見出し画像

#僕ヤバ:言葉にできない考察

桜井のりお先生のつぶやきはこちら!!!

かなり深みのあるやつが投げ込まれました。
言葉にできないとは、一体誰の言葉なのか

いい天気

雲ひとつない空と、見上げる市川。
山田の隣にはいるけれど、山田に面と向かって話すことはない彼が、彼らしい。

なんで嫌そうなの?

市川のそういうニュアンスを伝えてくる山田。
他愛ない会話を楽しみつつ、気安いコミュニケーションを取っている。

このコマにおけるセリフは上滑りするもので、目をやるところはその膝。
事件は怪我をしている山田。
このコマだけで読者に市川の動機をわからせる。

市川は山田が心配で横にいて、興味がないような会話をしている。

何から逃げてるの?

光から隠れられなくて不安だという市川。
Karte2で人前がキツいと言っていた彼だから、自分の姿が照らされるのは苦手なのだろう。
その上"自分なんて"という感情や、人には言えないグロ趣味など。
市川には人に隠しておきたい感情が多いから。

要はこの天気の会話は心象の話
だ。
市川の価値観と、山田の価値観の話。
事件と無関係な所で、こういうやりとりをする

なお、山田の怪我は右膝。
左肘に注目しておくとよい。
あと貴重な生脚。

どんなお天気が好き?

お天気
なんだか丸みを帯びた形の言葉で市川の好きを問う山田。
まっすぐストレートで、市川の返答も"そうだな"。
普通の会話のやり取りで、特にひねってない所に彼らの進展が見える。
クイズも遠い昔。

大丈夫?

矩形がデカい
心配で一杯な市川の頭の中。
タイトルは言葉にできない。その言の葉。
画面の中央は山田の膝で、彼の視線と思考がドデカビジュアルで読者に訴えかけられる


全ての中心が山田のコマで、とんでもない濃度になっている。

次いで当の市川の表情は陰り、汗が噴き出す
胸に詰まる市川の言葉と想いが、アップになるカメラワークによって
胸に迫るものとして臨場感満点にお届けされてしまう。

控えめに言ってお漫画がうますぎる
なんだこれ。桜井のりおは化け物か。

分厚い雲の隙間から

こんな事をやりながら天気の会話が並列で流れていく。

影に覆われる市川と、日の当たる山田。
光と影の話が、市川と山田の陰影にも重なる

暗がりに射す光は山田ではなかろうか。

………………

そして山田も言葉にできない
この表情の奥底には、三点リーダの連なりでしか表せない感情があるはず。

市川はロマンチスト

案外男子ってそういう生き物だよね。

怪我の理由

背景に走る叫びは、背の低い小林のものだろう。
キーパーなんてド不利なのにやらされたことの抗議
なんで(背の低い)私がキーパーなんだ。
私はこう読む。
そしてこのタイミングで言ってるので、このタイミングでやらされたという事だろう。

つまりキーパーは背が高い山田だったという可能性が高い……と思われるのだ。

なおキッカーは萌子ですね。文武両道で万能か。

ボールがシャベッタァァア!!と思ったのは多分私だけだ。
本当にすまない。

大丈夫?

リフレインが突き刺さる。
山田に心配の声をかけたい市川。
気遣いがバレるのがダサいとかKarte21で思っていたし、直接言うのは市川には結構なハードルなのだろう。

私は夏の入道雲!

山田は雲が好き。
市川と違って、輝かないものに惹かれるのは何故だろうか。
ちなみに山田の想い人は陰キャで、市川っていう名字らしいです。

綿あめみたいだから?→なんでわかったの!?

山田の行動を見ていたツイヤバゴリラの回とは違う。
だってこれ、山田の内面でしょ?
市川のこういう所おそろしい。
そしてここは山田の吹き出しがポップ。
楽しい話でちょっと嬉しかったのかもしれない。

山田の価値観が神秘的で美しいものより
甘くて素敵なもの(それも特大のやつ)が好きだというところ。
この二人の歪さがかっちりハマる唯一無二のツーピースという感が深い。
相手に合わせて変わる必要を感じないのだ。

入道雲が出ると雷雨になる

市川ロジック。
良いことには必ず悪い側面があるのだと諫める。

だが山田には些事。
どうでも良いのだ、そんなこと。
市川のネガを吹き飛ばす山田の勇ましさ。あるいは幼さ。

戻るね

視線が名残惜しいと物語る。
この未練がましさは山田の女子力という感じがすごく濃い。

眉尻が下がりっぱなしなのは、市川への期待が果たされていないからというのも伝わってくる。
つま先で靴を履くのも心なしか力無く、しおらしい。
なんで耳まで攻めてくるのさ、このマンガ。

驚愕

山田の肘に血が。
(入道雲のコマ、右手に注目)

思わず駆け寄り、その腕を掴む。
音も絶妙に強すぎず弱すぎず、勢いがあるもので。
山田のもち肌、市川の手のひらの質感をバシバシ伝えてくる。

ヒジ

ここまで矩形なし
市川は無心で山田の傷にだけ心を注いでいる。
この瞬間までの切り取りがめちゃめちゃダイナミックなわけで、
僕ヤバで連綿と続いてきた市川の衝動でもある

山田の表情は驚きで、喜びではない。
つまり、想定外で想定以上で、期待通りの市川の行動ということ

保健室、行く?

言えたじゃねえか。
はい、市川は言えました
では、言葉にできなかったのは?

ここで山田の表情は喜び
つまり、心配を表明して欲しかったということでしょう。
期待以上を示してから、期待に応える。
これが山田が惚れた市川っていうヤツなんだ。

ほ…

めちゃめちゃ可愛いな。

血がついてただけ。

ネタバラシ。
市川の勘違いで、気遣いが露呈。
山田はそれが嬉しくて、そして腕を掴まれたお返しに市川の腕を掴む。

でも行く
この回答により『保健室行く?』のセリフがまるでデートへのお誘いかのようで、大変にヤバイ。

なんだよ

だいぶ口癖みたいになってきた言葉。
矩形を飛び出して、彼の口から山田の耳に入るわけだ。
もうダメだ、一読者な私は死ぬ。サヨナラだ。

なお左ひじに手を触れたのは右手なので、山田は右手を怪我しているはず。
洗ってないし消毒もしていないのだろう。
だから保健室に行くのだと。

あーっ 心配してるくせに!

山田、最初からわかっていたんじゃないか
市川が心配して横にいたことも、彼がそれを言えなかったことも
だからあのだんまりがあって、あの表情の変遷があるのだ。

途中に不安があったのかも知れないけれど、腕を掴まれたことでやはり確信に変わったのか。
こういう時に強く出られる山田は強い。

そうして二人して保健室にしけこむわけで。
ああ、読み手の私も雲のない天気は苦手だな。
こんなに眩しいと、網膜が焼かれてしまうから。

まとめ

超骨太ツイヤバ。
視覚・言葉・思考・聴覚の織りなすカルテット。
視覚と連動する思考と、全く異なる価値観の言葉のやり取りによるマルチタスク。

雲と光の話は市川と山田の暗喩的な響きも持つため、異次元の光を放っている。
普通に読めてしまうのだけど、どこまでも深読みできてしまうという点でこの回はマジでヤバイ。

僕の心のヤバイやつの精髄が濃縮されたすごい回です
一度自分なりに読み直してみると、大きな知見が得られるのではないでしょうか。

今回の報告は以上ですが、下部に私見を述べます。

追加投稿

やっぱりばやしこでしたね。



私見:何故キーパー

山田、モデルなのに怪我したな。
これは中学生が義務教育であることから片付けられるものと思います。
授業不参加というわけにもいかないでしょうし、山田だけ特別扱いは教師陣からしても難しいのではないでしょうか。

クラスメイトが山田を特別扱いはした描写はあまりありません。
(萌子に至っては山田に気を遣うなと何度も言っている)
ゆえに、単純にタッパがあることから山田をキーパーにしたのでしょう。
周囲がバスケ事件の後に山田にキーパーやらせるの?という話ですけれど、サッカーは結局ボールが飛んでくるスポーツ。
ポジションはあまり関係ないかなとも思います。

山田もまた、Karte15の発言にあるように子どもだから仕方ないとかそういう事を言われるのが悔しい性分ですし、モデルだから見てるだけは仕方ないとかそういうのは好きではなさそうです。

……と、色々と理由はあるのですが、これに関してはあまり深く考えるのは野暮かなとも。
描かれていない以上、これは各読者に委ねられたものだと思うのです。

ちなみにキーパー説を唱えるのは、右膝、右手の怪我から、小林同様に右手方向に飛び込んだものと類推されるためです。
体操服がよごれているのも転んだことの裏付けです。

私見2:衝動と障壁の破壊

山田に対しての市川の衝動が久しぶりに出てきました。
山田を案じるあまりに、その腕を掴むという行為が、普段意識的に触れることがない場所に触れさせるわけで。
この無意識の接近は様々な場面で描かれている行為。

市川→山田のアプローチに対する山田ロジック

そして、山田はお返しとばかりに市川に触れていくわけで。
山田は一度触れた場所は容赦なく蹂躙していく生き物。
この一瞬があったことで、山田と市川の両方の初めてが開通。

山田にとっての大丈夫となったことで、
この先において二人の当たり前になっていくのが約束されたようなもの。

つまり、いつか二人で腕組みするための、布石になる。
そんな予感がしているのです。

今回の報告は、以上です。

好きなことを好きな時に書く!それがストレスを溜めないライフスタイルなんだよ