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情報商材か有料コンテンツか。noteの危うさと期待すること

(これは有料にしてますが全文を読める「投げ銭」スタイルの記事です)

noteが改めて注目されている。その先に、有料コンテンツの文化が来るかな、と思いつつ、情報商材のような話題があったりして、ネット界隈に限ったことだろうけど、少し賑やかだ。

こうした世間の価値観が変わったり、新しい文化ができてくるときは、賛否両論の意見が沢山でたり、悪いことや良いことの極端なことが起きたりするもので、むしろ望むべきことなのかもしれない。運営の人たちは大変だろうけど。

facebookだって今では当たり前に、誰もが使っているけれど、広まりかけた当時は、実名制だと日本人は誰も使わないとか、個人情報で問題が起こるとか、悪さをするアプリがあったり、好きだ嫌いだと色々な意見が出た。

でも、結局は、今は市民権を得ていて、多くの人が疑問に思うことなく使っている。ザッカーバーグの「情報をオープンにする」という文化と価値観は、根付くことができたと言ってもいいだろう。慣れてしまえば、案外悪くない。

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コンテンツは無料でなくて良い。良いコンテンツには、きちんとお金が流れる文化の方が絶対に良い。物理的な書籍は価値が認められていた。ウェブや電子も同じはずだ。媒体(メディア)はなんだって良いはずだ。

誰かの役に立ったり、誰かを感動させたり、誰かを励ましたり、誰かをほっこりさせたり、誰かを驚かせたり、誰かの知識になったり、そんなコンテンツには価値がある。価値を交換する手段の一つが「お金」だ。

価値を得た人が対価で渡せるものがないのなら、お金で渡せば良い。物々交換が当たり前だった時代は、渡せる物がない人がお金を渡して「お金なんかですいません」と言ったそうだ。物を売る方が偉かったのだ。

儲けるためだけに書かれたコンテンツで心が動くことは、ほぼ無い。それが透けて見えると、心は動かない。消費者だって馬鹿では無いので、わかるはずだが、そこを巧みに騙すのが「情報商材」の世界だろう。

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そもそも「情報商材」という言葉がイマイチよくない。消費者を騙して儲けることを目的とした商売の一種で、悪徳商法の一つなんだけど、言葉だけ見ると悪いことだと見えにくい。

Wikipediaの悪徳商法のページにも載っている。キャッチセールスや偽装表示なんていう言葉なら、悪そうだなってわかるんだけど。「情報商材」の文字の組み合わせだけ見ると、悪く見えない。

「情報商材」という悪徳商法を認める気なんてサラサラないのだけど、見た目だけだと、情報商材と電子書籍の境界線が難しい。特に、セルフパブリッシングの時代になると難しくなる。noteの危うさはそこにある。

これから個人が気軽に流通させて、個人間で取引ができるような世界になると、どこに違いが出てくるのか。違いは、そこに悪意があるかないか、ということか?そんな曖昧なことで大丈夫なんだろうか。

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中身が見えずに買うので騙されてしまう、というのが情報商材とするなら、電子書籍の多くだって中身を見えないし、見えても限られている。そこに違いはないだろう。

コンテンツの種類でも、本屋で売られている書籍にだって「◯◯するための方法」とか沢山売っている。扱うテーマが「儲けること」ならばNGなのかといえば、そうでもなさそうだ。

買った本人が満足しているなら、それはそれで商売としては成立してるから良いのだろうか。悪意がなければよさそうな気もするが、うまく騙すところが儲かるというなら、それは問題だろう。

扱う価格が高すぎる、ということも情報商材かどうかの判断には難しい。対価については支払う側にとっての価値観が大きく左右するからだ。もちろん、相場というものはあるけれど、それでも個人差は大きい。

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飲食店にしたって、高級店をぼったくりと思うか、サービスの良い店だと思うか、客次第というところもある。本当に悪い店には客は2度と行かないので、新規顧客だけで回そうとするなら、騙してもやっていけるのかもしれない。

それが、インターネットの口コミによって、だいぶ透明性が増してきた。悪い店は、騙すつもりかどうかはさておき、対価に見合わなかったと思った客による評価が出回れば、被害の拡大は止められる。事前にわかるのだ。

結局は、文章コンテンツだって、文章そのものに価値があるというよりも、読書体験の時間にお金を払っているのだから、飲食店での体験と似ているかもしれない。

有料コンテンツが情報商材かどうか、定義や倫理観で判断しようとすると難しい線引きになるので、ルールで縛るのではなく、コンテンツを購入者が評価できる仕組みを作れば、少なくとも被害の拡大は止められるのではないか。

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iPhoneの凄さ、素晴らしさは、アプリストアを開いて、アプリ開発者に対してマーケットを提供したことだと思う。それも、有料でのアプリを販売しても良いという文化を作った。

開発者に稼ぐ手段を用意したとも言えるし、良いアプリを作った人にはきちんとお金が回ってくる仕組みを用意したとも言える。それは、両面であり、どちらも事実だ。

有料アプリを公開すると、それはコンテンツを有料にするより叩かれることは少ない。もしかすると、文章を書くことは簡単だと思っている、もしくは自分でも出来そうだと思ってるからかもしれない。

それはちょっと文章を書くことをなめているし、残念な文化観念だけど、もしかしたら、ウェブのコンテンツにもきちんとした市場があれば、その価値観は変えられるかもしれない。

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アプリの世界にも、情報商材のような悪事を働く人はいる。とてもしょうもないアプリを有料で売ったりするケースだ。クソゲーでも買ったらお金は返ってこない。

ここも判断が難しいのが、本気で作ったけどクソゲーなのか、悪意をもって騙すためのクソゲーなのか。いずれにせよクソゲーな訳だけど、ただ、アプリには評価や口コミがあるので判断できる。

悪意があろうがなかろうが、悪いものは悪いとわかれば、買って損する人は出てこなくなるし、悪いものを出す人は、そういうレッテルを貼られれば同じことは出来なくなる。

人を騙すことをして、信用を失ってしまえば、その先は同じ名前やアカウントではやっていけない。悪さをするだけの経済的メリットをなくすという仕組みだ。

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今のnoteには、その仕組みがない。買ってみるまでわからない。体験するまでわからないので、情報商材を売りつけることが出来る、ということだ。売って良いかどうかはさておいても、だ。

評価の場所として、noteのコメントは公開なので、騙されたとしたら、コメントに書き込めば良いが、なかなか難しいはずだ。普通はコメントは作者へのメッセージを書く場所だし、否定的なことは書きにくい。

そもそも騙されたとしたら、そんなことは恥ずかしく思うのが普通で、騙されたとは、なかなか書けないだろう。「スキ」の量は割と目安かもしれないが、判断には難しい。

買ってよかった、買って後悔した、ということだけが匿名でわかる仕組みがあれば良いのではないだろうか。買った人だけが投票できれば、ある程度の判断基準にはなりそうだ。クリエイターにとっては、かなりシビアだが。

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noteは、今は運営側がすべてのコンテンツのチェックをしている訳ではないので、放置すると無法地帯になりかねない。健全性を保つために何らかの仕組みを入れるべきだろう。

プラットフォームだからといって、場だけを提供するのでは長くは人が住み着かない。やはり治安の良い所にいたいと思うのと同じことだ。

iPhoneの場合はアップルが審査をしている。開発者からするとウザったいんだけど、場の健全性としては保たれている。ユーザからすると、ある程度守られていると言える。心配することが少ない。

Androidには審査がほぼ無いが、評価と口コミで担保しようとしてる。そうなると、ある程度酷いものも出てくる。ユーザは学習して自衛するしかないが、せめて判断材料として評価が用意されている。

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書籍の世界では騙して売る情報商材かどうか、これまでは、ある意味で出版社が担保していた。印刷物を出版するにはコストがかかるので、出版社を通じてしか出せないのが当たり前だった。

出版社としては、1作品だけ売れれば良いわけではなく、信用が必要でもあるので、騙すような情報商材を扱うわけにはいかない。書籍における信用の権威が出版社だったのだ。

それが、CGMの有料コンテンツやセルフパブリッシングによって、出版に近いことを個人が、コンテンツを用意する以外のコストがほぼかからずに出来るようになってきたので、信用を担保するところがなくなるのだ。

インターネットの世界では、そうした信用の担保を民主化しようという動きが出てきている。UberやAirBnbがそうだろう。中央集権でなく、サービスの提供者と受益者のソーシャルでの相互評価によって信用が成立している。

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noteがこれから、中央集権的な形でユーザを守るのか、相互評価を導入してユーザ自身が自衛できる手段を作るのか、それとも何もしないのか。多くのnoteユーザは、運営の動向を見守っている。

何はともあれ、今は情報商材の話題が強くて、有料コンテンツを発表するのは、少しはばかられてしまう。そして、その結果ウェブの有料コンテンツをすべて否定する流れにはなってほしくない。

紙なのかウェブなのか、媒体の違いがあっても、良いコンテンツには、それだけの価値が認められる文化が広まる方が良い。

そんな世界をつくってくれることを期待しています。

(このコンテンツは投げ銭形式です。これより以降に本文はありません。)

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