#僕ヤバ@その面白さ(紹介2)
僕の心のヤバイやつの面白さについて
現在2巻まで出ています。
まだ店舗特典残ってるのかな……。
ともあれ、今回は僕ヤバがどうして読者を引きつけるのか考えたいと思います。
と言っても個人見解ですし、感想ですね。
僕ヤバの魅力
今回は下記に絞って見ていきたいと思います。
・秘められた気付きの楽しさ
・市川の献身について
秘められた気付きの楽しさ
本編における最大の醍醐味ではないでしょうか。
散りばめられた秘密、理由、気持ち……そう言ったものを見つけられた時の喜び。
これが読者の気持ちを掴んで話さない僕ヤバの魅力の一つと思います。
気付きの楽しさの類例
類似例として挙げると、おそらく次のような作品が挙げられると思われます。
(年代がバレそうなラインナップ……)
・東方シリーズ
・Fateシリーズ
・艦隊これくしょん
・ひぐらしのなく頃に
これらに共通する事項として、ルーツの探索があります。
キャラクターのベース感情、行動理由を探る楽しみはプレイヤーに委ねられています。
解は用意されておらず(ひぐらしは人狼なのでありますけども)、そのプロセスと世界は読者だけのもの。
つまり、読んだ人の数だけそのストーリーの読み方・世界が生まれるということですね。
この点については、理解度の深さに関わらず言えることです。その時点で理解したと思っても、後から知識を身につけることで見えるものが変わってくる感じ。
極上の素材が"ドン"と目の前に置かれ、"あとは好きに料理しろ"と言われているような……そんな感覚を覚える。
それが、僕ヤバにもあると思っています。
僕ヤバの気付きの題材・ルーツは?
僕ヤバには当然過去の歴史資料はありません。
多少、目黒区や洗足駅と言ったリアルとリンクすることはあれど、そこまでです。
じゃあ僕ヤバの気付きの題材って何さ。
ルーツって何さ。
我々の前に置かれるのは山田という美少女の心という難題。
気付きのルーツは恋に翻弄される市川を通して。
それぞれが読者に与えられていく形になっています。
山田の変遷は無地のKarte1から連綿と続いていき、現時点でKarte35。
市川自身は気付いていない取りこぼしが多々あるものの……。
市川の視点自体は非常に鋭く、山田の振る舞いはかなり拾われています。
市川、気付け……!
そう思わせるだけの沢山の"間・距離・視線・表情"が随所にあるわけです。
しかもこの積み重ねがあったうえで、変化まで織り込まれる。
このもどかしさと、市川がもたらした変化が毎回毎回新しいんです。
全てのKarteにおいて病状は進行し、一度見た内容も回を重ねるごとに万華鏡のように色味を増していく。
歴史という重厚な金鉱に頼らず、語らないことで生み出された大量の気付きのフック。
僕の心のヤバいやつ、やばいでしょ?
超難問の例。
※おそらく最高難度の問。
市川の献身について
さて。
難題と気付きだけが僕ヤバの魅力の全てではない。
山田の魅力はもちろん、この市川の魅力も僕ヤバの中核の一つ。
市川京太郎
中二病と孤独を拗らせた陰キャ。
登場時にヒロインを殺害しようなんていうラブコメ主人公がどこにいるというんだ。
一方的な憎しみから始まるこの物語は、殺害対象として山田を観察している市川の視点として進んでいく。
はずなんだけど……。
あぁいいさ… 僕は頭がおかしいんだ
Karte2より引用。
自分の評価の低さゆえに、市川が山田を庇う場面。
最初期、自分の気持ちに気がつかない時から市川はこういう少年だ。
自分の身より何より優先して山田を守る。
この市川少年の献身は僕の心のヤバいやつにおける非常に重要な要素。
彼は恋を知らない
山田のことが好きだと気付くのになんとXX話も要する。
導入一発即フォーリンラブなんてインスタントな話ではない(と言ってもKarte1でどうみても心奪われている市川はいる)。
どこがラブコメなんだよ。
僕ヤバはラブコメ
僕ヤバはよくある恋物語ではない。
上記のとおり市川は中々恋を自覚しないし、山田は市川など文字通り眼中にない。
でも僕ヤバは絶対にラブコメディなのだ。
その理由は、なによりも山田を案ずる市川。
その献身は恋ではなく、一足飛びの愛と呼べるもの。
切なくて 辛くて 苦しくて 愛しい
初期のキャッチフレーズ。
自身の愛に気がついていない市川の困惑。
孤立、無理解、自己否定。
僕ヤバは苦しい。でもどこか微笑ましい。
彼の恋と愛の七転八倒はまさしくコメディで、市川と山田の関係に惹かれてしまうことは間違いない。
市川の持つこの愛がある故に、僕ヤバはラブコメとなっている。
このキャッチフレーズの意味を、1巻読了後に噛み締めるとより楽しみが増すはずだ。
市川少年の補記
彼は陰キャだ。
モテない。
そしてよくあるハーレムものでもない。
彼は鈍感だが、ご都合の鈍感ではない。
彼は好意を受け入れない処世術に浸りまくっている。
傷付きたくないから、認められない。
そんな彼が勇気を出して山田を救う時、そこには確かなカタルシスが存在することに気付くだろう。
この痛みに過敏で臆病な彼が主人公だからこそ、ただ眺めているだけの退屈な日常がたまらなく大切なものと感じられるのだ。
山田は天然だが聡く、市川は臆病だが格好いい。
二人の凹凸が見事にマッチするこの関係は見ていて心地よい。
(あるいは、もどかしいすれ違いも)
山田が惚れる確たる理由を、この市川少年は持っている。
二人の仲が進む時、読者の口元が緩むこと間違いなしだ。
まとめ
僕ヤバの魅力は、「気付きと市川と山田の関係」これに収束する。
考察する喜び、市川と山田の間にある恋愛感情。
ストーリー構成の美しさとキャラクターの魅力が見事な相乗効果を生み出しており、今までラブコメに縁がなかった人々にも読ませてしまう魔力を放っている。
兎に角何もかもが魅力的な作品なので、是非是非お目通ししていただきたい。
気付いてもらえない陰キャがかわいそうすぎて無理、という方。
2巻以降はとんでもない激甘展開で読者の血液をチョコレートのごとく凝固させてくるから安心しよう。
筆者は何度か窒息しそうになった。
本作はヤバい。
いきなり購入はちょっと……という方は、桜井のりお先生のアカウントをフォローしてみてはどうだろう。
Twitterおまけだけでも、読んだ時間に対して十分にお釣りがくるはずだ。
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補足
親友の小林をはじめとした周囲の男女も非常な可愛く、また市川に与える影響を見ると楽しさに磨きがかかる。
この点も学校の空気を感じられ、まさしくキャラクターが生きていると言える。
本記事で簡潔化する上でオミットしてしまうには惜しいほどの内容なので、本編に触れた際には是非とも目を向けてほしい。
ばやしこも可愛いぞ。
今回の報告は、以上です。
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