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KEENができるまで 8話 「背中〜大きな期待・魔物への挑戦」

翌日、4時に起き、佐賀に着いた”髪ing”一行は早速、競技会会場に向かいました。すでに競技が始まっており、そこには第一部門に出場中の気持ちの入った先輩の姿がありました。

コンテストでは、心・技・体がそろわなければ勝てないと、後に倉田も言われるのですが・・・この先輩、師匠の田中トシオ先生の姿を見て、育ってきただけあり、コンテストに向かう姿勢、準備、精神力、どれもが完璧でした。競技も終わり、審査を終え、モデルさんが歩いてくると、そこには、人の輪が自然と出きたのでした。そして、先輩のモデルには、一番の大きな輪ができていました。モデルも田中トシオ先生が世界チャンピオンになった時のモデルで、風格もあり、そしてデザイン、完成度がピカイチでした。周りも優勝を確信していました。ただ二人を除いて・・・。
それは先輩本人と師匠の田中トシオ先生でした。
結果が出るまでわからない。この全国大会、過去にもよく魔物がいると言われていました。過去に優勝候補の人がいて2位まで順位が呼ばれ、周りのだれもがその優勝候補が優勝すると思い、名前が呼ばれる前にもう喜んでいるのです。しかしそこには、どん底の結果だけ・・・そうです、優勝は別の人で、結局その優勝候補は敢闘賞にも選ばれなかったのです。おごりとは怖いいもの。優勝するのはあの人だ!優勝するのは自分だ!そう思った瞬間から勝利の女神はそっぽをむいてしまうのです。
過去にも息子さんが同じ業界に入り、コンテストをしていてまだ現役で日本チャンピオンに挑戦し続ける人もいれば、実力的には本当に一番うまいのに、いつも本番では2位や3位で終わってしまう人、簡単には日本一というところにはいけないのです。そういう簡単ではない日本一への道のり。
そして、表彰式がやってきたのでした。その背中は、”髪ing”全員や東京代表の期待を背負い、自分の名前が呼ばれるそのときまで、緩んだ表情、慢心な態度はこれっぽっちもみせてはいませんでした。