そうかぁ、そうなんだ、だからあたしといっしょに這い這いしてるんだね。
「そうなんだよ、立って歩いて転んだら骨折しちゃうからね。トイレにひとりで行けなくなったら、この家で暮らせなくなっちゃうからね」
それは大変だ、あたしのおうちがなくなっちゃ困る。
あたしはこの家しか知らない。よそのおうちには行きたくないよ。
「それは、そうだけど、住宅ローンが払えなくなったら出て行かないといけないんだよ」
お姉ちゃんは一人でぼそぼそ、とつぶやいた。
あたしは聞いたよ。
飼い主さんだって、本当は分かってるよ。だから明るくふるまってるんだと、あたしはおもうよ、お姉ちゃん。
頑張ろうね、飼い主さんが歩けるようになって、みんなで笑って暮らせるよに。
お姉ちゃんが最高齢の新人童話作家になれますように。
神様お願いします。
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