僕ヤバ@Karte1考察

「僕は頭がおかしい」

市川の第一声にして、僕ヤバの開幕だ。かくして黙示録のラッパは吹き鳴らされたのだ。

この言葉は狂気の表現をこれでもかと詰め込まれた市川の強烈な自己アピールである。"何がおかしいのか"という疑問を読者に豪速球で投げつけてくる。

何がおかしいのか。中二病?手中の本?いや違う。

市川には殺人願望がある。ぼっちの陰キャラとして描かれる彼の、危ういまでに研ぎ澄まされた"惨めな自分を見下すもの"に対する憎しみだ。

彼は中二病だ。誰だって殺したり殺されたりする妄想くらいした事があるだろう。でも、市川の妄想は性に満ちたエロスではない。強さの悦に浸るためでもない。

「僕がもっとも殺したい女だ」

ガチの言葉。市川の心はどこまでも擦り切れている。そして記念すべき山田の初登場だ。喜べ。

この時の山田は学園カーストトップであり、市川を見下す憎むべき対象として現れる。実際、山田も市川に向ける目線は冷たい。

市川と目が合った瞬間、山田の笑顔は消える。これはツラい。市川があまりに惨めだ。こんな山田を市川は殺してやりたいわけだ。

痛めつけられる自尊心(しかしそれを守ろうとする自己愛)と攻撃性の塊。これが市川だった。

本当に?

「モデルもやっているらしいがどうでもいい」

嘘をつけ。市川が「どうでもいい」と言ったら、気になって仕方ない事なのだ。むしろ「どうでもいい」と自身に言い聞かせないといけない事なのだ。これはKarte5以降、かなりはっきりする。

「きっと山田は死体になっても美しい」

ほらね。市川は山田の美貌に惚れ込んでいるのだ。

ただし、これはエロスではない。タナトスだ。山田への征服欲には違いないが、美しいまま自分のものにする攻撃性。

ちょいエロが多いこの漫画で、最初の市川はもう切れたナイフばりに鋭い。

また、底辺の自分は頂点を殺す事で満たされるとも取れる。自身の惨めさを慰める妄想はどこか危うくて、切ない(特に自己嫌悪で市川が自覚してる点が)。

ー昼休み

僕ヤバの本当の始まり。凝り固まった市川の盛大な前振り。ぶち壊す山田。

「なんなんだなんなんあの女」

外見の美しさに心とらわれていた市川だったが、山田の恐ろしい一面に遭遇してしまう。

そう、山田は図書室でお菓子を貪り食うゴリラ美少女だったのだ。

この山田の一面に遭遇した市川は完全に殺すべき山田像を見失ってしまう。

「持っ……てる………」

何故かカッターを持っている市川。おそらく虐められた時の護身用だろう。あるいは殺害妄想の現実性のため。

ここで市川の内面が露呈する。そう。貸してあげるのだ。市川は狂気の仮面の下に、純朴な一面があるのだ。

市川は優しい。

「あっ ダジャレじゃないからね!?」

Karte6より。山田の最大の褒め言葉に繋がる伏線。こういう事を気にする女だ。

「山田あーーどこ行ってたの!?」

小林だ!!小林が出たぞ!

小林は山田の親友であり、重要な局面でかなりの確率で登場する。今回は市川山田のお披露目なので、当然親友の小林が登場する。

小林は市川をパシリにした山田を戒めるだけだが……。

実の所、このKarte1には市川・山田・小林が"全員相互認識する"大事な大事な大事な回なのだ。

僕ヤバはこの三人が欠けたら成立しないとさえ思っている。それは後々語るが、小林にも注目して読んでほしい。

まとめ

市川の山田に対する外見だけの執着は終わった。山田の一面を知り、殺人願望はぶち壊される。そして、経験がなかったであろう"誰かから何かをもらう"という事件になった。

山田と小林にとっての市川の意味は変わらない。しかし、山田はもう市川に冷たい視線は送らない。たしかに繋がりができたのだ。

最後に、一巻は山田が市川に笑顔を消されるところから始まった。

これを持って、Karte15を読んでほしい。

一読者からのKarte1の報告は、以上です。

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伝説のはじまり。











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