かねばあちゃんの自慢ばなし🌸🌸

かねばあちゃんは、ぼくのひいおばあちゃんで、90歳になるが、小学生のぼくより歩くのが速い。

「かねばあちゃん、速いよ。もっと、ゆっくりあるこうよ」

「あに、そいてんだよ。おめだって戸田小学校に行ってんだっべ、じゃあ、こんくれえ速く歩けなくちゃおいねえ」

わからないでしょ。通訳すると「なに、言ってるの。あなただって戸田小学校に行ってるんでしょ。それだったら、このくらい速く歩けなくちゃいけないよ」と千葉県の上総地方の小湊鉄道沿線の馬立という地域の方言で言っている。

ぼくのうちは明治時代からここにあるから、先祖代々「戸田小学校」に通学していた。

特に、ひいおばあちゃんが自慢しているのは「デンマーク体操」の流れをくむ戸田小学校の徒手体操のことだ。

ぼくたちは「戸田っ子体操」と呼んでいる。

戸田小の体操の始まりは昭和5年、かねばあちゃんが生まれた年に第1回の公開研究会が開催されたそうだ。

「おれが小学生だったときんよ、日本軍の手本にするだって、映画になっただよ」

「かねばあちゃんも出たの」

「出てねえよ。兵隊さんのお手本だから男ん子だけだよ」

「男子だけなんだ!」

「そだよ。男ん子は、いつか戦争に行くために体を鍛えるように、ってことだったのかね。そこんとこはよくわかんねえけど」

ばあちゃんは、映画に話はよくするが、戦争中の話はあまりしない。

「戦争はしちゃおいねえ。いまは平和でいい時代だ。おれはひ孫の顔まで見られてしあわせだよ」

ぼくは、自分が通っている小学校に興味がわいてきた。

つづく


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